アウディのスポーツ走行を体験できる「サーキット エクスペリエンス」リポート

2010年7月17日開催
富士スピードウェイ



 アウディ ジャパンは7月17日、サーキット走行イベント「アウディ サーキット エクスペリエンス 2010」を静岡県の富士スピードウェイで開催した。

 アウディ車の、特にスポーツモデルの性能をサーキットで体験するためのイベントで、5月22日にラウンド1をツインリンクもてぎで開催。今回はラウンド2で、9月25日にはスポーツランドSUGOでラウンド3が、11月6日には鈴鹿サーキットでラウンド4が開催される。

 ラウンド1はアウディ車のオーナーだけが参加できるクローズドイベントだったが、ラウンド2以降はアウディ車オーナーでなくても参加でき、アウディが用意する車両で走行できる。ラウンド2の定員は25組50名だが、1000組を超える応募があったという。

 当日の富士スピードウェイはフォーミュラ・ニッポン第3戦の開催中。走行イベントの合間には、フリー走行と予選、併催レースの全日本F3選手権を見ることができるほか、F3決勝のグリッドウォーク、パドックやピットの見学もできた。

 サーキット エクスペリエンス 2010は、2010年中にあと2回開催される予定で、いずれもアウディ車オーナー以外でも参加できる。応募はサーキット エクスペリエンスのWebサイトから可能だが、それぞれ応募締切が異なるので、注意されたい。

 開催日会場応募締切
Round39月25日スポーツランドSUGO(宮城県)9月12日
Round411月6日鈴鹿サーキット(三重)10月24日

Sモデルでサーキット走行
 アウディでの走行は、レーシングコースでの「パレード走行」と「アクティブ走行」、それにショートサーキットとジムカーナコースの4種類。ショートサーキットとジムカーナは、どちらか1つが割り当てられる。レーシングコースにはおなじみ、世界最長1.5kmのストレートがあり、アウディの高速性能を体験できる。

 走行イベントはまず、午前のパレード走行から始まる。これは先導車の後について隊列走行するもので、速度は最高でも120km/h程度。まさに“パレード”だが、午後に控えるアクティブ走行に向けて車に慣れ、コースを知るための大切な機会だ。

 この日ためにアウディ ジャパンが用意したのは、「S3」「S4」「S5」「RS6」「S8」「TT RS」「TTS」のいずれも「Sモデル」と呼ばれるスポーツモデルと、それらの頂点に立つ「R8」。そして、試乗は叶わなかったものの、今秋発売予定のR8のオープンモデル「R8スパイダー」が、パレード走行を先導した。

 また、アウディ車オーナーが持ち込んだ車両は、現行のR8、S5、TT RS、先代A4ベースのRS4からA3、A4、A5スポーツバック、A6など、バラエティに富んだモデルが揃った。

Cパドック駐車場に整列したパレード走行の参加車両。先導車はR8スパイダー
パレード走行はレーシングコースをゆっくりと2周した

ジムカーナで旋回性能を堪能
 パレード走行の後は、割り当てられた班に分かれて、ジムカーナコースとショートサーキットに移動した。

 ジムカーナコースにはパイロンで、スラローム、0-100m加速と急制動、定常円旋回のコースが作られている。ここでは、SUPER GTやスーパー耐久に参戦しているレーシングドライバーの藤井誠暢選手のインストラクションのもと、用意されたアウディ車でのハンドリング、制動力や旋回性能を確かめることができる。

 取材した班に用意されたのは、TTS、S4、S5の3台。まずは藤井選手に同乗してコースの走り方を学び、次に単独で走行する。

 記者は333PSのV型6気筒 3リッター スーパーチャージャーエンジンを搭載するS4で走ってみたのだが、スラロームや0-100m加速、急制動が思い通りなのはもちろんのこと、定常円旋回ではアクセルを踏み込んでも外に膨らむことなく、思い通りのラインで回っていけた。コーナーリング時に左右後輪にトルク差を発生させて、旋回性能を上げるスポーツデファレンシャルの威力を体感できたわけだ。

ジムカーナ場に設けられたコース。スラローム、0-100m加速、急制動、中速コーナーが用意されているインストラクターの藤井誠暢選手
スラロームするS5TTSで急制動
中速コーナーは定常円旋回を試すことができる

藤井選手がS5でジムカーナコースを走るオンボード映像(1分11秒)

意外と手強いショートサーキット
 続いてショートサーキットに移ると、4台のR8と2台のTT RS、そしてRS6とS4が1台ずつ用意されており、R8とSモデルで4周ずつの周回を楽しめるようになっていた。

 全長4.6kmのレーシングコースに比べれば、920mのショートサーキットは短いと感じるかもしれないが、レーシングドライバーの関谷正徳氏が監修し、FIAの公認も得ているコースは、なかなか手強い。

 こちらではレーシングドライバーの荒聖治選手が走行前のブリーフィングを行ったが、その際に注意点としてあげたのがストレート。230mほどの長さながら、下り坂になっていてスピードが出やすく、第1コーナーへの進入には注意を要する。また、見通しのきかないコーナーもあり、ショートサーキットと侮ると事故に繋がるという。

 そのため、ショートサーキットの走行体験では長袖と長ズボン、ヘルメット(無料で用意された)の着用が義務づけられた。

ショートサーキットのインストラクターは荒選手
まずはTT RSとRS6で走行し、その後R8に乗り換えた

アウディが耐久レースを変えた
 サーキット エクスペリエンスの参加者に控室として用意されたのは、グランドスタンドの向かい側、ピットビル2階のクリスタルルームだ。豪華なケータリングの昼食をとりながら、富士スピードウェイのストレートとピットロードを大きな窓から眺めたり、室内のモニターでラップタイムやコースの各所の映像を見ることができるという、贅沢な空間だ。

 ここではパレード走行前のブリーフィングが行われたほか、ゲストとしてアンドレ・ロッテラー選手と、荒聖治選手のトークショーも行われた。

 開催中のフォーミュラ・ニッポンに参戦しているロッテラー選手は、5月のル・マン24時間レースでアウディのワークスカーに乗り、総合2位に入賞したことでも知られる。プライベートでも、欧州でS5、日本でTT RSに乗るというアウディ遣いである。

 ル・マンについて聞かれたロッテラー選手は「フォーミュラ・ニッポンとル・マンはスピードはほぼ同じだが、フォーミュラ・ニッポンが1時間のスプリントレースなのに対し、ル・マンは30時間がんばらなければならない」とその過酷さを表現した。

 荒選手は2004年にアウディR8でル・マン24時間レースで総合優勝を経験している。「R8以前は、ル・マン24時間レースではクルマを守るためにペースをコントロールして走らなければならなかった。24時間本気で走るといろいろなところが壊れるので、ラップタイムを10秒ほど落として走るようなレース展開だった。しかし、R8はアクセル全開で24時間走り切ってしまい、以来、それがル・マンの常識になってしまった。アウディが時代を変えた」と、アウディがル・マンに与えた影響を語った。「今年はアウディが表彰台を独占したが、ライバルがエンジントラブルで潰れていく中、速いだけでなく戦略や耐久性のすべてのバランスがとれた、アウディらしい優勝だった」。

クリスタルルームロッテラー選手と荒選手のトークショー
アウディ ジャパンのドミニク・ベッシュ社長も来場。昼食時には各テーブルを回って参加者と言葉を交わしていたクリスタルルームに置かれたレーシングシミュレーター。ラップタイム上位2名は、荒選手と藤井選手のドライブするR8に同乗してレーシングコースを走ることができた
クリスタルルームからF3決勝を観戦フォーミュラ・ニッポン参戦を発表した近藤レーシングのマシンが、フリー走行に登場した

いよいよアクティブ走行へ
 いよいよレーシングコースでのアクティブ走行の時間がやってきた。参加する車両はCパドックの駐車場に集合し、4つの隊列を組んで、荒選手や藤井選手がドライブする先導車についてピットロードに進入。ピットロードからコースへの出口で一旦停止して隊列を組み直し、いよいよアクティブ走行の開始だ。

 こちらは午前のパレード走行よりも速度が高い。最高速度は180km/hに制限されているものの、各コーナーではよりハードなブレーキングを要求されるし、ステアリングをこじるだけではうまくクルマの向きを変えられないことなどもすこし経験できる。

 結局、途中1回のピットインを挟んで、レーシングコースを4周した。このくらいでは「もうちょっと走りたい」という気持ちも残るが、サーキット走行未経験の参加者もおり、集中力がもつのは4周程度ということで、この周回数になっているという。“腹八分目”というわけだが、サーキット走行の魅力を知る糸口として、非常に有意義な1日だったと言える。

 


S4によるアクティブ走行のオンボード映像(6分36秒)

(編集部:田中真一郎)
2010年 7月 30日