自工会、ハイブリッド車の大規模リコール問題などについての意見
「お客様の目線に立って適切に対応していく必要がある」

自工会の青木哲会長

2010年2月18日開催



 自工会(日本自動車工業会)は2月18日、定例の記者会見を行った。今回自工会からの発表はなかったものの、記者団との質疑応答でトヨタ「プリウス」などハイブリッド車の大規模リコール問題などについて、記者団から自工会の青木哲会長に質問が寄せられた。

 以下、報道陣と青木会長による主な質疑応答を記載する。

――日本車メーカーの大規模リコールによって日本車の品質が低下しているのではないかという指摘があるが、これについてどう思うか。

 自動車メーカーにとって、安全の確保、これは第一優先されるものだ。メーカーにとって安全対策は最重要課題だし、開発・生産の際に品質を高めるべく最大限の努力をしている。自動車の部品は2万点~3万点で構成されており、さらに構造も複雑化しているが、細心の注意を払いながら、いかによい車を作っていくかという努力を各社とも行っている。そうした中、不具合が発生することも実際にはあるが、そんな時にこそお客様の目線に立って適切に対応していく必要がある。

――トヨタは今回保安基準に違反していないのにプリウスでリコールを出したが、これは他メーカーへの影響はないのか。また、今回の報道では「情報公開」の大切さというものがクローズアップされたが、それについてどうお考えか。さらに、去年もっとも販売台数の多かったプリウスの今回のリコール問題で、ハイブリッド車の普及に影響はないか。

 個別の件で自工会として申し上げられることはないが、保安基準に適合しているか否かの資料は手元にないので、この件についてはコメントを差し控えたい。情報公開については、お客様の視点に立っていかにご理解いただき、納得していただくかという努力は一般論として必要だと思う。ハイブリッド車の普及の影響については各社に問い合わせていただきたい。

――プリウスのリコール問題で、米市場での日本車への見方が厳しくなるのではという報道があるが、今年の米市場全体の動向および日本車の販売がどう推移するか。一方でプリウスなどではフィーリングに対する周知徹底がされていなかったとの指摘もあるが、自工会として今後何かしらの対策をしていくのか。

 米市場全体の話としては、1月の販売台数を見ると、前年に対して若干伸びた。これは米経済が復調傾向にあるということを反映しているのだろうが、本格的な回復を今年するかと言うと、もう少し時間がかかるのではないかと予想する。

 日本車がどれだけ米市場で伸びていくかについてだが、おそらく各社とも積極的な販売展開をしていくのだろうが、資料を持ち合わせていないので各社に伺っていただきたい。フィーリングについて周知徹底されていなかったことについてだが、これは各社の車が持ち合わせる特徴であり、これをどう周知していくかは各社が考えることだろう。

――先ほどトヨタについての質問で「お客様目線でいかに適切に対応するか」とコメントしているが、今回の一連の騒動の中で、トヨタはお客様目線だったかどうかの意見をお聞かせ願いたい。

 トヨタさんの対応については、お答えを控えさせていただきたい。

――メーカー団体の会長として、今年の春闘はどうなると予測するか。

 世界的に自動車の売上が落ち、各メーカーとも非常に厳しい収益だ。そうした中、各社とも経営方針の見直しも含め、コスト削減などあらゆる努力を行っている。先日、各社から第3 四半期の決算が発表され、それによると当初の予想よりも若干上向きとなったものの、利益水準としては非常に厳しいものだった。春闘は各企業個々の問題であり、経営側と労働組合でしっかりと話をしてもらい、合意に向けて双方が努力してもらいたいと思う。

――春闘について、去年と今年を比較して経済状況も含めてどのような違いがあるか。

 昨年は一昨年のリーマンショックにより、まさに大激震の年だったと思う。経営状況にしても、赤字企業もかなりあったわけだが、そういった意味では昨年来からの経営努力による効果が少しずつ現れているのだろう。しかし、緊急避難的に行った施策もあり、本格的な力強さを感じるまでには至っていない。現在は正常化に向けた途上段階にあると言えるだろう。その中での労使交渉のため、十分に経営サイド、労組サイドで話し合う必要があるだろう。

――エコカー減税が輸入車にも適合し始めているが、国産メーカーによくもわるくも影響があるとお考えか。また、エコカー補助金制度が9月まで延長されたが、業界として9月以降も継続したいという機運はあるか。

 PHP制度(Preferential Handling Procedure:輸入自動車特別取扱制度)に基づいて輸入される輸入車に対して、生産国における燃費基準を使用しても、それが国内の基準を満たせば、環境対策になるし国内での販売台数増につながる。輸入車を購入検討しているユーザーにとっては喜ばしい制度なのだと思う。国内メーカーへの影響は、これは自工会として情報を持ち合わせていないので分からないが、特に影響がそれほど出ることはないと考える。

 また、エコカー補助金は9月末まで延長されたわけだが、このような制度を自動車業界としては最大限活用させていただき、新たに車を購入していただく際の重要な販売ツールにしていきたいと考えている。しかし、こうした制度なしにお客様が車を購入できるような経済状況になることが一番重要だと思うので、ぜひ政府においては景気対策を実施していただきたいと思う。

(編集部:小林 隆)
2010年 2月 18日