初表彰台を獲得したエヴァンゲリオンレーシング
SUPER GT第5戦SUGOで3位入賞

SUPER GT第5戦SUGOで3位に入賞したエヴァンゲリオンレーシング

2010年7月25日決勝開催



  7月25日、スポーツランドSUGO(宮城県柴田郡村田町)で「2010 AUTOBACS SUPER GT第5戦 SUGO GT 300km RACE」が開催された。31号車 エヴァンゲリオンRT初号機aprカローラは、予選では2位、決勝は3位となり、初表彰台を獲得した。レース全体については既報のとおりだが、本記事ではエヴァンゲリオンレーシングの各セッションの詳細、マシン、ドライバー、レースクイーンのフォトギャラリーなどをお届けしよう。

 前戦セパンで4戦を終え、第5戦のSUGOから後半戦の開始となる。GT300クラスのドライバーズポイントは11点で11位。トップの7号車 M7 MUTIARA MOTORS雨宮SGC 7(谷口信輝/折目遼)は40点なので、ここで上位入賞をすればシリーズチャンピオンの可能性が残される。第5戦、第6戦はウェイトハンディが獲得ポイントの2倍なので、31号車 エヴァンゲリオンRT初号機aprカローラは22kg、7号車 M7 MUTIARA MOTORS雨宮SGC 7は80kgとなる。第7戦はウェイトハンディが等倍、最終戦はウェイトハンディなしとなるので、この2戦は上位進出のチャンスだ。

公式練習(7月24日、9時~10時45分)
 今回のレースは、SUGOが得意で速さに定評のある嵯峨選手を柱にレースプログラムを進める計画だ。最初のセッションは嵯峨選手から走行を開始し、タイヤの比較、マシンセッティングを担当した。積極的な周回を重ね空力、マシンのセッティングとタイヤを選定したが、想定のタイムには届くもののマシンのバランスがよくない。その後、マシンセッティング能力の高い松浦選手に交代し再度バランスをチェックした結果、例年以上の暑さに見舞われたSUGOサーキットのコースコンディションに対して、セッティングがずれていることが判明。マシンセッティングを大幅に変更した。

 公式練習の多くの時間をマシンセッティングに費やしたため、通常のアタックシュミレーションは行わず、再度マシンに乗り込んだ嵯峨選手が出した1分25秒386がこのセッションのベストタイム。セッションのトップは2号車 アップル・K-ONE・紫電(加藤寛規/濱口弘)の1分24秒482、2位は7号車 M7 MUTIARA MOTORS雨宮SGC 7(谷口信輝/折目遼)、3位は25号車 ZENT Porsche RSR(都筑晶裕/土屋武士)となり、31号車 エヴァンゲリオンRT初号機aprカローラは4位となった。

公式予選で馬の背を走る31号車

公式予選(7月24日、12時45分~15時20分)
 今回も予選方式はスーパーラップ方式だ。全車走行する予選1回目の上位8位までがスーパーラップに進出できる。スーパーラップは予選1回目の8位のマシンから1台ずつタイムアタックを行い、スターティンググリッドの上位8台を決める。まずは公式予選で8位以内に入ることが重要だ。

 まずは公式予選GT300/GT500の混走時間帯、松浦選手が1分26秒270、嵯峨選手が1分26秒620の上位のタイムを出し、難なく基準タイムをクリア。ここで赤旗中段となり混走時間帯は終了した。そして迎えたGT300クラス占有時間帯、少しソフト目のタイヤを履きセッション開始早々に嵯峨選手がコースイン。2周をかけてタイヤを温め、3周目に1分26秒105、4周目に1分25秒419、4周目にベストタイムとなる1分24秒544を叩きだし、なんと2号車 アップル・K-ONE・紫電に続く2番手タイムでスーパーラップ進出を決めた。

スーパーラップ(7月24日、15時10分~)
 スーパーラップは公式予選の8番手からタイムアタックを開始し、公式予選2位の31号車 エヴァンゲリオンRT初号機aprカローラは7番手で登場する。最初にアタックをした43号車 ARTA Garaiya(高木真一)が出した1分24秒505を誰も抜くことができず、6台のアタックが終了した時点でもトップタイムは43号車 ARTA Garaiyaだ。

 大音響で「残酷な天使のテーゼ」がサーキットを流れる中、嵯峨選手がコースイン。決勝を見据えたロングライフのタイヤをチョイスしたことから、目標は5番手であった。2周でタイヤを温めアタック開始、セクター1は43号車 ARTA Garaiyaから0.227秒遅れで通過するが、後半のセクションでタイムを縮め、0.064秒速い1分24秒441を叩きだしこの時点でトップに立った。もし2号車 アップル・K-ONE・紫電のタイムが伸びなければ初のポールポジションも見えてきた。

 最後にコースインした2号車 アップル・K-ONE・紫電(加藤寛規)はセクター1で0.272秒上回り、そのまま後半のセクターも無難にまとめ1分24秒082でポールポジションを獲得した。31号車 エヴァンゲリオンRT初号機aprカローラは惜しくもポールタイムに0.354秒届かなかったが、チームの予想を遥かに上回る2番手を獲得し、過去最高のグリッドを得る大満足な結果であった。

ピット&イベント
 1カ月前にセパンで第4戦は行われたが、国内でのSUPER GTは、5月初めの富士スピードウェイからおよそ3カ月ぶりとなる。スポーツランドSUGOには多くの観客が詰めかけ、ピットウォークやキッズウォークは大賑わいとなった。

 エヴァンゲリオンレーシングの人気は高く、土曜の夕方に行われたキッズウォークも、日曜に行われたピットウォークもカメラの砲列が集まっていた。今回は鈴鹿サーキットで同日に行われた鈴鹿8時間耐久ロードレースと日程が重なったため、綾波レイ役の水谷望愛さんは鈴鹿サーキット、SUGOには式波・アスカ・ラングレー役の千葉悠凪さんと、今回サーキット初お披露目となる真希波・マリ・イラストリアス役の和泉テルミさんの二人が登場した。


夕日に照らされる中、混雑するキッズウォークエヴァンゲリオンレーシング松浦選手とレースクイーンの2人も記念撮影に応じる同じaprの井口選手、国本選手はラジコンのカウルにサイン
同じくaprの高木選手と新田選手もサイン期待のルーキー山本選手もサインインパルチームは星野監督もサイン会に参加
小暮卓史選手、ロイック・デュバル選手は誕生日が近いので揃ってバースデーケーキが用意されたSUGOからエヴァンゲリオンレーシングチームスタッフのシャツもデザイン変更された日曜のピットウォークも大混雑
ピット前にはプラグスーツを着た二人が登場ステージではパフォーマンスも行われた鈴鹿8耐に行った綾波の代わりにプチエヴァ?綾波が登場?? 観客のお嬢さんでした
エヴァンゲリオンレーシングのレースクイーンの前はカメラの砲列

フリー走行(7月25日、9時10分~9時55分)
 日曜の天候は曇り時々晴れ、昼頃に雨がパラつく可能性もあった。朝のフリー走行は、前日よりも気温も路面温度もやや低い状況。31号車 エヴァンゲリオンRT初号機aprカローラはスタートドライバーを務める嵯峨選手からコースイン。途中、赤旗でセッションが20分ほど中断したが、再開直後に1分26秒009のタイムを出し、マシンバランスの確認後、ピットシミュレーションを兼ねて松浦選手へとドライバー交代。代わった、松浦選手もプログラム通りの走行を続けマシン状態をチェック、終了間際に1分26秒071とタイムを揃えてきた。順位的には11番手のタイムだが、決勝でのパフォーマンスは高いことが確認できた。

決勝(7月25日、14時~)
 いよいよ決勝レースだ。2番グリッドにマシンを停めグリッドウォークの時間を迎えた。多くの観客が集まる中、トヨタ自動車の山科専務取締役が嵯峨選手を激励に訪れた。山科氏が「エヴァンゲリオンってパチンコ?」と大きく外すと、嵯峨選手は「エヴァンゲリオンは大人気アニメで……」と懇切丁寧に説明、レースクイーンのコスチューム、腰に巻いていたレーシングスーツを着込みプラグスーツを解説、最後は握手をして健闘を誓った。

決勝に向け準備が進む31号車 エヴァンゲリオンRT初号機aprカローラスタートドライバーの嵯峨選手がマシンに乗り込むピットオープンを待つ嵯峨選手
エンジンスタート決勝前のウォームアップにリフトオフ8分間のウォームアップを終えピットに戻る
グリッドウォーク。まもなく決勝レースのスタートとなるレース初参加のマリ役の和泉テルミさん。次戦鈴鹿も参加しますグリッドでも2人は大人気
スタートを待つ嵯峨選手とアスカ役の千葉悠凪さんマシンの準備は万端セカンドドライバーの松浦選手はベテランらしく余裕の表情
嵯峨選手の激励に訪れた山科専務最後は握手で健闘を誓った

 14時、決勝レースがスタートした。GT500もGT300も慎重なスタートを切り、大きなクラッシュもないオープニングラップとなった。その中、2番手グリッドから冷静なスタートを切った嵯峨選手は1周目から果敢に2号車 アップル・K-ONE・紫電を追撃する。後方では3番手の11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP F430が後続勢を抑える形になり、先行する2台のマッチレースとなった

 トップ争いをする2台のタイム差は5周目には0.697秒と縮まり、10周目には2.353秒に開き、13周目には再び0.821秒に縮まるなど、一進一退の攻防が続いた。ところが23周目に1.439秒だった2台の差が、28周目には4.5秒、34周目には6.548秒まで開いてしまった。

スタート直後に2コーナーを2位キープで通過2台のマッチレースが始まった徐々に差が開く

 チームはこの展開も予想しており、このパターンになった場合は36周程でピットインし、松浦選手に交代してセカンドドライバー勝負の予定であった。ところが、その判断を鈍くしたのが、突然発生した雨雲とわずかに降り出した雨だった。ピットインしスリックタイヤに履き替えた直後に雨が降れば、再びピットインしレインタイヤにチェンジすることになり上位入賞は消えてしまう。パラパラと降りだした小雨が本格的に降りそのタイミングで、松浦選手に交代するか、それともスリックのまま行けると読んでこの時点でピットインなのか、天候は悩ましい状況となった。

 その空模様を見ている間に、2号車 アップル・K-ONE・紫電は他車を巧みに使い、2番手を走る嵯峨選手との差を、37周目には12.6秒、40周目には17.8秒、ピットイン直前の45周目には23秒と広げてしまった。その後、このマージンでは後方の3番手との距離も際どくなると計算し、ピットインの決断を下したのは予定よりも10周遅い46周めだった。

 ピット作業に若干のロスはあったが、ポジションキープの2番手で松浦選手がコースイン。後方からジワジワと順位を上げてきた3号車 HASEMI SPORT TOMICA Zとの3位争いが始まった。後方からスタートした3号車 HASEMI SPORT TOMICA Zは集団の中を走っていたためタイムが上がらず、嵯峨選手との差は25周目には20秒に広がっていた。ところが35周目あたりからその差は縮まり初め、37周目には17.9秒、43周目には14.6秒まで縮まり44周目に3号車 HASEMI SPORT TOMICA Zはピットインを行った。

 松浦選手がアウトラップを終えると2周早くピットアウトした3号車 HASEMI SPORT TOMICA Zはすぐ背後に迫っていた。6周に渡り1秒以下の差で攻防が続いたが、53周目のバックストレートでテール・トゥ・ノーズとなり、馬の背の進入で松浦選手がインをキープすると3号車 HASEMI SPORT TOMICA Zはアウトから並びサイド・バイ・サイドでコーナーを抜け、次のSPインの進入で抜かれ3位に後退した。

ピットアウト後は3号車に攻め立てられる3位にポジションダウン食らいつくも徐々に差が広がった

 チェッカーまでの残り20周あまり、再び2位のポジションを取り戻すべく3号車 HASEMI SPORT TOMICA Zと熾烈なバトルを繰り広げるが、3号車 HASEMI SPORT TOMICA Zの柳田選手はGT300の周回遅れを巧みに使いマージンを広げていった。松浦選手はプッシュ続けるが予選順位からひとつポジションを下げた3番手でチェッカーを受けた。31号車 エヴァンゲリオンRT初号機aprカローラとして初表彰台獲得となり、松浦選手、嵯峨選手はポディウムで嬉しそうにシャンパンファイトを行った。

3位で表彰台に立つ嵯峨選手と松浦選手勢いよくシャンパンを飛ばす嵯峨選手。松浦選手は少しだけ飛ばして……終わった頃に、隠し持ったシャンパンで加藤選手に襲いかかる松浦選手。会場は爆笑

 初表彰台は嬉しい結果となったが、多くの課題も見えたレース内容となった。SUPER GTではGT500に上手に抜かれるテクニックと周回遅れのGT300を上手く抜くテクニックが要求される。各周回のラップタイムを分析すると、序盤の2号車 アップル・K-ONE・紫電との攻防ではGT500に抜かれ始めた14周目あたりからラップタイムのバラツキが大きくなる。

 例えば13周目から17周目の2号車 アップル・K-ONE・紫電(加藤寛規)のラップタイムは1分26秒922から27秒271と0.349秒のバラツキだが、嵯峨選手は1分26秒311から28秒176と1.865秒のバラツキがある。速いタイムで走る周もあるが、GT500に抜かれるときのタイムロスが大きく、GT300の周回遅れも加わった中盤以降はさらにその落ち込みが大きくなっている。

 もう一つ気になったのはピットインだ。タイミングが遅れたことは天候のせいもあり仕方ないと思われる。だが、3号車 HASEMI SPORT TOMICA Zとのタイム差が35周目以降に急激に縮まっていることを考えると、早めにピットに入っていれば2位をキープできた可能性はある。また、44周目にピットインした3号車 HASEMI SPORT TOMICA Zと46周目にピットインした31号車 エヴァンゲリオンRT初号機aprカローラのインラップ、アウトラップを比較すると、インラップは31号車 エヴァンゲリオンRT初号機aprカローラが2秒速いが、アウトラップは9.3秒も遅い。ピット作業も含めピットインで7秒以上を失っている。

 表彰台、優勝を狙うためにはGT500に抜かれ、GT300を抜くときのタイムロスと、ピットインのロスを最小限に抑えることが必要だ。次戦は700kmとシリーズ最長のレースなのでこれらのロスが大きく順位に影響するだろう。

 今回の3位でドライバーズポイントは22点となり、8位に浮上した。1位の7号車 M7 MUTIARA MOTORS雨宮SGC 7との差も22点に縮まり、次戦以降の展開ではシリーズチャンピオン争いに絡めるチャンスも出てきた。SUPER GT第7戦は8月21日、22日に鈴鹿サーキット(三重県)で開催される。エヴァンゲリオンレーシングの活躍を期待しよう。

 嵯峨選手、松浦選手とチーム代表のコメントは以下のとおり。

嵯峨宏紀選手
「今回、31号車として初めて表彰台に立つことが出来、大変満足しています。レースでは序盤2号車についていくことができたことで、優勝の可能性もありましたが、周回遅れの処理や天候などに翻弄されチャンスを逃してしまったので、今後の課題としてさらなる上位を目指していきたいと思います。次の鈴鹿は自分の得意なコースなので、今回以上の結果を期待してほしいと思っています」

松浦孝亮選手
「嵯峨選手が前半頑張って、3位と15秒差をつけるまでリードし、2位の状態で僕のスティントに繋いでくれた。途中小雨が降ってきた時にそのギャップがなくなり、また多少引っ張りすぎたことで3位にポジションダウンしてしまった。残りのスティントは、とにかく抜かれないペースで走行し、ポジションを守ることに徹しました。自分のスティントで、ポジションダウンを喫してしまったことは悔しいが、初表彰台を獲得できたので、今大会の結果は謙虚に受け止め、今後更なる上位フィニッシュを目指していきたいと思っています」

apr代表 金曽裕人
「マシンのアドバンテージ、タイヤのアドバンテージ、ドライバーのアドバンテージは十分にあったにもかかわらず3番手の順位でレースを終えてしまった。この結果を踏まえ、我々に足りない部分を冷静に分析すると、チームの決断力の遅さと、ドライビングの巧妙さが上位の2台に対して大きく負けていました。この課題をクリアすることは難しいことでは無く対処も鮮明である。よって、次戦の鈴鹿700kmはこの課題を克服し、もっと皆様の期待に答えられるように致しますので、変わらぬご声援をよろしくお願いいたします」

フォトギャラリー
 ここではエヴァンゲリオンレーシングのマシン、ドライバー、レースクイーンの写真を掲載する。画像をクリックすると、フルHD解像度(1920×1080ピクセル)などで開くので、その迫力の写真を楽しんでほしい。

(奥川浩彦)
2010年 8月 2日