ホンダ、ハイブリッドスポーツカー「CR-Z」
量産ハイブリッドカーとして、世界で初めて6速MT搭載モデルも用意

CR-Z α(プレミアムホワイト・パール)

2010年2月25日発売
α:249万8000円
β:226万8000円



 本田技研工業は2月25日、新型ハイブリッドスポーツカー「CR-Z」を発売した。ベースグレードの「β」と装備を充実させた「α」の2グレードを設定し、それぞれに6速MTとCVTを用意する。価格は6速MT、CVT共にαが249万8000円、βが226万8000円。

αのミラノレッドβのホライゾンターコイズ・パールβのダークピューター・メタリック
左からシビックハイブリッド、CR-Z、インサイト

 CR-Zは、「インサイト」「シビックハイブリッド」に続く3車種目のホンダのハイブリッドカー。量産ハイブリッドカーとしては世界で初めて6速MTもラインアップする。

 ボディーサイズは、4080×1740×1395mm(全長×全幅×全高)で、これは現行のインサイトの4390×1695×1425mmと比べ、310mm短く、45mm広く、30mm低くなっている。ホイールベースは2435mm(インサイトは2550mm)。車重は6速MTモデルが1130kgで、CVTモデルが1160kg。


塊感の中に跳躍感を持たせたエクステリアデザイン
 すでに東京モーターショーなどでもそのコンセプトモデルが展示されていたが、エクステリアデザインは、ホイールやミラー、灯火類などディテールに変更が加えられたものの、おおむねコンセプトカーと同様のデザインで市販化された。

 フロントからテールゲートまで続くワンモーションフォルムは、面と面とを組み合わせ“塊感”を演出。低く配置されたフロントグリル、横基調のヘッドライトが、ロー&ワイドを強調する。サイドにはエッジの効いた2本のプレスラインが後方へと伸び、大きく張り出したフェンダーなどにより、軽快感と跳躍感を演出したとしている。

低く、短く、ワイドを形にしたスポーティなパッケージ
フロントから流れるワンモーションのデザインで塊感を演出
大きくラウンドしたフロントウィンドーは、サイドまで続き、グラスエリアに一体感を持たせるヘッドライトはサイドへ流れ込むようなデザインエッジの効いたプレスラインがスピード感を表す

 灯火類には、クリスタルが積み重なったようなイメージのデザインを採用し、ポジショニングランプにLEDを用いることで先進性を表現。空力を考慮したコンパクトなドアミラーや、ボディーのフォルムを踏襲した形状のアウタードアハンドル、シャークフィンアンテナなど、細部にもこだわったデザインでまとめている。また、αにはオプションで大型ガラスをルーフ部に採用したスカイルーフを設定する。

プロジェクタータイプディスチャージヘッドライト(HID)LEDポジショニングランプフロントフォグライト
電動格納式リモコンドアミラーシャークフィンアンテナスカイルーフ
スカイルーフ外観。写真右はノーマルのルーフ

スポーツカーらしく機能性を追求。走りを予感させるインテリア
 インテリアは、ドライビングの楽しさを満喫できるよう、操作性や視認性を追求。使用頻度の高いスイッチ類はステアリングを中心に左右にレイアウトされるクラスターパネルに配置し、使い勝手を向上するとともに、コクピット感を演出している。一方の助手席側は、軽快感のあるすっきりとしたデザインにしている。

インストルメントパネルのイメージスケッチαのインストルメントパネル(6速MT)βのインストルメントパネル(CVT)
シンプルな助手席側のインストルメントパネル。上面にはウレタン表皮を用いて上質感を演出センターアッパーボックスエアコン連動温度調整機能付きグローブボックス
センターロアボックスフロントコンソールボックスのドリンクホルダーセンターコンソールにもドリンクホルダー

 右側のクラスターパネルには3つのドライブモードを選べる3モードドライブシステムのスイッチを配置。「SPORT」「NORMAL」「ECON」から好みのドライブフィールを選ぶと、アクセル操作に対するスロットル開度の割合やモーターアシスト量、エアコン制御、ステアリングフィール、CVT車では変速パターンを変更することで、セレクトしたモードに合わせた走りに味付けをする。

ステアリングを中心に左右にクラスターパネルをレイアウト右側のクラスターパネルには3モードドライブシステムのスイッチなど運転に関するスイッチを集約左側のクラスターパネルにはエアコン関連の操作パネルを配置

 メーターパネルは、アナログ表示のタコメーターと、デジタル表示のスピードメーターを組み合わせた大型1眼メーターを中心に配置。その両サイドに燃料残量や瞬間燃費、バッテリー残量、モーターアシスト/チャージ表示などをバーグラフで表示する。スピードメーターはハーフミラーに反射させて表示することで、奥まった位置に見え、車外との視距離の差を減らすことで、視認性の向上を図っている。

 スピードメーターの外周には照明の色で燃費状況を表すアンビエントメーターを装備。ドライブモードがNORMALやECONの時は、省燃費運転時にはブルーからグリーンへと色が変化し、SPORTモード選択時には赤い照明で、走りの気分を盛り上げる。また、マルチインフォメーション・ディスプレイも装備。ECOガイドや燃費履歴、平均燃費、航続可能距離、ハイブリッド車ならではのエネルギーフローなどが表示できる。

大型1眼メーターにはデジタルで車速、そのまわりにタコメーターを配置するアンビエントメーターは色でエコドライブ度を表す。省燃費運転ほどグリーンになるマルチインフォメーション・ディスプレイには、ECOガイドなどの表示に加え、運転終了後、そのドライブでのエコ運転度を採点するECOスコアなども備える

 シートはスポーツテイストあふれる低いシートポジションを実現。「シビックTYPE R」と比較してヒップポイントが30mm低く設定されている。シート自体も、シートバックのサイド部はを硬く、内側を柔らかくすることで、体格を問わず高いホールド性を実現したと言う。

 ステアリングは太めのグリップの小径φ360mmタイプで、αには本革巻きを採用。7速マニュアル変速モード付きのCVT車にはパドルシフトを装備する。また、αでは、センターコンソール部とドアグリップに、金属を蒸着させたメタルインテリアガーニッシュを採用。メッキでは表現できない金属の質感を演出する。さらに、レザーインテリアもαにオプション設定。レザーインテリアでは、フロントシートにシートヒーターも組み合わせられる。

αインテリア(6速MT)βインテリア(CVT)シートは標準のファブリック(左)のほか、αにオプションで本革(右)も用意
本革巻きステアリングはスポーティな3本スポークCVT車には標準でパドルシフトを用意クルーズコントロールのスイッチもステアリングに付く。αに標準装備
αの6速MTシフトノブβの6速MTシフトノブCVTのセレクトレバー
αに装備する高輝度メタルインテリアガーニッシュHondaスマートキーシステムはαに標準装備βに標準のリトラクタブルキー

 後席は2名分で、エマージェンシー用と割り切ったタイトなもの。シートバックは可倒式で、操作レバーは、運転席からも手が届く背もたれ上部に配置される。また、チャイルドシートも装着可能となっている。

 ラゲッジルームは、990×770mm(幅×奥行き)で容量は214L。後席のシートバックを倒すことで、奥行きが1280mmになり、容量は382Lまで拡大。これは、ゴルフバッグ2つが収納できるサイズだと言う。

後席は2名分。決して広くはないISOFIXチャイルドシート向けロアアンカレッジとトップテザーアンカレッジを後席左右に装備ラゲッジルーム
後席シートバックを倒せばゴルフバッグ2つが入るトノカバーはディーラーオプションで設定ラゲッジルームアンダーボックス。パンク修理用工具なども収納される
細く見えるAピラーで視界を確保後方視界180度リアワイドカメラをオプション設定

パワートレーン
 インサイトとシビックハイブリッドが直列4気筒 SOHC 8バルブ 1.3リッター i-VTECエンジンであったのに対し、CR-Zでは直列4気筒 SOHC 16バルブ 1.5リッター i-VTECエンジンを採用している。ピストンスカート表面にドット状のパターンを施すピストンパターンコーティングの採用などでフリクション低減を徹底するとともに、低回転時には2つの吸気バルブの内の1つを休止させる1バルブ休止機構を採用した。

 エンジン単体での出力は、6速MT車が最高出力84kW(114PS)/6000rpm、最大トルクが145Nm(14.8kgm)/4800rpm、CVT車では最高出力83kW(113PS)/6000rpm、最大トルクが144Nm(14.7kgm)/4800rpmを発生する。

 組み合わせるIMAシステムはインサイトと同じもので、モーターの出力は最高出力が10kW(14PS)/1500rpm、最大トルク78Nm(8.0kgm)/1000rpm。10・15モード燃費はCVTが25.0km、6速MTが22.5km/Lとなる。

 ハイブリッドシステムは、基本的に従来のインサイトやシビックハイブリッドと同様で、モーターが状況に応じてエンジンをアシストする。低速時であっても基本的にはモーターのみでの走行はしない。信号や渋滞での停車時にはエンジンを自動的に停止させるオートアイドルストップシステムを持つ。CVT車の場合は、ブレーキを踏んで10km/h以下になるとエンジンを停止し、ブレーキを離すと再始動する。6速MT車の場合、30km/h以下でクラッチを奥まで踏むとエンジンを停止。ニュートラルにしている間はエンジンを止めたままで、再度クラッチペダルを踏んで、ギアを入れると再始動する。

1.5リッターi-VTECエンジンに組み合わせるのは薄型DCブラシレスモーター

 6速MTは、CR-Z用に新開発したもの。シフトストロークを45mmと短くし、クイックな操作感とした。シンクロは2速をダブルコーン、3速を摩擦係数の高いカーボンのシングルコーンと容量を増やすことでスムーズな変速を可能とした。低回転でもモーターアシストによりトルクが厚いハイブリッド車は、MTでもエンストしにくく、高めのギアでもスムーズに加速する今までにないMTになったと言う。また、6速MT車には、坂道でブレーキを約1秒間保持するヒルスタートアシストを標準装備する。

新開発の6速MTのカットモデルCVTのカットモデル

ボディー(空力)
 ボディーはフロントピラーインナーロアやサイドシル、ミドルフロアクロスメンバーに高ハイテン材を採用し、軽量・高剛性のボディー骨格を実現。エンジンの高さを1.3リッターエンジン並みに抑えたことでボンネットを低くし、また、フロントウィンドーとAピラーの段差を小さく抑えるなど、空力面もこだわり、乗用車では世界トップクラスの空力性能を実現したと言う。

乗用車で世界トップクラスの空力性能フロントウィンドーとAピラーの段差を減らして空力を改善

 フロントロアアームはクラス初の鍛造アルミ製を採用。ステアリングは大容量ブラシレスモーターを使ったEPS(電動パワーステアリング)とし、インサイトの16インチアルミホイールより5kgの軽量化をした軽量アルミホイールやスポーティタイプのタイヤ、低重心のプラットフォームの採用などにより、高い運動性能を実現している。

シャシーレイアウトアルミ鍛造フロントロアアーム16インチ軽量アルミホイール
エアバッグシステム作動イメージ

 安全性能に関しては、ホンダ独自の衝突安全技術である「G-CON」によるコンパティビリティ対応ボディーとしたほか、後方からの追突時にヘッドレストを前方へ移動させ、首にかかる負担を軽減する頸部衝撃緩和シートを標準採用する。また、運転席エアバッグには、より素早く展開し、長い間エアバッグの内圧を保持する連続容量変化タイプのエアバッグを採用。そのほか、助手席乗員姿勢検知機能付き前席用サイドエアバッグや、サイドカーテンエアバッグをオプション設定する。

インターナビ
 CR-Zにオプション設定されるインターナビでは、自動車メーカーとしては初の「リンクアップフリー」サービスを用意する。これは通信機器を標準装備するとともに、通信費を永年無料とするもの。これにより利用者はいつでも最新の地図データが利用でき、インターナビが保有する渋滞情報も考慮できる。また、全国の利用者と燃費ランキングで燃費を比較できたり、自分のクルマの走行距離や使用年数にあわせた情報を受けられる。通信費は、車検をホンダの正規ディーラーで受けることで、引き続き無料になる。

オプションのHDDインターナビシステムオプションのAM/FM付きCDプレーヤーインターナビでは全国のドライバーと燃費比較できる
 
【お詫びと訂正】記事初出時、「世界で初めてマニュアルトランスミッションもラインアップ」と記載した部分がありましたが、正しくは「世界で初めて6速MTもラインアップ」となります。また、車両重量がCVTモデルと6速MTモデルで入れ違いになっておりました。ご迷惑をおかけした皆様にお詫びを申し上げるとともに、訂正させていただきます。
 

(瀬戸 学)
2010年 2月 25日