フォーミュラ・ニッポン第3戦もてぎリポート
雨が降ったり止んだりで二転三転。小暮卓史が1年半ぶりに優勝

第3戦はツインリンクもてぎで開催。レースはタイヤ交換が何度も発生したせいか混戦模様。非常に見応えのあるものだった

2009年5月30日、31日開催



 2009年フォーミュラ・ニッポン第3戦の決勝レースが、5月31日にツインリンクもてぎ(栃木県茂木町)で開催された。スタート直後から雨が降ったり止んだりする天候の影響で、全車スリックタイヤでスタートしたが、その後レイン、スリック、レインとタイヤを交換。先頭争いも二転三転し、残り4周でトップに立った小暮卓史(NAKAJIMA RACING)が混戦を制し1年半ぶりに優勝した。2位には予選11位から着実に追い上げたブノワ・トレルイエ(LAWSON TEAM IMPUL)、3位には最終ラップの90度コーナーで塚越広大(HFDP RACING)を抜いた石浦宏明(Team LeMans)が入り初の表彰台に立った。

 スタート時点ですでに雨はポツリポツリと降り始めていたが路面はドライ。全車スリックタイヤでのスタートが切られた。ポールポジションの小暮がトップをキープ、2コーナーで予選3位の塚越が予選2位のロイック・デュバル(NAKAJIMA RACING)をアウトから抜き2位浮上。予選5位から好スタートを切ったアンドレ・ロッテラー(PETRONAS TEAM TOM'S)も3コーナーまでの直線でデュバルに並び掛け、コーナーへアウトから先行して進入。ここでロッテラーの左リアタイヤとデュバルの右フロントタイヤが接触しデュバルがスピン。これで5位以下のマシンの順位が入れ替わり、予選13位の立川祐路(CERUMO/INGING)が6位に浮上した。1周目の90度コーナーで4位走行の石浦がコースを外れ7位に落ちた。予選11位と出遅れた、シリーズポイント1位のブノワ・トレルイエ(LAWSON TEAM IMPUL)は6位にジャンプアップして1周目を終えた。

混戦を制し、1年半ぶりに優勝した小暮セーフティーな走りで2位に入ったトレルイエ最後に塚越を抜き表彰台を獲得した石浦

 3周目のV字コーナーでルーキー塚越が小暮をアウト側からパスしてトップ浮上、その後、小暮は90度コーナーでコースから外れるミスで3位に落ちた。後方でも石浦がトレルイエ、立川をパス、大嶋和也(PETRONAS TEAM TOM'S)もオーバーテイクシステムを使ってダウンヒルストレートでトレルイエを抜くが90度コーナーの立ち上がりでクロスラインで抜き返されるなど各所でバトルが続くレース展開となった。

 9周目から雨が強くなり各車続々とタイヤ交換。ピット作業で平手晃平(ahead TEAM IMPUL)を交わした石浦が4位浮上、以下平手、トレルイエ、立川、松田と続く。大嶋はピットイン直前の90度コーナーでコースアウトしリタイアした。

 トレルイエを抜き平手に迫った立川が16周目に接触、漁夫の利を得たトレルイエが5位に。トップ争いも17周目の3コーナーで塚越がコースを外しロッテラーがトップに、小暮も2位に浮上した。20周目には小暮がロッテラーをヘアピンで抜きトップを奪回、後方でもトレルイエが石浦を抜き4位へ、更に塚越も交わして3位に上がった。平手と松田次生(LAWSON IMPUL)も数周に渡りバトルを繰り返し、松田がヘアピンで平手を交わした。

もてぎの観衆を一番盛り上げた4位の塚越4周目に立川を抜き5位に上がった石浦90度コーナー進入で平手に迫る松田
トップ塚越に迫るロッテラーオーバーテイクシステムを2回使用しLEDが2つ消灯

 路面が乾きだした25周目、4位に落ちた塚越が先頭を切ってスリックタイヤに交換。上位陣も次の週にタイヤ交換に入るが、アウトラップでタイムを稼いだ塚越が2位に上がった。52周のレースは丁度折返し。タイヤ交換終了時の順位は小暮、塚越、ロッテラー、トレルイエ、石浦となる。

 30周目、2コーナー立ち上がりで、立川がガードレールにクラッシュしコースの中央にストップ。セーフティーカーが導入され全車の差はなくなり33周目から再スタートとなる。再び雨が強くなり、36周目の90度コーナーで3位を走行するロッテラーがコースアウトし最後尾へ。

 38周終了。残り14周でトップを走る小暮がタイヤ交換のためピットイン。2位の塚越はそのままスリックタイヤで走行を続けるギャンブルに出た。残り13周でスリックタイヤで走るトップの塚越と、レインタイヤで走る2位の小暮の差は27秒半。1周のラップ差が2秒以内なら塚越の初優勝となる。

 その後のラップ差は3.1秒、2.9秒、2.6秒、2.9秒、1.4秒と微妙な雨脚によって変わりつつも徐々に小暮が塚越に迫った。残り4周でその差は0.66秒。トップ交代は時間の問題。塚越も4コーナー、130R、S字と粘るが、ついにV字コーナーで小暮がトップを奪回した。

 雨は止むことはなく、塚越のラップタイムは他車より5秒以上遅くなった。トレルイエが残り3周で塚越をパスして2位へ。最終ラップ、ゴールまで残りわずかとなる90度コーナーで石浦がインに飛び込み3位へ、初の表彰台を獲得した。

表彰台に立つ小暮、トレルイエ、石浦の3選手優勝した小暮選手

 結果はポールポジションの小暮が優勝したが、トップが二転三転し、後方でもバトルが続く面白いレース展開となった。観客を一番盛り上げてくれたのは、地元栃木県出身のルーキー塚越のアグレッシブな走りだった。最終順位は

1.小暮卓史(NAKAJIMA RACING)
2.ブノワ・トレルイエ(LAWSON TEAM IMPUL)
3.石浦宏明(Team LeMans)
4.塚越広大(HFDP RACING)
5.アンドレ・ロッテラー(PETRONAS TEAM TOM'S)
6.松田次生(LAWSON IMPUL)
7.リチャード・ライアン(DOCOMO DANDELION)

 フォーミュラー・ニッポン第4戦は6月27日、28日に富士スピードウェイで開催される。

 今回も盛り沢山のイベントが開催された。土曜のレース後には中学生以下の子供がいれば無料で参加できる「コチラレーシング・キッズピットウォーク」が開催された。小さな子供はコクピットに収まり、笑顔で記念写真を撮っていた。

キッズピットウォークに参加した家族連れコクピットに収まると頭も出ない

 ホンダコレクションホールでは「モータースポーツワークショップ・フォーミュラ・ニッポン新型エンジンを語る」というイベントが開催された。今年から投入された新型エンジンの開発秘話や裏話を、供給メーカーである、トヨタ自動車モータースポーツ部主査の永井洋治氏と本田技研工業MSブロック主任研究員の坂井典次氏が熱く語ってくれた。会場には満席となる160名ほどの参加者が集まった。会場は報道陣の撮影も禁止され、「瞬きしないで眼に焼き付けてください」と、エンジンの断面図を10枚ほど輪切りにしたCAD図面や、市販、F1、フォーミュラ・ニッポン新型エンジンの熱効率差など興味深いデータがスクリーンに映し出された。特に今年から導入されたオーバーテイクシステムに関しては多くの時間を割いて説明が行われた。理想的な使い方は、レース序盤の接近状態で、ストレートで回転数リミッターに当たった際のオーバーテイクだと言う。今後、フリー走行でオーバーテイクシステムの使用を許可すれば、高速コーナーでの使用も可能になるだろうとのこと。面白いレースになることで、モータースポーツを盛り上げて行きたいと思いを語った。

熱いトークをしてくれたホンダの坂井氏とトヨタの永井氏イベント終了後にエンジンに集まる参加者。撮影は禁止だ

 SUPER GTではおなじみのサーキットサファリも開催された。観客を乗せたバス4台が2周する間、フォーミュラ・ニッポンのマシンがすぐ横を通過していくイベントだ。

サーキットサファリ。バスのすぐ横をマシンが走り抜ける

 ピットウォークは土曜、日曜と開催され、いつも人気のイベントだ。フリー走行を走り終えたばかりの選手もピット前に立って、サインや記念撮影に応じてくれる。人気チーム、人気レーサーのピットは近寄れないくらい観客があふれていた。スタンド裏のイベントスペースでもドライバートークショー、キャンギャルオンステージなどのイベントが行われ、こちらにも多くの観衆が集まっていた。

ピットウォークに参加する観衆LAWSON TEAM IMPULのピット前には多くのファンが詰めかけた
サインに応じる平手選手イベントステージにも多くの観客が集まった

 ツインリンクもてぎにはホンダコレクションホールがある。以前は鈴鹿(有料)にあったが、もてぎに移ったことで3階建のビルとなり大幅にスケールアップされた。2輪レース、4輪レースコーナー、市販2輪車、4輪車コーナーなどがあり懐かしいマシン、珍しいマシンが展示されている。入場は無料なのでもてぎに来た際にはぜひ足を運んでいただきたい。

ホンダコレクションホール。入口にはホンダ第1期のF1マシン「RA271」がお出迎え2輪レースコーナー
4輪レースコーナー
4輪市販車コーナー2輪市販車コーナー。ホンダだけでなくヤマハ車もある

(奥川浩彦)
2009年 6月 2日