ルノー、新型「ルーテシア」と2010年の事業戦略発表会
2010年は3つの新型車を投入し、FTS戦略を推進

マイナーチェンジしたルーテシアと、ルノー・ジャポンのフレデリック・ブレン氏(左)、大極司COO

2010年3月5日発売
5速MT:209万8000円
4速AT:219万8000円



 ルノー・ジャポンは2月26日、日産グローバル本社内にある日産ホールにて、マイナーチェンジした新型「ルーテシア」と、2010年の事業戦略発表を行った。フロントマスクが変わり、安全装備を充実させたルーテシアを公開したほか、FTS戦略など2010年のルノーの国内戦略などが語られた。

フロントまわりが変わった新型ルーテシア
 新型ルーテシアは、2006年に登場した3代目ルーテシアをマイナーチェンジし、外見などの変更を行って、3月5日に発売される。コンセプトは「フレンチエレガンス」。プラットフォームやパワートレインの変更はなく、可変吸気バルブタイミング機構付きの直列4気筒 1.6リッター DOHC 16バルブエンジン搭載。最高出力は82kW(112PS)/6000rpm、最大トルク151Nm(15.4kgm)/4250rpm。

 この新型ルーテシアでは、マルチグレード構成からシングルグレード構成となり「ルーテシア 1.6」のみを用意。トランスミッションは、5速MTモデルとマニュアルモード付きの4速ATモデルを選べ、価格は5速MTモデルが209万8000円、4速ATモデルが219万8000円。ステアリング位置は右のみとなる。

 エクステリアでは、フロントまわりのデザインを大きく変更したほか、リアのコンビネーションライトのデザイン変更、リアバンパーのデザイン変更が行われた。また、ボディーカラーは9色展開となる。

マイナーチェンジしたルーテシア。フロント部分が大幅にデザイン変更された。ボディーカラーはブルーエトワール メタリック
リアはコンビネーションランプの形状は変わらないが、ライト配置などのデザイン変更がされている。ボディーカラーはペール ポム メタリック
新しくなったフロントまわり

 フロントマスクは昨年発売の「ルーテシア RS(ルノー・スポール)」とほぼ同じで、ルーテシア RSでは黒く塗られていた部分がボディーカラー同色となったもの。従来型からヘッドライトの形が大きく変わり、左右に分かれていたフロントグリルが小さなスリットへになった。フロント部分の形状が大きく変更された結果、全長は従来よりも35mm伸びた4025mmとなったが、全幅1720mmと全高1485mmは変わらない。

サイドからはマイナーチェンジによる違いは分かりにくいヘッドライトはプロジェクタータイプ。フォグランプも標準装備
新デザインのリアコンビネーションランプ15インチアルミホイールも新デザインとなった。タイヤサイズは前後とも185/60 R15

 インテリアでは、フロントシートのデザインが変更された。シート表皮のデザインを変えたほか、クッション弾力などを変更、より座り心地のよいシートとし、オーディオも新型のものに置き換わっている。また、従来は上級グレードのみの装備だったESP(横滑り防止装置)を標準装備する。

室内はシートとオーディオ以外の変更はないオーディオが新型になり、デザインが変わった
新しいシートは、表皮と若干形状が変わっている
トランスミッションは4速ATと5速MTが選べるフレンチエレガンスのコンセプトには3つのSも含まれる
9色のボディーカラー。いずれもフランス名がつく。うち3色は注文色で納期が長くなるサスペンションなどのメカニズムには、基本的に変更はない
ルーテシアの説明をするルノー・ジャポンのフレデリック・ブレン氏

新型では8割を他社からの乗り換えに
 発表会では、新しくなったルーテシアと、輸入コンパクトカーの市場について、ルノー・ジャポンのフレデリック・ブレン氏が説明を行った。ルーテシアは欧州では「クリオ」の名前のもと定評あるコンパクトカーとして、欧州でカー・オブ・ザ・イヤーを2回も受賞していること、1990年から20年間にわたって1000万台を販売していること、ルーテシアは1947年発売の「4CV」から続く系譜のモデルであることなどが説明された。

ルーテシアの系譜の始まりは1947年の「4CV」ルーテシアの前身「ルノー5」の2代目初代「ルーテシア」(写真は欧州仕様:クリオ)
2代目「ルーテシア」(写真は欧州仕様:クリオ)3代目「ルーテシア」(写真は欧州仕様:クリオ)2009年10月発売の「ルーテシア RS」(写真は欧州仕様:クリオ RS)

 日本においてはルーテシアを1991年から導入、直近の2009年に導入された「ルーテシア RS」は予想の3倍の受注を獲得していることなども発表された。

 また、国内での全長が4.2m未満の輸入コンパクトカーの市場概況を説明。ルーテシアが該当する輸入コンパクトカーの市場は年間7~8万台の安定した市場で、輸入車全体の45%を占めるとした。

 マイナーチェンジしたルーテシアの顧客ターゲットは、30代後半から40代前半の男女で、ルノー車からの乗り換えが20%、それ以外からの乗り換えが80%と想定。この80%のうち半分程度は、車体が大きくなってしまったCセグメントから、ルーテシアのようなBセグメントへの乗り換えの流れがあるとしている。

 具体的な乗り換え元の車種としてはプジョー「307」や4代目または5代目の「ゴルフ」を想定していると言う。国内に輸入するルノー車全体の中では、ルーテシア RS(ルノー・スポール)を含むルーテシア全体で25%を占めているが、マイナーチェンジ後もこの比率を維持していくと予想した。

 また、今回のルーテシアのラインアップには5速MT車も同時発売となっている。この理由についてブレン氏は「他のメーカーからマニュアルミッションが消えていく中で、ルノーだからこそマニュアルを導入し、パッション、エモーションを提供したい。それがルノー・ジャポンの使命」と説明した。

ルーテシアの実績の数々日本の自動車市場における輸入車とフランス車輸入コンパクトカーの市場はほぼ安定している
ルーテシアのターゲットユーザーシングルグレードで、トランスミッションは5速MTと4速ATが選べる
ルノー・ジャポンCOOの大極司氏

「DRIVE THE CHANGE」のブランドメッセージを掲げ、2010年は2009年を上回る
 今回の発表会は、同時に2010年事業戦略の場でもある。冒頭、ルノー・ジャポンCOO(Chief Operating Officer)の大極司氏は「DRIVE THE CHANGE」という新しいブランドメッセージを発表した。「DRIVE THE CHANGE」は世界共通メッセージで、ルノーは変革を推進するという意味がある。自動車を取り巻く環境が歴史的転換点にある今日、ルノーが自ら変化して環境、社会、経済からの要請に応えられるようにすることを明確にしたものだと言う。

 従来、日本では国内にあった独自のメッセージを掲げていたが、今後は日本でも「DRIVE THE CHANGE」を採用していく。

 また、2010年のルノー・ジャポンの戦略として大極氏がCOOに就任してから掲げた「FTS戦略」を推進していく。FTS戦略とはフレンチタッチ、トレンディ、スポーティの頭文字を取ったもの。以前のルノーのブランドイメージ調査結果が「フランス、カルロス・ゴーン、日産」だったことに端を発し、これを「ルノーといえば、フレンチタッチ、トレンディ、スポーティだね」と認識してもらえるよう、すべての活動にFTS戦略を当てはめていく。

 販売台数の面では、2010年は2009年を上回ることを狙う。2009年のルノー・ジャポンの販売台数は前年比22%減の1755台。販売台数を減らした要因は「カングー」などの新型車が秋に集中し、台数に新車効果が表れなかったことと、新型車の受注数に供給が応えられなかったことと言い、今年は新型車の投入などで2009年の台数を超えることが目標だとした。

新ブランドメッセージ「DRIVE THE CHANGE」ルノー・ジャポンのFTS戦略ルノー・ジャポンの販売台数の推移

 販売拠点などのネットワークの面では、質よりも量の充実とし、昨年7店を立ち上げたルノー・スポールスペシャリスト・ディーラーのみで扱う専用アクセサリーの発売や、ディーラーのメカニックの資格取得の拡大を挙げた。

 従来はメカニックの資格取得はすべてシンガポールの施設に行く必要があったが、電気系統の資格「EM(Electro Mechanic)」は日産の研修施設を使い、ルノー・ジャポンがルノーの代理として資格認定ができるようになった。そのため、今年から取得者の拡大を狙っていると言う。

 また、ルノーがワールドワイドで行っている取り組みとして、障害者にクルマを幅広く提供することを通じ、モビリティ社会への参加を促し、雇用を一層促進するという活動がある。ルノー・ジャポンでは元オートバイレーサー 青木拓磨氏のイベントでの講演などを通し、障害者にクルマの楽しさや運転の楽しさを伝えてく活動を行う。

販売ネットワークでの取り組みメカニックの資格取得を推進する障害を持つ方々の社会参加を促す取り組みを行う

2010年の新型車は合計3車種、ユーザーイベントは4イベントを予定
 FTSの戦略のうち、今年の新型車は3車種と予告された。今回発表のルーテシアのほかに、秋に導入予定の「カングーBe-BOP」と「メガーヌ RS(ルノー・スポール)」。メガーヌ RSはノーマルのメガーヌに先行して導入予定で、すでに販売店には問い合わせが多く寄せられていることが明らかにされた。発表時期について大極氏は「今年10月のF1日本グランプリの開催にあわせたい」と話した。

ルノー・ジャポンのラインアップ今年の秋ごろ導入予定の「カングー Be-Bop」

 昨年好評だったダイレクトコミュニケーションを目的としたイベントも継続する。3月に開催するクルマと自転車の複合イベント「ルノー&インターマックス 6 Wheel Day」、5月にカングーのユーザーが集う「ルノーカングージャンボリー2010」、7月に岡山TIサーキットで行う「ルノー パッションデイズ2010」、10月の「ルノー・スポールジャンボリー2010」の4つのイベントが予定されている。

 大極氏はイベントを行う点について「我々はクルマだけを売っているクルマ屋になりたくないと思っている。クルマを取り巻く生活の提供もそのひとつで、イベントによってクルマのある生活をみんなで楽しみましょうというメッセージ」と開催の理由を語った。

 また、ユーザーに関係のある取り組みとしては、ルノー・ジャポンのWebサイトにユーザー参加型の企画「カングー日本の道をゆく」を今週から開始した。カングーのユーザーからコメント付き画像の投稿を募り、掲載する。

 大極氏は「お客様に対するカングーに対する愛着を感じ、毎日、新しい投稿を見るのが、本当に楽しみになってきた。見ると幸せな気分になる」と感想を述べた。年末には投稿画像で2011年カレンダーを製作することも検討していると言う。

2010年に予定されているイベントWebサイトで展開する「カングー日本の道をゆく」「カングー日本の道をゆく」に投稿された画像

(正田拓也)
2010年 2月 27日