「マロニエ・オートストーリー“秋”ミーティング2009」開催

2009年11月22日開催



 よほどのカーマニアでもなければ知る由もないことだろうが、実は栃木県は我が国のクラシックカー趣味の世界では“メッカ”とも言うべき土地。特に宇都宮や今市(現在は日光市と合併)には、今を去ること40年ほど前から、第2次大戦前のヴィンテージカー趣味に、日本で初めて挑戦してきたパイオニアたちが集結している。

 「マロニエ・オートストーリー・フォーラム」は、そんな栃木在住の愛好家たちを中心に、自動車趣味を末永く楽しむことができる環境づくりと、自動車文化を通じた社会貢献を目指して結成されたグループ。そしてこの11月22日に行われた「マロニエ・オートストーリー『秋』ミーティング」は、同グループが今年初めて開催したツーリングイベントだ。

 今回のツーリングは宇都宮市内の農産レジャー施設「ろまんちっく村」をスタート/ゴール地点として、日光市足尾地区を折り返し地点として往復する約100kmのルートを走るもの。参加車両は、関東一円から集まった約50台。第2次大戦前のベントレーやラゴンダなどから、戦後モデルでは歴代のアルファロメオやジャガー、そしてトヨタ2000GTやホンダNSXなどの日本車勢の姿も見られた。

 このツーリングの最大の特徴は、日本最古の公害として歴史的に有名な足尾銅山にて植林活動を行っているNPO「足尾に緑を育てる会」の協力のもと、参加者が足尾地区の植林ボランティアに参加する企画が盛り込まれていたことだろう。明治時代以来、銅山から排出された鉱毒ガスと酸性雨によって木々の枯れてしまった足尾の山に緑を取り戻すための植林をすることで、どうしても公害とは無関係のスタンスでは居られない自動車趣味との関わりをそれぞれ見つめ直し、環境問題に貢献する方策を模索しようという、かなり社会的な性格を持つツーリングイベントとなっていたのである。

 とはいえ、クラシックカーイベント特有の華やかな雰囲気は損なわれることなく、ツーリング以外にもジャズやスティールパンの生ライブやフリーマーケット、さらには今回の企画に賛同した各輸入車ディーラーによる、ミニ「輸入車ショー」も併催されるなど、晩秋の1日をたっぷり楽しめる内容となっていた。これも、「ろまんちっく村」を訪れたギャラリーに、このイベントを楽しみながら環境問題に思いを巡らせてほしいという、主催者側のたっての願いによるものである。

 自動車にとって、そして自動車趣味にとっても厳しい時代を迎えている今、従来のクラシックカーイベントとはまったく異なるアプローチとして注目すべきこの新イベントは、今後も大いなる成長が期待できるだろう。

宇都宮「ろまんちっく村」から、喝采を受けつつスタートしてゆく参加者。車は1934年型「シンガー9ル・マン」こちらの1929年型ベントレー・スピード6の助手席には、あの白州次郎の孫である白州信哉氏が搭乗した熱心なクラシックカー愛好家として有名な元本田技研工業社長の川本信彦氏も、愛車1939年ラゴンダ・レイピアで出発
日光市内のワインディングを快走する参加車たち。ロータスとアルファロメオにロールス・ロイスも続く雷鳴のようなエンジン音を轟かせて山間を走るラゴンダV12。1930年代のル・マンで活躍したレーシングカー好対照の2台。前方の可愛らしいのが1932年MG-J2。後方のランチア・ストラトスは本物のワークスカーだ
足尾製銅の精練所跡地と煙突の前を通過する参加車両たち。このクルマは、1959年型ランチア・アッピア後方のおどろおどろしい廃墟が、足尾製銅の精練所跡地。その前を美しい1958年アルファロメオSVZが走る巨大で醜怪な煙突と好対照の美しさを見せる1953年型ジャガーXK120クーペ。有名なヒストリーを持つ個体
足尾銅山から排出された亜硫酸ガスと酸性雨で禿山になってしまった植林会場に、参加者が続々と集結するイベントのエントラントは任意で植林に協力することになっていたが、結局全員が植林を行うことになったもちろん、川本氏も楽しげに木を植えていた。日頃から土いじりをしているので「お手のもの」とのことだ
輸入新車代理店によるミニ輸入車ショーも開催。早くもポルシェ・パナメーラが展示され、会場の人気者にアルファロメオは新旧8Cが揃い踏み。1930年代の8Cモンツァはこれ一台で10台もの新8Cが買える希少車最新型ミニも、クーパー/クーパーSクラブマン/クーパー・コンバーティブルの3台がやってきた
会場に戻ってきた参加車両は、車の生産国やブランド別に展示。左から1950~'60年代のアルファロメオ、ロータスやモーガンなどのブリティッシュ・ライトウェイト・スポーツカー群、そしてトヨタ2000GT&ホンダNSXの国産スーパーカーも並べられた
ろまんちっく村では、絵本「じどうしゃアーチャー」のモデルにもなったロールス・ロイスや、白州次郎が所有していたベントレーなどの展示が行われたほか、ジャズやスティールパンの生ライブも開催。また「地産地消」のモットーのもと、地元の食品によるケータリングも行われ、寒い会場では人気を博していた

(武田公実)
2009年 11月 27日