ドライビング パレット那須、オープニングイベントを開催
プロドライバーや一般来場者がいち早くコースを満喫

ドライビング パレット那須 オープニングイベントにて

2009年12月5日開催



丸和オートランド那須と隣接するドライビング パレット那須

 栃木県那須塩原市にモータースポーツビギナーや未経験者向けのターマックコース「ドライビング パレット那須」がプレオープンし、12月5日にオープニングイベントが開催された。会場には、このコースをプロデュースした山野哲也選手や、その弟の山野直也選手、新井敏弘選手らも訪れ、デモランやドライビングスクール、さらに急きょ同コースのデモカーを使ったガチンコバトルも開催されるなど、大きな盛り上がりを見せた。

 ドライビング パレット那須は、ダートトラックコースである「丸和オートランド那須」と隣接して作られたコースで、フラットなアスファルト路面に、白線でコースを描き、コーナーのイン側にのみ縁石を設けた、ミニサーキットとジムカーナ場を合体させたようなコース。

 オープニングイベントでは、ドライビング パレット那須の運営会社であるM3ジャパンの代表取締役社長 坂本光弘氏によるあいさつや、参加ドライバーによるトークショーなどが行われた。坂本社長によれば、栃木県にはツインリンクもてぎや日光サーキットなど、さまざまなサーキットがあるが、ドライビング パレット那須は、なかでも特にビギナー向けのコースとのこと。さらにここで練習すれば、ツインリンクもてぎのような大きなサーキットにもステップアップできるような、練習しがいのあるコースレイアウトを山野哲也選手に考えてもらったと言う。

あいさつをするM3ジャパン 代表取締役社長 坂本光弘氏オープニングイベントにはSUPER GTやWRC、ダートトラックなどカテゴリーを超えたプロドライバーが集結したJAF(日本自動車連盟)や地元のJAF登録クラブ・団体も応援に駆けつけた
ブレーキメーカーのウィンマックスや、オイルメーカーのフォルテック、ラリーアートなどのブースが出展レーシンググローブなどの特価販売も行われた来場者には昼食が無料で振る舞われた

 そのコースを設計した山野哲也選手によると、まず第一にコースアウトしても車を壊したり傷めたりしないように、コース外側のランオフエリアもそのほとんどをフラットなアスファルトにしたと言う。さらに、コーナーではインに付く(クリッピングポイントを知る)ことが重要なので、ドライバーがインに付いたことが分かるように、イン側にのみ縁石を設けている。その縁石も、サーキットによっては、縁石自体が凸凹になっていて、乗り上げると車に大きな振動が出る縁石を設けているサーキットもある。しかしドライビング パレット那須では、なめらかなカマボコ形状とすることで、縁石に乗り上げたり、さらに乗り越したりしてしまっても車に優しい形状としている。また、一般的なサーキットよりも縁石が長く取ってあるのも特徴で、そのほうが、縁石に斜めに乗り上げる形になるため、車に優しいからというのが理由だ。

コースを設計した山野哲也選手コースの外側もフラットなアスファルトとしているバックストレッチの内側のみ砂利の部分がある
インに付いたことが分かるよう縁石を設けた乗り上げても車への衝撃が少ないカマボコ状の縁石クリッピングポイントのずっと手前から縁石ははじまる
4連続S字の最後は、マウント那須コーナーへ続く複合コーナーになる

 コースレイアウトに関しては、使える土地の面積が小さい中で、坂本社長の要望である「ここからほかの大きなサーキットに巣立っていけるような練習になるレイアウト」とするため、最初に4連続のS字コーナーを考えたと言う。山野哲也選手によれば、日本のサーキットでは、ほとんどのS字が2連続程度だが、車の挙動を覚える上でとても重要なので、このような連続したS字コーナーを作りたかったとのこと。

 「Drivin' Magic“S”(ドライビングマジックS)」と名付けられたこの4連S字は、4つのコーナーのRがすべて異なっており、徐々に大きくなっていくため、加速しながら抜けていくことになる。さらに最後のS字コーナーは、そのまま「Mt.NASU Corner(マウント 那須コーナー)」につながる長い複合コーナーになる。このコーナーは途中でRがきつくなるため、その攻略方法は難しく、ステージでコメントを求められた弟の山野直也選手は、「誰が作ったのか知らないがとても意地悪なコースだ」と会場の笑いを誘っていた。

山野哲也選手がこだわった4連続S字。一番奥がワイドヘアピンの縁石で、その手前に4連S字の1つ目と2つ目の縁石が見えるS字の4つ目はそのままスタート直後の直線に合流し、マウント那須コーナーへと続く複合コーナーになる途中からタイトになる複合コーナーのため、減速するタイミングが難しい

 ほかにも、速度の乗ったバックストレッチからのブレーキングが重要なヘアピンや、攻略が難しい直角コーナー「Iron Corner(アイアンコーナー)」など、サーキット攻略で要求されるさまざまな要素を詰め込んだレイアウトにできたと言う。コース以外にも「Technical Field(テクニカルフィールド)」と名付けられた何もないフラットなスペースも設けられており、例えばここにパイロンを立てて、コースの途中に360度ターンを組み込むなど、自由にコースを設定できるようにしたことも山野哲也選手のこだわりだ。

 デモランで、逆走をして見せた新井選手によれば、順方向とは逆に、徐々にタイトになる4連S字や、バックストレッチからの複合コーナーなど、さらに度胸のいるコースになると言う。

逆走では、徐々にタイトになる4連S字バックストレッチを逆走し、車速に乗った状態からマウント那須コーナーにドリフトで進入する新井選手
ドリフト状態のまま複合コーナーを逆走し、4連S字に進入。このときは一般の来場者向け同乗体験会中だったため、助手席には一般のお客さんが乗っている
ドライバートークショーでは、コースを走った選手の印象などが語られた4連S字の最後がそのまま複合コーナーになることは、うれしい誤算だったと山野哲也選手山野哲也選手の弟の山野直也選手
逆走するとS字は難しいと元PWRCチャンピオンの新井敏弘選手2009年の全日本ジムカーナN3クラスで山野哲也選手を抑えチャンピオンとなった柴田優作選手全日本ダートトライアルで活躍する松田周一選手

 今回のオープニングイベントでは、急きょ集まったプロドライバーたちによるガチンコ対決も行われた。スタートからS周回コースと呼ばれる4連S字を通るコースで1周した後、アイアンコーナーを通るクランク周回コースを回ってゴールするという、このコースをすべて味わえるコースレイアウトでの対決。当初1人1回ずつの走行で勝負と始まったのだが、負けず嫌いが性分のドライバーだけに、結局ほぼ全員が2回ずつ走り、ベストタイムは山野直也選手の38秒867。その後一般の参加者が自らの車で走ったタイムは40秒~45秒程度で、見ていると車の性能による差があまり出にくいコースのように感じた。

ドライビング パレット那須のスイフトを使っての異種カテゴリードライバー同士の対決。1本勝負の予定が、いろいろと理由を付けて2度走る選手が続出記者として取材に来ていた元全日本ラリーチャンプの若槻幸治郎選手も急きょ参戦

 タイム計測はコースに用意された光電管と呼ばれる装置で自動で測定され、記録はコース出口横にあるモニターに表示される。そのため、走り終えたドライバーはその場で自分のタイムを確認することができ、また、誰かがタイム計測につきっきりになる必要もない。

コース上に設置された光電管。そのための電源も用意されている時計室時計室の横に置かれた液晶モニターに、計測タイムが表示される

 低価格な料金設定も特徴で、平日ならフリー走行3000円、貸し切りでも6万3000円。土曜・祝日でもフリー走行3000円~6000円、貸し切り14万7000円となっている。坂本社長によれば、この価格設定は、平日に仲間5~6人を集めて、1人1万円程度で遊べる価格に設定したのだとか。また、これまで走行会と言えばチューニングショップなどの主催するものに参加する形が多かったが、ドライビング パレット那須では、ユーザーが直接サーキットに申し込めるような形にしたかったとのこと。タイム計測を自動計測にしたのも、主催者の負担を少なくし、来場者全員が楽しめるようにするためだと言う。

 この日は、集まったプロドライバーによるドライビングレッスンも行われたが、参加車の中にはルーフボックスを乗せたままのインプレッサや、ボルボのワゴンなどの車も見られた。しかし、ショートコースなので、車への負担も少なく、また1台ずつのコースインとなるため、遅い車でも自分のペースで走ることができるので、これはどんな人、どんな車でも参加できることの表れだろう。

事前にディーラーなどを通して申し込んだ人を対象に、ドライビングレッスンも行われた初心者向けのドライビングレッスンのため、さまざまな車種が走行した
プロドライバーに自分の車を運転してもらったり、自分の運転を見てもらってアドバイスをもらったりしていた当日来場者向けに、同乗走行も行われた
イベントの最後には、豪華賞品がもらえる抽選会も開催目玉賞品は非売品のミニカーコレクションサイン会も開催

 今後、年内は関係者によるイベントなどが行われ、正式オープンは2010年1月3日から。その場所柄から冬季は雪が心配だが、坂本社長によれば、温暖化の影響か最近は雪が積もるのは年に数回程度だとか。それもすぐに除雪できるので、降り続かない限りは問題ないとのことだ。

 初心者でも、車がノーマルでも気軽に走ることができ、近所には温泉やアウトレットパークなどのショッピング施設、観光施設なども多数そろっているので、旅行のついでに半日3000円(土曜午前の場合)で走ってみる、なんていう使い方もできるこのコース。オープンの暁には是非参加してみてはいかがだろうか。

 最後に今回のイベントでプロドライバーや参加者が走ったコースレイアウトに沿って、コースを撮影してきたので、新井選手のインカームービーとあわせてご覧いただきたい。


オープニングイベントで使ったコースレイアウト。基本的には時計回りに周回。S周回コースとクランク周回コースを1周ずつ走るレイアウトだスタート地点。ストレートの先にはマウント那須コーナーが待ち受けるマウント那須コーナーの手前、右手前の縁石は、4連S字の4つ目のもの
マウント那須コーナーマウント那須コーナーからバックストレッチにつながるその先はワイドヘアピン。タイヤ痕を見るとプロドライバーたちは白線を無視してコースの外側まで膨らんで走っていたようだ
ワイドヘアピン入口。その名のとおり、道幅が広く、混走する場合のパッシングポイントになるワイドヘアピンの出口。この先の分岐を右に行くとアイアンコーナー、左に行くと4連S字のドライビングマジックSになる1周目は4連S字へと進む。写真一番手前の縁石が1つ目の左コーナーだ
続く2つ目の右コーナー3番目の左コーナー4番目の右コーナー。縁石の内側はテクニカルフィールド。360度ターンなどを行ったタイヤ痕が見える
4つ目のコーナーはそのままスタート直後のストレートに合流するストレートをとおってすぐにマウント那須コーナーに続く。このコースで一番攻略が難しい場所だろう再びバックストレッチからワイドヘアピンを抜ける
ワイドヘアピンの出口。2周目は分岐を右に進んでアイアンコーナーに向かうアイアンコーナー手前。やはり白線を無視して道幅いっぱいに使っていた模様ほぼ直角に曲がるアイアンコーナー。その名前の由来は秘密とのこと
4連S字を横切る形で最終コーナーを目指す最終コーナー。右奥に見えるのがゴールラインだゴールライン。左右にあるのが光電管だ

(瀬戸 学)
2009年 12月 9日