トヨタ、「プリウス」のブレーキ不具合はユーザーの期待値とのズレ
新車は1月から対策済み、それ以前の車両は何らかの対応を検討

トヨタ自動車 常務役員 横山裕行氏

2010年2月4日発表



 トヨタ自動車は2月4日、3月期 第3四半期決算説明会を行ったが、その中で「プリウス」のユーザーからクレームが相次いでいる、ブレーキの不具合についての説明を行った。

 トヨタで品質保証を担当している常務役員 横山裕行氏によれば、プリウスのブレーキは通常、電気の回生を行うブレーキと、一般的なクルマでも使われる油圧ブレーキを併用しているが、ABS作動時には100%油圧ブレーキによる制動に切り替わるため、その切り替わりに時間差が生じ、空走感を感じるものだと言い、「ブレーキを踏み増してもらえれば、安全に止まることができる」と述べた。

 2009年の秋口ころにそういった事例を販売店から聞き、12月に入って積雪があるころになって、その声が増えたと言う。調査の結果、ABSの制御に関するものだと判明し、品質改良という観点から、1月より新規生産車において、ABSのプログラムを変更し、より切り替わりのタイミングを早くしたと言う。

 「私どもは、お客様の感覚と車両の挙動が少しずれていることによって、お客様が違和感を感じられるという問題だと認識していた」と言い、一方で「なかには不安になった、びっくりしたという声もあり、またさまざまな報道からこうした事象を経験していない利用者や、新規購入を検討しているお客様にも不安を感じている方がいる」ことから、新車での改良を行ったとした。ただし、対策以前に生産し、販売された車両はまだ対応していないと言い、なんらかの形で早急にご案内をさせていただきたいと述べた。

 報道陣からは、具体的にどの程度制動距離が延びるのかといった質問が上がったが、「(空走感を感じて)踏み増せばブレーキは効くもので、制動距離が延びるようなものではない」とした。また、最長で1秒程度の空走すると言う声があるが、ロジック的にはもう少し短いとし、「感覚的に1秒と言うことだろう」と述べた。

 リコールの可能性について問われると、「何らかの形でお客様にご案内できるよう方策を検討しているので、その手段についてはもう少し時間をいただきたい」とした。

 なお、プリウスのブレーキ問題では、千葉県で接触事故が発生しているが、これについては「警察とも協力して調査した結果、車両には不具合はなかった」と述べた。

 また、プリウス以外にも「SAI」やレクサス「HS250h」といった同様のブレーキシステムを持ったハイブリッド車が発売されているが、「プリウス以外ではそういった声は上がっていないが、システムとしては非常に類似しているため、検証をしている」とした。

(瀬戸 学)
2010年 2月 4日