ボッシュ、横浜事業所を拡張し竣工披露会を開催

ボッシュ 横浜事業所

2010年6月15日開催



 ボッシュは6月15日、神奈川県横浜市都筑区にある横浜事業所の拡張工事を竣工・正式オープンし竣工披露会を開催した。43億円をかけて約2万1000m2へ拡張した工事では、環境に配慮し最先端の建築技術を駆使したと言う。

従業員が倍増した横浜事業所
 横浜事業所にはシャシーシステム・コントロール事業部やガソリン・システム事業部などがあり、開発や営業の拠点としている。今回の拡張は、2009年12月に完成した拡張エリアの建物と、既存建物のリノベーションが含まれている。

 従業員数は520名から1000名に増加。オフィスは太陽光を自動的に調節し、従業員に快適な職場環境を提供するブラインドを採用するなど、省エネルギーにも配慮している。

 披露会であいさつに立った同社の取締役社長 織田秀明氏は「近隣の方にとっても環境に優しい事業所。働く従業員にとっても快適なオフィスになっている」と新しくなった横浜事務所を評価。ここで開発を行っているガソリンエンジンの効率化やABS、ESC(エレクトロニック・スタビリティ・コントロール)といった安全技術の開発を、さらに強化していくとした。

 横浜の地で拡張を行ったことについて、1911年にボッシュが日本進出したときの場所であることや、近隣にドイツ人向けの学校があるなどドイツからの赴任者が住む環境に適していること、エンジニアが働く中での「住む場所」として恵まれていることなどを挙げた。

 また、今回の拡張は2008年から日本の研究開発センターの拡張へ78億円の投資を行っているうちの一環とし、今後は北海道の女満別テクニカルセンターの拡大などを予定し、研究開発の拡大を図っていくと言う。

 披露会では横浜市都筑区長の吉田哲夫氏が来賓として祝辞を述べ、「新たに土地を購入して、研究所を作り、雇用をしていただく。これは大変うれしいこと。都筑区は横浜市内でも2番目に製造業が多い区で、製造業を維持・発展していくことが大事。中小企業とボッシュが力を合わせてよりよい技術が都筑区から発展していけばと思っている」と話し、期待を寄せた。

竣工披露会は太陽光の降り注ぐ事業所のアトリウムで行われた取締役社長の織田秀明氏横浜市都筑区長の吉田哲夫氏
横浜事業所の建築物配置ボッシュの日本での歴史。来年はちょうど100周年にあたる
ABSユニットの変遷。手前の新しいものほど小型化される安全対策のためのカメラやレーダーセンサー走行と発電を兼ねるモーター
電気走行用のインバーターボッシュの自動車向けパーツ各センサー類
ESCの体感マシーンも展示。ESCの有無をバーチャルに体感することができる横浜事業所への来訪者が最初に訪れるアトリウム2009年末に完成した拡張エリアの建物

ロバート・ボッシュGmbH シャシーシステムコントロール事業部長のヴェルナー・シュトルト氏

横浜の拠点で日本のメーカーの世界プロジェクトをサポート
 ドイツのロバート・ボッシュGmbHからはシャシーシステムコントロール事業部長のヴェルナー・シュトルト氏が、横浜や日本における拡張戦略、ボッシュが考えるエンジンや安全の技術について説明を行った。

 1996年から2002年まで日本に滞在し、横浜市の住民だったと言うシュトルト氏は「世界で3割のシェアを占める日本のメーカーは非常に重要なお客様。日本の自動車メーカーは主要な意思決定を日本で行うという方針があり、横浜の拠点を通じて、日本のメーカーの世界プロジェクトに責任をもってサポートできる」と、横浜に拠点があることのメリットを話した。

 シュトルト氏はまた、パワートレーンの方式の推移など、ボッシュの考えるクルマの未来について「遠い将来は電動化が進み自動車の構成が変わっていくが、今後20年間はガソリンなどの内燃エンジンが主流を占める」と話し、「短期的、中期的には内燃エンジンのテクノロジーをさらに開発することで、燃費の低減、CO2の削減を低減していく」と、ボッシュの対応を説明した。

 さらに次世代の駆動方式は「将来のハイブリッド車や電気自動車への準備として代替燃料を含めたテクノロジーの開発にも投資をしていく」としたものの、「2020年以降は激しく伸びることが予想されるが、2020年の時点で、電気自動車やハイブリッド車などの電気自動車のシェアは全世界のクルマの生産量の10%に満たない」との見通しを示した。

 ボッシュが力を入れているディーぜルエンジンについても触れ、クリーンディーゼルは排出ガスの技術とともに高効率だと訴え、「直噴、ダウンサイジング、ハイブリッドを備えたガソリンエンジンでも100kmを走るのに4.7Lが必要。それに対して、クリーンディーゼルは3.2Lの燃料しか使わず、32%少ない燃料で走る」と、燃費の優位性を強調した。

 一方、車両の安全性についても説明を行った。「2020年までに怪我のない運転を実現すること」という目標を掲げたボッシュは、2000年代の早い時期に、独立に搭載された安全システムをネットワーク化するCAPS(先進安全統合システム)を提言している。CAPSは、システムとセンサーの機能をネットワーク化することで、アクティブ・セーフティ(予防安全)とパッシブ・セーフティ(事故時の乗員保護)のための機能を相互にリンクさせるというもの。

 ボッシュでは、実際の交通事故データを調べており、衝突事故の寸前に全くブレーキを踏んでいないか、ブレーキの踏み方が不十分なドライバーが多いことが分かったそうだ。そのため、開発した自動緊急ブレーキを使えば「実に4件のうち3件までは防止できる」と言う。

 シュトルト氏は「横浜がドイツ国外では最大のアクディブ・セーフティ、パッシブ・セーフティの研究開発拠点で、乗用車用、モーターサイクル用のABSでは世界最先端で開発の中心」とし、「2輪用では日本のバイクメーカーと緊密な関係を築き、それが成功のカギとなった」と実績を強調した。

JOEM(日本メーカー)の生産シェアは世界の3割パワートレインの今後2020年の代替パワートレインの市場予測
日本メーカー向けのガソリンシステムのポートフォリオディーゼルエンジンの排気ガス低減技術ディーゼルエンジンの燃費向上
安全性に関する技術の統合図ボッシュは事故データを分析して安全対策の新機能を検討する自動緊急ブレーキの導入による追突事故の減少予測
ESCを100%装備した場合の効果予測モーターサイクル向けのABS

(正田拓也)
2010年 6月 16日