J.D.パワー、HEVとEVの需要予測は「過熱気味」
2020年におけるHEVとEVの販売予測台数は全体の7.3%に過ぎない

2010年10月27日発表



 J.D. パワー・アンド・アソシエイツは10月27日、ハイブリッド車(HEV)と電気自動車(EV)の世界全体の需要予測に関するリポートを発表した。

 これによると、HEVとEVを合わせた世界全体での販売台数は2020年に520万台と予測。これは同年の世界の販売予測台数である7090万台の7.3%に過ぎないと言う。

 その理由は、「従来型の自動車からHEVやEVへの乗り替えを多数の消費者に納得させることは困難」としており、消費者が代替パワートレーン技術に移行するためには、以下のシナリオのいずれか、または複数の組み合わせが必要だと言う。

・2020年までに石油系燃料の価格が世界的に大幅に上昇すること
・環境に配慮した技術において、コストを削減し、かつ消費者の信頼感を高めるような大きな進展があること
・消費者にHEVやEVの購入を促すように政府の方針が強化されること

 しかし、上記のシナリオについて今後10年以内に実現する可能性は低いとしており、同社のシニア・バイスプレジデントのジョン・ハンフリー氏は「消費者意識に関する調査によると、税制上の優遇措置や燃費基準の引き上げなど公共政策の大幅な変更がなければ、今後10年以内に環境に優しい自動車への大量移行が起きるとは見ていない」としている。

HEVおよびEVに関する消費者意識
 リポートによると、消費者はHEV・EVに対して「外見やデザインが好きではない」「新しい技術の信頼性に関する不安」「全般的なパワーおよび性能に対する不満」「航続距離に関する不安」「バッテリーの充電に必要な時間に関する懸念」といったさまざまな不満・懸念を持っていると言う。

 特に、費用面での影響は大きく、消費者の多くはHEVやEVに興味を持っているが、購入価格の割増分を知るとその興味が大幅に低下するのだと言う。

 ハンフリー氏はこのことについて、「米国の消費者調査でハイブリッド車の購入に興味があると答えた対象者の中でも、その自動車の購入に平均5000ドル余分にかかると知った時点で、興味を持つ割合は約50%低下する」と述べている。

米国の自動車購入車がハイブリッド車の検討を避ける主な理由(図左)と購入を拒否する主な理由(図右)(出典:J.D. パワー・アンド・アソシエイツ)

技術面での欠点
 リポートではHEVとEVの技術面についても触れ、HEVとEVは将来の選択肢の1つとしては興味深いが、航続距離、充電時間の長さ、限定されたサポート・インフラや高価なバッテリーパックなどの欠点が残っていることを指摘。

 さらに、多くの政府が排気ガスの削減ができるとしてEV導入を期待しているが、「自動車の排気ガスを削減できたとしても、EVが使う電気を生産する火力発電所からの排出が増えたのでは意味がない。エネルギーのサプライチェーン全体でのCO2排出量を考えなければならない」(ハンフリー氏)と結論づけている。

(編集部:小林 隆)
2010年 11月 2日