ホンダ、「フィット ハイブリッド」はすでに1万台の受注
マイナーチェンジした「フィット」発表会

代表取締役社長 伊東孝紳氏と新型フィット ハイブリッド

2010年10月8日開催



 本田技研工業は10月8日、かねてから予告していた「フィット」のマイナーチェンジを行うとともに「フィット ハイブリッド」を追加して発売した。それにあわせて、東京都港区の本社において発表会を開催した。

 発表会会場には同社の代表取締役社長 伊東孝紳氏、取締役 日本営業本部長 小林浩氏らが参加。フィット/フィット ハイブリッドについては本田技術研究所 フィット/フィット ハイブリッド開発責任者 人見康平氏が説明を行った。

「パーソナルモビリティを提供する企業として、CO2排出量を大幅に低減させることが責務」と言い、フィット ハイブリッドを世界に先駆け日本で発売し、ハイブリッドのさらなる普及に弾みをつけたいと抱負を語った伊東社長取締役 日本営業本部長 小林浩氏本田技術研究所 フィット/フィット ハイブリッド開発責任者 人見康平氏

 人見氏は、スモールカーでもっとも重要な性能を「デザイン」「経済性」「使いやすさ」「動力性能」と言い、すべての項目でナンバー1を獲得するために新型フィット/フィット ハイブリッドを開発してきたと言う。毎日使うクルマとして、ユーザーから寄せられた声をもとにスイッチ類やフューエルリッド、トランクの使い勝手など細かな改善を図ったほか、「各グレードのそれぞれにホンダの最新技術を詰め込んだ」と言う。

新型フィットはデザイン、経済性、使いやすさ、動力性能それぞれの資質を進化させた空力性能の向上やシリンダーフリクション低減などのほか、ECONモードの採用によって低燃費を実現できたと言う
各グレードは明確なキャラクター付けがされた

 フィットのグレードは、直列4気筒SOHC 1.3リッターエンジンを搭載する「13 G」「13 G・スマート セレクション」「13 L」、直列4気筒SOHC 1.5リッターエンジンを搭載する「15 X」「15 RS」、IMA(インテグレーテッド・モーター・アシスト)と直列4気筒SOHC 1.3リッターエンジンを組み合わせた「ハイブリッド」「ハイブリッド スマート セレクション」「ハイブリッド ナビプレミアム セレクション」の計8モデル。13 G、13 Lをスタンダードモデルとして、それに“上質感”を与えた15 X、“楽しさ”を与えたRS、“先進性”“低燃費性”を与えたハイブリッドと、それぞれにより明確なキャラクターを与えており、これについて「より幅広い層のユーザーにフィットを体感してもらいたいため」と人見氏は説明する。

13G15X
RSハイブリッド ナビプレミアム セレクション

 フィットの特徴を語る上で欠かせない室内空間については、「機械のスペースは最小限に、居住空間は最大限にという人間尊重の設計思想『M・M(マンマキシマム・メカミニマム)思想』に則って開発した」(人見氏)と言う。エンジンルームのスペースはできるだけコンパクトにしたほか、前席シート下に燃料タンクを設置して居住性を高めるという、従来モデルから採用される手法が新型でも採られる。

 燃費については、これまで1.3リッターエンジンは10・15モード燃費で24.0km/L(FF)、1.5リッターエンジンは19.6km/L(FF)だったが、それぞれ24.5km/L(13 G、13 L、FF)、20km/L(15 X、FF)に向上した。

 燃費向上に成功した具体的な要素としては、エンジン内部ではピストンのコーティング変更、シリンダーのフリクション低減などの改良が図られたほか、FFモデルのCVT搭載車および4WD車、ハイブリッドに設けられたエンジン、トランスミッション、エアコンなどを協調制御して燃費向上に貢献する「ECONスイッチ」などによって実用燃費を向上させたと人見氏は言う。

 また、空力性能の改善も挙げられる。今回のマイナーチェンジモデルをデザインするにあたり、空力を向上させることが前提だったと言い、フローティンググリルの形状変更によってボンネットへの空気の流れをスムーズにしたほか、フロントフェンダーアーチにラインを追加し、タイヤハウス内の空気の乱流を抑えた。さらにリアバンパー下部に小型のディフューザーを設けたことなどによって、空力性能は従来モデルよりも2%(RSは6%)向上したと言う。

 その一方で、出力・トルクについては、1.3リッターエンジンは最高出力73kW(99PS)/6000rpm、最大トルク126Nm(12.8kgm)/4800rpm(CVTモデル)、1.5リッターエンジンは最高出力88kW(120PS)/6600rpm、最大トルク145Nm(14.8kgm)/4800rpmとこれまでと変わらないことから「燃費とパワーを高次元で両立した」と、その性能を誇る。

フィット RSは専用セッティングのダンパー、スプリング、スタビライザーなどが与えられるスポーティモデル。6速MTが初採用となったほか、CVT車は7スピードモード付きのパドルシフトを備える
M・M(マンマキシマム・メカミニマム)思想に則り、広い室内空間を実現。6:4分割可倒式のリアシートを倒すとフラットな空間が出現する(写真はRSの内装)
後席の座面ははね上げることもでき、背高の荷物を積載することもできる

 そして注目のフィット ハイブリッドだが、価格は国内で販売されるハイブリッドモデルで、もっとも低価格な159万円からとなった。

 ベースグレードと同等の積載性とシートアレンジを実現するため、PCU(パワー・コントロール・ユニット)とIMAバッテリーを2段重ねにしてラゲッジルームのフロア下に配置。これによりベースグレードと同等の広さを確保した。

 エクステリアは、ハイブリッド専用カラーのフレッシュライム・メタリックを設定したほか、メッキグリルやメッキヘッドライト&リアコンビネーションランプにクリアブルー塗装が施された。また、標準モデルのハイブリッドが装備するフルホイールキャップも空力特性を考慮したデザインだと言う。

 インテリアはインストゥルメントパネルを専用カラーのシャンパンメタリックとしたほか、メーターの照明色をブルーで統一。メーター内にはマルチインフォメーション・ディスプレイを設けてモーターアシストやチャージ状態を表示する。

フィット ハイブリッドの燃費は30km/Lフィット ハイブリッドは発信時のモーターアシスト量を専用設計したことなどにより「街中ベストのハイブリッド」と人見氏は言う

 パワートレーンの基本コンポーネントはインサイトと共有し、燃費は10・15モードで30km/Lを実現した。

 エンジンは減速時に全気筒のバルブ作動を休止することでポンピングロスを低減し、電力回生効率を高めるVCM(バリアブル・シリンダー・マネージメント)を搭載し、最高出力65kW(88PS)/5800rpm、最大トルク121Nm(12.3kgm)/4500rpmを発生する直列4気筒 SOHC 1.3リッター。これに最高出力10kW(14PS)/1500rpm、最大トルク78Nm(8.0kgm)/1000rpmを発生するモーターを組み合わせ、システム全体では最高出力72kW(98PS)/5800rpm、最大トルク167Nm(17.0kgm)/1000-1500rpmとなる。

 空力性能については先に述べたとおりだが、「ハイブリッド車ではさらに転がり抵抗の低いタイヤを採用したほか、ブレーキ非作動時の回転抵抗を低減するフロントキャリパー、エンジンアンダーカバー、フロントアンダーカバーなどを装備して空気抵抗を低減させた」と、人見氏はハイブリッドモデルの特徴を語った。

 また、IMA搭載によって変化した前後重量バランスは、足まわりを変更することでカバーした。ダンパーとスプリングは専用設計したほか、フロントスタビライザーをベースグレードより大径化するとともに、リアスタビライザーを追加。さらにリアサスペンション取付部などの強化も行われている。

 そのほか、IMAはフィット専用のセッティングがなされており、インサイトよりモーターアシスト量を増加させることで力強い発進加速をみせるほか、「低速クルーズ時におけるモーターのみでの走行領域をインサイトより拡大した」(人見氏)と解説していた。

ボディーカラーはハイブリッド専用のフレッシュライム・メタリックを用意。ハイブリッド専用装備としてクリアブルー塗装のメッキグリルやメッキヘッドライト&リアコンビネーションランプなどが与えられる
インストゥルメントパネルは専用カラーのシャンパンメタリック。メーターの照明色はブルーになる

 なお、すでにフィットは4000台の、フィット ハイブリッドは1万台の受注を受けていることが小林氏から明らかにされた。

フィット ハイブリッドは事前に1万台を受注したインサイト、フィット、CR-Zに続き、国内市場のハイブリッドモデルを今後さらに拡充していくと言う

(編集部:小林 隆)
2010年 10月 8日