第1回「伊香保コンクール・デレガンス・ジャパン」開催
古き良き国産旧車専門のコンクール・デレガンス

2009年11月29日開催
群馬県 伊香保おもちゃと人形自動車博物館



 「コンクール・デレガンス(Concours d’Elegance)」とは、その名のとおり「エレガンスのコンクール」を意味する。1920年代からフランスをはじめとする欧州の上流階級で大流行したこのイベントは、もともとビスポーク(注文製作)で作らせた自慢の車を持ち寄り、その美しさを競うコンクールであったが、現代では転じてクラシックカーのコンディションや時代考証の確かさなどを競うイベントとなっている。

 今や我が国でも、大規模なクラシックカー・ミーティングの一企画として行われる例は珍しくはないのだが、イベントそのものが独立して「コンクール・デレガンス」を名乗るものは、まだ決して多くはない。そんな日本国内の数少ないコンクール・デレガンスの中でも最高峰にあるのが、欧米の一流コンクールと肩を並べることを目的として、2年前からスタートした「東京コンクール・デレガンス」である。

 そしてこのたび、その対極に位置するような新しいコンクール・デレガンスが誕生することになった。「伊香保コンクール・デレガンス・ジャパン」は、旧き良き国産車とそのオーナーによって競われる、のどかで楽しいコンクール・デレガンスである。

 群馬・伊香保温泉の人気観光スポットとして知られる、世界各国のアンティーク・トイと国産クラシックカーのミュージアム「伊香保おもちゃと人形自動車博物館」は、自ら各種のクラシックカーイベントを積極的に開催しているが、今回新たに加わった伊香保コンクール・デレガンス・ジャパンは、特にユニークなものと言える。

 欧米の高級クラシックカーが主役となることの多い従来のコンクールに対して、1979年以前に生産された国産車なら普通車、商用車、軽自動車、ノンレストア車を問わず参加できるこのイベントは、「たとえ10万円で買った車でも、あるいは家にたまたま残っていた車でも、情熱と愛情さえあればコンクール・デレガンスを楽しめる」という同博物館主宰の横田正弘氏の基本理念に基づいてスタートしたとのことである。

 開催当日の11月29日は、早朝から参加車両たちが続々と集結。日野コンテッサ1300S(1967年)を筆頭に、マツダ・サバンナRX-7リミテッド(1979年)に至る21台は、いずれもこの日のためにピカピカに磨きあげられていた。そして、1台1台がオーナーとともに会場中央でショーアップされ、オーナーたちが手塩にかけて仕上げた愛車への思い、あるいは家族とのつながりを熱く語るシーンなども見られた。

 こうして行われた第1回 伊香保コンクール・デレガンス・ジャパンは、晩秋の寒い日ながら、気持ちは暖かくなるような素敵なイベントとなったのである。2010年も11月下旬に第2回の開催が予定されているとのことなので、対象となる国産クラシックカーを所有される読者諸兄は、今から愛車をバッチリ仕上げておくのもアリかも知れない。

中央ステージに進入してくるエントリーNo.1の日野コンテッサ1300S(1967年)。いよいよコンクール審査の始まりだ中央ステージでクルマへの思い入れをアピール国産クラシックカーのスペシャリストや、旧車専門誌のジャーナリストらによって、熱心に審査が行われる
観衆の人気が抜群に高かったサバンナRX-7(1979年)。イメージカラーのグリーンは、オーナーもお気に入りフェアレディZ-T(1976年)。大学時代に新車で購入して以来、3台のフェアレディZ、しかも2by2のみを乗り継いできた永井正之さん渋い存在感を見せるセドリック・ディーゼル(1978年)。オーナーは、新車で購入したお父様から買い取ったと言う
ハンドメイド時代のいすゞ117クーペEC(1972年)は、アストンやベントレーも所有する吉田勝伸さんのエントリー「商用車部門賞」を獲得したパブリカ・トラック(1967年)。オーナーの富澤さんは、27歳にして何とも渋い趣味
「ノンレストア部門賞」を獲得したベレット1800GT(1970年)。現オーナーは高校時代に購入して以来、27年も所有「軽自動車部門賞」を獲得したホンダ・ライフGF(1973年)。オーナーの楮本さんは、家族総出でエントリー
今回の一般車部門賞と総合優勝を獲得した日産スカイラインGT-R(PGC10、1970年)。スカイラインを愛するあまり総計8台もの箱スカを所有し、自身のミュージアム立上げも準備していると言うヘビー級エンスー、中村実浩さんが徹底的な時代考証に基づき、レアな純正パーツを贅沢に使用して仕上げた珠玉の1台である
コスモスポーツ(1967年)とファミリア・ロータリークーペ(1970年)の参加者は、実は義父とお婿さんのコンビ。ロータリー好きが昂じてル・マン・クラシックにも出場するお父様曰く「うまく“息子”を巻き込めましたよ(笑)」。弱冠30歳のお婿さんも、今や日本の自動車文化を真剣に考える立派なエンスージアストであった

(武田公実)
2009年 12月 3日