ソニー「nav-u」のワンセグ付と低価格モデルを徹底比較<前編>
NV-U3VとNV-U3Cの基本機能を比較する

NV-U3V(左)とNV-U3C(右)。ボディーサイズの違いはもちろん、モニターがワイド(16:9)とスタンダード(4:3)と異なるのが目立つ

オープン価格



NV-U1

ソニーらしいひと味違ったPND
 市販カーナビ黎明期、低価格モデルで市場を席巻したソニー製カーナビ。その後、毎年、新製品のリリースが続けられたが、カーナビおよびAV製品の製造・販売から撤退。2005年に発売した「NV-XYZ777EX」を最後に、ソニー製カーナビの系譜は絶たれることになった。だが、2007年3月。記録媒体にフラッシュメモリを採用したポータブルナビ、「nav-u(ナブ・ユー)/NV-U1」で復活を遂げることになる。

 NV-U1はタッチパネル対応の4.3型ワイドモニターおよび、512MBの内蔵メモリーを採用した、いわゆるPND(Portable Navigation Device)と呼ばれる簡易型ナビゲーションユニット。国内外の多くのメーカーから同様のモデルがリリースされているが、このnav-uは気圧&加速度のデュアルセンサーによるハイブリッド測位に加え、VICSビーコンユニットをオプション設定するなど、「クルマでの利用」を重視したキャラクターを持っていたのが特徴だった。

NV-U2

 次いで2007年10月に後継機となる「nav-u/NV-U2」をリリース。初代の特徴はそのままに、モニターを4.8型へと大型化したのに加え、内蔵メモリを2GBへと増加。さらに約20mmの薄型ボディー、気圧&加速度&ジャイロセンサーによる高性能測位システム「POSITION plus G」の採用、無料の口コミ地図情報サイト「PetaMap(ぺタマップ)」への対応など大幅に機能を強化。他のPNDやGPSを内蔵した携帯電話とは、ひと味違ったアプローチで使い勝手が高められている。

 そして2008年10月に発売となったのが、3代目となる「nav-u/NV-U3」で、ワンセグチューナーを搭載した「nav-u/NV-U3V」も同時リリースされた。さらに2009年4月にはエントリーモデルとなる「nav-u/NV-U3C」もリリースされた。今回、ワンセグモデルNV-U3VとNV-U3Cをお借りすることができたので、比較しつつ紹介していきたい。まず1回目となる今回は基本機能編として、スペックや基本機能を紹介する。次回は実際にクルマに装着し、さまざまなシチュエーションを走行した使用感などをお伝えしよう。また、徒歩・自転車でのレビューはInternet Watchに掲載されている関連記事を参考にして欲しい。

さらなる進化を遂げた3代目にワンセグ機能を搭載した「NV-U3V」
 NV-U2から一番大きく進化したポイントは、内蔵メモリが2GBから4GBへと倍増されたこと。これにより市街地図の表示が可能になるとともに、住所検索データも約3000万件から約3400万件へと増加。用意されている縮尺は25mスケールから800kmスケールと変わっていないが、従来は単なる拡大図に過ぎなかったものが、NV-U3Vでは道路の形状や建物の形まで地図上で確認することができるようになっている。オフィス街にある目的地などに向かう場合など、この違いはかなり大きいだろう。また、「グルメぴあ」や「全国立ち寄り温泉200」などガイド情報も収録され、より使い勝手が高められている。

NV-U3Vには、本体色にブラック(左)とブラウン(右)が用意される。テストで使用したのはブラウンだ

 カーナビとしての基本機能は4.8型のタッチパネル対応モニターをはじめ、高性能測位システム『POSITION plus G』の採用、渋滞回避を実現するVICSビーコンユニット(オプション)など、NV-U2を継承したもの。ナビゲーション面でも同様だが、新たに3Dリアル交差点等のガイド画像、交差点名称の音声案内が加えられたことで、より分かりやすく安心できる案内を実現している。

 AV機能も用意されており、メモリースティックデュオを利用してデジカメの画像(JPEG)や映像(MPEG-4)、音楽(MP3)を再生することが可能。音楽はナビ利用時にバックグラウンドで再生することもできるが、背面スピーカーからの出力のみ。ワイヤレストランスミッターやBluetoothの内蔵を望みたいところ。また、カードスロットが底面というのも入れ替えを考えると少し不便だ。NV-U3Vにはワンセグチューナーを内蔵。携帯TVとしての利用が可能だ。

本体とクレードルのほか、シガー電源コード(12V)、ACアダプター、USBケーブル、ケース、ストラップなどが同梱される。本体の上にある黒いモノはホーム用のスタンド。これはNV-U3Vのみ付属する本体正面にはスライド式の電源スイッチ。膨らんでいる部分がワンセグチューナーで、引き出し式のアンテナを内蔵している本体下面。電源コネクタのほか、USB端子、メモリースティックデュオスロット、イヤホン端子、ワンセグアンテナ端子、それにGPSアンテナのオープン&クレードルからの取り外し用ボタンが備わる
背面にはスピーカーとポップアップ式のGPSアンテナ、左隅には外付けGPSアンテナ用端子も用意されている「ピタッと吸盤」付の専用クレードル。向かって左側に電源端子、右側にVICSビーコンユニット用端子を用意。このクレードルさえクルマに装着しておけば、ナビ利用時は本体をクレードルにセットするだけでよい
GPSアンテナは本体裏側からポップアップさせて使用する。台座になっているのがホームスタンドオプションのVICSビーコンユニット。VICSによる渋滞情報をキャッチできるのは都市部では特に便利。ちょっと高価だが、是非欲しいアイテムだオプションの外部ワンセグアンテナ。走行中は映像を見ることができないため、それほど必要性を感じないかも
こちらもオプションの外部GPSアンテナ。ダッシュボード上に装着できるなら内蔵アンテナで十分だが、電波を遮断するガラスを採用している車種などの場合は必要だメモリースティックデュオを利用して画像や映像、音楽の再生が可能。デジカメで撮った写真をその場で見る、なんて使い方が便利そうだ
NV-U3Vにはワンセグチューナーを内蔵。フル画面のほかナビ/TVの分割も可能だが、走行中は音声のみ。走行中か否かの判断はGPSにより行なうため、同乗者がリアシートで見るなんてシチュエーションでも視聴は不可能

取り付けは専用クレードルでカンタン!
 クルマへの取り付けは初代から採用されている「ピタッと吸盤」採用の専用クレードルを使用。多くのPNDは両面テープでクレードルを取り付けるが、この「ピタッと吸盤」は裏側に粘着性のあるラバーが使われているため、シボが深いダッシュボードにもカンタンに取り付けられるスグレモノだ。配線はシガーソケットからクレードルに専用の電源コードを接続するだけ。パーキングブレーキなど、そのほかの配線は不要で、すぐに使い始めることができる。クレードルと本体の取り外しは本体下部にあるボタンを押すだけでよく、車内から車外への持ち出し、逆に車外から車内への持ち込みもほんの数秒とカンタンだ。オプションのビーコンユニットも専用コネクタがクレードルに用意されており、脱着の邪魔にはならないのも嬉しい。

クルマへの装着はまずクレードルの取り付けから。「ピタッと吸盤」をダッシュボードに押しつけて、最後に上部のつまみを反時計回りに捻ると固定できる。シボの深いダッシュボードにもガッチリと固定できるのがうれしい向かって左側に電源コネクターを接続。クレードルの位置を動かす必要がないなら、電源ケーブルの取り回しを決めて固定してしまおうオプションのVICSビーコンユニットは、ウインドーのできるだけ前の方に設置したい
VICSユニットのケーブルはクレードルに接続するが、あまり長くないので固定する前にキチンと届くことを確認クレードルへはGPSアンテナをポップアップして差し込むような感じで装着するクレードルは上下左右方向への微調整が可能なので、クレードルの固定後でも画面が見やすい位置に動かすことができる

PNDのメリットを追求した弟分「NV-U3C」も登場
 この4月、新たにファミリーに加わったのがnav-u/NV-U3Cだ。先行発売されていたNV-U3Vとの最大の違いはボディーサイズ。モニターを4.8型ワイド(16:9)から3.5型(4:3)へと変更することで、大きさが106×78×17mm(幅×高さ×奥行)(NV-U3Vは約150×約87×約20mm)、重さは約157g(同約250g)と、大幅に小型軽量化されている。数字から感じる以上にこの差は大きく、車外で使う機会が多いなら、このサイズは大きなメリットになりそうだ。

本体カラーが3色用意されるNV-U3C。左からピンク、ホワイト、シルバーで、今回使用したのはシルバー

 画面が小さいことで文字や、画面上ボタンが小さくなってしまっているが、実際に使ってみるとそれほど不便さは感じない。それよりも液晶左側にある「メニュー」「現在地」ボタンがクリック式の一般的なスイッチになっていることのほうが問題だ。NV-U3はタッチセンサータイプのため触れるだけでよかったが、こちらは力を入れないと反応してくれないのだ。手に持っての操作なら問題はないが、クレードル上で操作を行なうと本体が動いてしまうのはちょっとストレスを感じてしまう。

 カーナビ機能に目を移すと、ソフト面ではNV-U3Vと同じく4GBの内蔵メモリーを採用していることもあり、地図表示や検索などは基本的に同等。検索方法や各種検索データ、さらにガイド情報なども同じモノと考えてよい。ただし、一部の検索方法などで約半年分の進化をしており、より使い勝手が向上している面もある。

 一方、ハード面では測位方式の違いが大きなポイント。NV-U3が3種類のセンサーを利用する「POSITION plus G」を搭載するのに対し、NV-U3Cはスピードや進行方向から自車位置を予測する「POSITIONアシスト」を採用。自車位置精度の高さは当然ながら前者が上で、スペック面ではNV-U3Vに一歩譲るかたちとなる。同じくAV機能に関しても静止画の、つまりJPEG画像の再生のみと割り切った仕様となっている。

同梱されるのは本体とクレードル、キャリングポーチ、シガー電源コード(12V/24V)、ACアダプター、USBケーブル、ハンドストラップなどNV-U3Cは電源もUSB端子を利用する。クルマ用のシガー電源コード、家庭用ACアダプターもUSB端子仕様となる本体上面には電源スイッチのみ。GPSアンテナもここに収められている
本体下面にはUSBコネクタ。中央部のスリット状の切れ込みはクレードル固定用メモリースティックデュオスロットは本体左側面に。クレードル装着時でも、本体を動かさずに差し替え可能で便利だ背面もスピーカーのみといたってシンプル
パソコンと接続するとPC接続モードになり、「PetaMap」データやマークの編集、地図データのバックアップなどが行なえる。
「ピタッと吸盤」採用のクレードル。NV-U3V用と異なり電源などの端子は一切なく、本体を固定するためだけのモノ。取り付け後の微調整も上下方向のみオプションの自転車用クレードル。アーム部分とブレケット部は分離可能分離可能で、丸いボタンを押すことで上下方向のみ角度調整可能
メモリースティックデュオを使うことでデジカメで撮影した画像の表示ができる。「PetaMap」データの転送に利用することも可能だ

取り付けはカンタンだけど……
 クルマへの取り付けはnav-uシリーズならではの「ピタッと吸盤」採用のクレードル方式。ただ、NV-U3Vとは異なり電源供給端子などはなく、純粋にスタンドだけの機能しか持っていない。電源は本体のUSB端子に、シガーソケットからのケーブルを差し込むことで供給。こちらも接続するのは電源ケーブルだけでよいが、頻繁に取り外しを行なう場合は、その都度ケーブルの取り付け・取り外しの手間が必要。また、外した際のケーブル置き場にもちょっと困ってしまう。

クレードル下面には「ピタッと吸盤」を採用。手で触るとちょっとベタ付いた感じで、ダッシュボードに文字どおりピタッと取り付けることができるダッシュボードに押しつけた後は、上部のダイヤルを押しながら反時計方向に回すことで固定できるクレードルの脱落を防止するケーブルも同梱される。ダッシュボードの形状などで、あまりキッチリと固定されていないようなら付けておこう
クレードルへのナビ取り付けはパチンと押し込むだけ。左右方向への調節はできないので、クレードルを取り付けるときに位置を確認しておきたい。電源はシガー電源コードから取り、本体底面のUSB端子と接続。そのため本体下側にはある程度の隙間が必要になる

NV-U3VとNV-U3Cの違いは?
 スペックから見た大まかな区分は、NV-U3Vが普通車およびナビ重視ユーザー向け。NV-U3Cはコンパクトカーや自転車など持ち歩いて使うユーザー向けといった感じ。

 その違いは仕様表を見比べてもらえば分かるように、本体の大きさと精度がポイントとなる部分。モニターサイズの違いはバッテリー持続時間の差にも現れており、実測で満充電からNV-U3Vが2時間ほど、NV-U3Cが3時間半ほど稼働した。歩行ナビや自転車ナビとして使うことを考えればNV-U3Cのほうが使いやすい。細かな使い勝手や精度に関しては、実際に2機種を同時に装着して比較しているので、次回に詳しくお伝えしたい

NV-U3CはNV-U3Vの2/3ほど。男性なら片手にちょうど収まるぐらいのサイズで、取り付け場所に困らないし、持ち運びもラクラクだ。ガジェットとしての満足度や、所有感などはNV-U3Vに軍配が上がるクレードルも大きく違う部分。「ピタッと吸盤」はどちらも採用するが、NV-U3C用(左)は単なる固定用スタンド。NV-U3V用は電源などの接点を持ち、スタンド部分での微調整も可能だ
電源端子もNV-U3CはUSB、NV-U3Vはピンと異なる。外部バッテリーでの利用など、汎用性を考えるとNV-U3Cのほうが便利かも地図の向きをヘディングアップ、ノースアップと切り替える場合、NV-U3Vは地図縮尺変更画面の左にあるボタンで行なう。NV-U3Cは通常の地図画面左上にある「N」マークを押すことでも切り替え可能。ちょっとした違いだが、NV-U3Cのほうが便利
NV-U3VNV-U3C
本体モニターサイズ(型)4.8V3.5V
アスペクト比16:94:3
画面解像度(ピクセル)480×272320×240
外形寸法(幅×高さ×奥行mm)約150×約87×約25.7106×78×17
質量(g)約250/約280約157
測位システム自律機能POSITION plus GPOSITIONアシスト
GPSアンテナ内蔵/外部(オプション)内蔵
システム内蔵メモリー4GB4GB
外部メモリーメモリースティックデュオメモリースティックデュオ
地図縮尺25m~800km(17段階)25m~800km(17段階)
検索電話番号検索約1000万件約1000万件
住所検索約3400万件約3400万件
AV機能ワンセグ-
静止画再生JPEGJPEG
音楽再生MP3-
映像再生MPEG-4-
その他バッテリー持続時間約2時間約4時間
オプションVICSビーコンユニット-
自転車クレードル-
外部GPSアンテナ-
外部ワンセグアンテナ-
店頭予想価格6万5000円前後3万7000円前後

NV-U3VとNV-U3Cの画面サイズと全スケール比較

両機種地図の比較画面。どちらも縮尺は同じ。NV-U3Cは画面サイズが小さい分、表示する領域が狭くなっているだけ。住所や施設などの文字も若干小さくなっている
NV-U3V(左)とNV-U3C(右)のスケール比較。もっとも詳細となる25mスケール表示では、建物の形や公園内の通路まで描かれている。住所表示にも注目
50mスケール。こちらも市街地図表示だが、住所表示は省略される
100mスケール。ここからはごく普通の地図表示
200mスケール
300mスケール
500mスケール。クルマ用として案内に使うなら500mスケールあたりまでになりそう。1km以上の広域表示は地図上から遠くの目的地を探す際に使う程度で、これほど多くの区分けは必要ないハズ。逆に多すぎることでスケールの切り替えが面倒だ
1kmスケール
2kmスケール
3kmスケール
5kmスケール
10kmスケール
20kmスケール
50kmスケール
100kmスケール
200kmスケール
400kmスケール
800kmスケール

(安田 剛)
2009年 6月 9日