「トヨタF1チーム ドライバーアピアランス in アムラックス」リポート
新空力パーツの投入で日本グランプリの優勝宣言

大勢のファンを集めて行われた「トヨタF1チーム ドライバーアピアランス in アムラックス」

2009年9月29日開催



 9月29日、トヨタ自動車の無料アミューズメント施設「アムラックス東京」において、トヨタF1チーム(パナソニック・トヨタ・レーシング)のドライバートークショーイベントが開催された。本リポートではその模様をお届けする。

残念ながらトゥルーリ選手は欠席するものの400人のファンが詰めかけた
 F1日本グランプリ開催を間近に控えた時期のこのイベントには、チームリーダーのヤルノ・トゥルーリ選手、ティモ・グロック選手、サードドライバーの小林可夢偉選手の3名が集結し、チーム代表の山科忠氏、モータースポーツジャーナリストの川井一仁氏らとトークショーなどを行う予定であった。

 しかしながら、前戦のシンガポールグランプリで体調不良となったトゥルーリ選手は、日本グランプリ出場を優先するため残念ながら欠席。事前に発表のなかった遠藤里沙さん(富士スピードウェイでフォーミュラ・ニッポンとSUPER GTでMCを努める)が参加する形で開催された。

イベントの進行役をを担当したのは、川井氏(左)と富士スピードウェイで女性MCとして活躍中の遠藤さん(右)前戦のシンガポールグランプリで2位を獲得したグロック選手が登場し、会場は大きく沸いた
続いて可夢偉選手が登場最後にチーム代表の山科氏が登場した

 このイベントは無料だが、座席指定券は11時から先着順で配布された。全席指定にもかかわらず、イベント開始の30分前となる18時には9割方埋まっているという具合である。なかには赤ちゃんをベビーカーに乗せている人もいれば、一家総出で来ている人たちも見られ、その熱心さがうかがえた。開始時刻になると、立ち見席の観客も増え合計で400名ほどに。会社帰りに立ち寄りやすい時刻だったとはいえ、これだけのファンが平日に集まってしまうのだから、さすがはF1というところである。

シンガポールグランプリで活躍した空力パーツを投入
 トークショーは、川井氏と遠藤氏の司会で進行。事前にトゥルーリ選手が体調不良でイベントを欠席することは、パナソニック・トヨタ・レーシングの公式サイトなどで告知されていたため、会場ではそれほど大きな騒ぎは起きなかった。しかし、遠藤さんの口から改めてそのことが伝えられると、山科氏が「ここに来ると、僕に文句を言われるので、ちょっとシンガポールに置いてきました(笑)。明日(30日)の朝の飛行機に乗る予定ですね」とコメント。「日本グランプリはもちろん大丈夫です」と山科氏は答え、トゥルーリファン、トヨタファンを安心させた。

トヨタF1チームの3人の表情は明るく、日本グランプリの活躍に向けて期待が高まる

 前戦シンガポールGPで2位を獲得したグロック選手は、「スタートはよかったです。ルノーよりはペースが速いのは分かっていたので、ターン8で勝てました。戦略的にもうまくいったし、メカニックがよいクルマに仕上げてくれたので、レースの後半に向けてよい展開になりました」とその感想を述べた。

 シンガポールグランプリでのマシンセッティングについて川井氏が「前倒しでやったことがあるんですよね?」と訪ねると、山科氏は「はぁ、そうですねぇ」ととぼけながらも、「実はリアのサスペンションまわりの空力パーツをいろいろと変えました。日本グランプリ一発で持ってくると、そこで壊れたり、性能がわるかったりすると困るので、シンガポールで試してみようかと。ただし、試してみるにはパーツが1セットずつしかなく、もし練習で壊していたらスペアはなかった。2人ともぶつけたりしなかったし、思っていたとおりの性能が出たので、自信を持って日本グランプリでも使えますね。これはリアタイヤ内側の空気の流れをよくするというものです」とその秘密の一端を明かしてくれた。日本グランプリでは、この新パーツが活躍してくれそうだ。

 その後、日本グランプリに向けての抱負を両選手が答えることになり、グロック選手はもちろん「がんばる」とし、長らく出番のなかった可夢偉選手は「やっと出番ですね(笑)」と会場の笑いをまず誘った。「鈴鹿の抱負と言われても、自分が走るわけではないので(笑)。可夢偉選手ファンであれば、トゥルーリ選手の回復状況があまりよくないようなときはサードドライバーとして……、と期待してしまうところだろう。

 なお、山科氏は日本グランプリに対し、「ビッグマウスなことばっかり言っているので、控えめに言います(笑)。どちらかの選手が表彰台に上れたらいいな、と。もう少し夢を言えば、2位と3位でいいので2人とも表彰台に上れたらいいですね。もう少し言えば、1-2フィニッシュがいいなと。結局、またビッグマウスになってしまいました」と語り、会場を笑わせていた。グロック選手らにはプレッシャーのかかる代表の言葉である。

ファンからの質問コーナーも
 続いては3人へのファンからの質問。いくつかあったなかから、興味深いものをピックアップする。「このドライバーにだけは負けたくないという人はいますか?」という女性からの質問には、川井氏が「仲の悪いドライバーを教えろってわけではないですよね?」と少々毒のある切り返しをして会場を笑わせる。川井氏は「今、ティモは考えています。そういえば、この前パドックでのポーカーで負けたのは誰だったかな? クビサかな?」とつなぎ、そしてグロック選手は「F3時代からよく知っているのでクビサ選手とは親しいのですが、1コーナーで競ったときがあって、そのときはレースが終わってから、『もう少しでぶつかりそうになって危なかっただろ!』と言われたのですが、『あれだけいつもポーカーで負けているんだから、1コーナーでは勝たせてくれよ!』と言ったことがあります」と答えていた。

 川井氏もグロック選手に、「今年のTF109だと、鈴鹿でどのぐらいのラップが出るのか?」と質問。それに対し、「コースがどんな状況になるか(現時点では雨が降る可能性がある)分からないが、1分30秒は切りたい。そこら辺が争いになるんじゃないかと思います」と答えた。雨になるかもしれないということに関しては、「2004年の鈴鹿が雨で、フリー走行がよい感じだったので、今回どうなるか分かりませんが、雨なら雨で楽しみにしています」と結んだ。

 グロック選手は、「皆さんに応援をしてもらって、本当にありがとう。去年初めて日本に来たときも今回も、もの凄く応援してくださって日本グランプリをとても楽しみにしていますし、ぜひ表彰台に上がりたいと思います」と最後に語り、可夢偉選手は、「本日は皆さんありがとうございます。去年よりもお客さんが多くてビックリしています。今年は、本当にティモとヤルノがいい成績を残してくれると思うので、ぜひ鈴鹿で応援してもらいたいと思います」とコメント。そして拍手や声援、サーキットさながらのチアホーンに送られての退席となった。イベントの締めは山科氏が挨拶。「優勝を目指してがんばります」と、日本グランプリでの優勝宣言を力強く行った。

 トゥルーリ選手が来場できなかったのは残念だが、しっかりと体調を整えてもらい、グロック選手とともに、トヨタF1チームの初優勝を期待したい。

(デイビー日高)
2009年 9月 30日