「モータースポーツタウンミーティング ROUND3」開催
来週末開催される「JAF Grand Prix」をアピール

F1 PIT STOP CAFEで開催された「モータースポーツタウンミーティング ROUND3」

2010年11月3日開催



 モータースポーツの振興を目的としたモータースポーツ推進機構は、東京都港区六本木にあるF1 PIT STOP CAFEにおいて、モータースポーツの楽しさをアピールするイベントとして「モータースポーツタウンミーティング ROUND3」を11月3日に開催した。

司会を担当した、モータースポーツ推進機構 理事の高橋二朗氏

 モータースポーツジャーナリストで同機構理事の高橋二朗氏によれば「サーキットにいきなり行くにはハードルが高いので、こうしたイベントを通じてその楽しさを理解してもらいたい」という趣旨で行われている本イベントでは、フォーミュラ・ニッポンやSUPER GTに参戦しているドライバーなどが登場しトークショーを行った。

 ROUND3では、来週末(11月12日~14日)に富士スピードウェイで開催される「JAF Grand Prix SUPER GT & Formula NIPPON FUJI SPRINT CUP 2010」(以下、JAF GP)に焦点を当てた内容となっていた。


2レース制で最終戦が行われるフォーミュラ・ニッポン
 今週末に鈴鹿サーキットで最終戦を向かえるフォーミュラ・ニッポンからは、KONDO RACINGの松田次生選手、DOCOMO TEAM DANDELION RACINGの伊沢拓也選手、DELIZIEFOLLIE/CERUMO・INGINGの井口卓人選手の3人がトークショーに参加した。

KONDO RACINGの松田次生選手DOCOMO TEAM DANDELION RACINGの伊沢拓也選手DELIZIEFOLLIE/CERUMO・INGINGの井口卓人選手

 前半は、J SPORTSから提供された今年のフォーミュラ・ニッポンのダイジェスト映像が流され、それを見ながら3人がコメントをするという形で進行していった。

 その中で、第4戦ツインリンクもてぎから途中参戦となった松田選手がスタート直後の1、2コーナーでクラッシュするシーンが映ると「ちょっと痛いですね、このシーンは。後ろから誰かさんにつつかれて何もできませんでした。つついた本人は普通に走ってますね」と、松田選手は自虐的なネタで観客を笑わせ、司会進行を担当する高橋氏が「井出選手とぶつかった訳ですよね」と絡んだ相手の名前を紹介。松田選手は、「あえて僕は言わなかったんですけどね(苦笑)」と絶妙な返しをし、会場が笑いに包まるなど、和やかな雰囲気で進んでいった。

 その後、話題は最終戦のレギュレーションに移った。この最終戦は2レース制で行われ、2レース目ではタイヤ交換(4輪でなくともよく最低1本)が義務づけられている。伊沢選手は「チームと話してタイヤ交換が1本でよいなら、最初の周にピットに入って1本だけ交換するという作戦を考えていた。ところが先日Fポン(フォーミュラ・ニッポン)のWebサイトを見ていたら、10周した後でないこと交換できないルールが追加されていて、10周も走ると1本だけだとバランスが崩れてしまうので、リアのみか4輪全部かのどちらかにしないといけないことが分かった」と言い、最終戦のレギュレーションへの対応について語った。

 また、スキッドブロック(モノコックの下につけられている木製の板)について話題がおよぶと、伊沢選手が「スキッドブロックの厚さは1cmだが、それが9mm以下になってはいけないというのがレギュレーション。だけど車高は1mm下げるだけでかなり違うので各チーム攻めることになる。それでサーキットを走っているうちに思ったより削れてしまって、この間の塚越選手の車のように規定以下になってしまうこともある」とスキッドブロックに関する難しさなどを説明した。

 司会を務める高橋二郎氏は、2007年に小暮選手が最終戦で優勝してタイトル獲得かと思われた後、このスキッドブロックの違反が見つかって失格になり、祝勝パーティとなるはずの会場が微妙な空気になった逸話を紹介し、「普段からどこか遠くを見ている感じの小暮選手が、ほとんど宇宙を見ているぐらいに遠くを見ていた」と語ると、会場は大いに盛り上がった。

 最後に参加した3人の最終戦への意気込みが語られ、井口選手は「前回ポイントが取れたので、今回もポイントを狙って抜くレースをしたい」と、伊沢選手は「今年は厳しいシーズンになってしまったが、ここ2レースは調子が出てきたので、勝負したい」と、松田選手は「チャンピオンを争っている人たちはガチガチになっていると思うので、こちらは途中参戦でノーチャンスなので逆にその人たちをかき回していきたい」と述べ、それぞれ最終戦での健闘を誓っていた。


左が富士スピードウェイ 東京営業部 部長の西川英之氏。右手に巻く赤いリストバンドが東軍用、手に持つ青いリストバンド(タオルにもになる)が西軍用

出身地別の東西戦など新しい取り組みが行われるJAF GP
 その後、富士スピードウェイ 東京営業部 部長の西川英之氏が壇上に登場。来週末開催される「JAF GP」の概要を紹介した。

 JAF GPではそれぞれ異なる団体により運営されているフォーミュラ・ニッポン(日本レースプロモーション運営)と、SUPER GT(GTアソシエーション運営)が、1つのイベント内でそれぞれレースを行う。約20年ぶりにJAF GPという日本のASN(Authority Sport Nationale:四輪モータースポーツを統括する団体)の名前が冠されたイベントになり、日本の最高格式のレースとして開催される。

 西川氏は、特別戦となるJAF GPでは新たな試みを行うと言う。例えばSUPER GTでは、通常2人のドライバーが交代してレースを行うが、JAF GPではフォーミュラ・ニッポン/SUPER GTともに土日に1レースずつ決勝レースが行われ、SUPER GTでは2人のドライバーが別々に決勝レースを走ることになる。しかも、スタートはスタンディングスタート(通常のSUPER GTでのローリングスタートではなく、グリッドに整列してスタートするF1などで行われている方式)となる。

 さらに、ドライバーを東西に分けての東西戦も行われる。西川氏は「今回は観客も参加できるように、タオルにもなるリストバンドを販売する。勝ったほうのリストバンドを持っている方には記念のメダルを配布したい」と述べ、リストバンドを公開した。また、「土曜日にはトータルで220台にもなる参加全車両を周回させる予定。さらに日曜日にはレースクィーンやエンジニアなども含めて関係者がストレートを行進する予定」と新しいイベントを告知し、さらなる企画を検討していることを明らかにした。

 また、西川氏はJAF GPの期間中となる土曜日の夜はサーキット内に宿泊できることを説明し、「11月なので、気温はかなり低い。(サーキット内に宿泊される方は)暖かくなる装備を用意してきてほしい」と述べ、5月のSUPER GTと同様に富士スピードウェイを楽しめることをアピールした。

会場に飾られたJAF GPの歴史を示すパネル。1968~1976年にはフォーミュラカーによるレースとして開催されていた1977~1986年には鈴鹿と富士のF2レースにそれぞれ1戦ずつ、1980年以降は最終戦にJAF GPの冠がつけられた。最後の1986年の最終戦を制したのは、現NAKAJIMA RACING代表の中嶋悟氏。中嶋氏は翌年F1へステップアップ
1988~1990年にはJSPC(全日本スポーツプロトタイプカー選手権)の1戦に冠されることになった。最後に行われた1990年の富士スピードウェイでのJAF GPを制したのは、現トムス監督の関谷正徳氏と故・小河等氏のミノルタトヨタ90C-Vだった会場ではJAF GPの観戦チケットも販売されていた

3代表が登壇し、JAF GPへの取り組みを語る
 イベントには富士スピードウェイ(FSW)代表取締役社長 加藤裕明氏、日本レースプロモーション(JRP)代表取締役社長 白井裕氏、GTアソシエイション(GTA)代表取締役 坂東正明氏の3人が登壇し、JAF GPへの意気込みを語った。

 FSWの加藤氏は「9月には集中豪雨により周辺道路に大きな被害が出たため、SUPER GTの第7戦を中止せざるを得なくなった。GTAとも話し合って、なんとか開催の方向で考えていたのだが、7本の主要なアクセスルートのうち5本が使えなかったため、無理だと判断した。しかし、その後国や地元自治体などの努力により、1本を除き復旧しており、十分にお客様に来ていただけるまで回復したと判断した」と述べ、JAF GPの開催に向けての復旧が順調に推移したことを解説。

 JRPの白井氏は「JRPとしても、GTAのほうから話もらった時に、その趣旨に共感できる部分が多く、一緒にやることになった。フォーミュラカーの特徴である、走る、曲がる、止まるという車の機能の極限部分を楽しんで欲しい」と述べ、SUPER GTのファンにもフォーミュラレースのおもしろさをアピールしたいと述べた。

 GTAの坂東氏は「自動車メーカーでも、日本のモータースポーツの再評価が進んでいる。日本のモータースポーツファンは世界的に見てもレベルが高く、ぜひ皆さんもモータースポーツを支える1人として自負を持ってほしい。JAF GPはそうしたファンが楽しめるイベントにしたい。JAF GPの冠をつけるにあたっても、やっぱりお役所相手なんですごく大変だったが、最終的にはJAFも協力的になってくれた」といつもの坂東節を繰り返して、来場者の笑いを誘っていた。

富士スピードウェイ 代表取締役社長 加藤裕明氏日本レースプロモーション 代表取締役社長 白井裕氏GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏

午後にはSUPER GTのトークショー
 午後には、第2部としてSUPER GTのドライバーによるトークショーが行われた。登壇したのは午前中に引き続いての登場となったTEAM KUNIMITSU(RAYBRIG HSV-010)の伊沢拓也選手、apr(COROLLA Axio apr GT)の井口卓人選手の2人と、午後からの登場となったNAKAJIMA RACING(EPSON HSV-010)の中山友貴選手、エヴァンゲリオンレーシング(エヴァンゲリオンRT初号機aprカローラ)の松浦孝亮選手、HASEMI MOTOR SPORT(TOMICA Z)の星野一樹選手と柳田真孝選手の4人を加えた6人。

 ほぼ同年代の中堅ドライバー、また若手中心となったため、非常に笑いが絶えないトークショーとなっていた。特にお笑いキャラクターとして知られる松浦選手は、同年代の星野選手や柳田選手にいじられており、柳田選手が松浦選手を押さえている間に、松浦選手が携帯電話に保存しておいた女性用のカツラをかぶった写真を伊沢選手にさらされると、会場は爆笑に包まれた。それに対抗してか、柳田選手は酒癖がわるく、「彼は酔うと僕の服で床掃除するんです」(松浦選手)とばらして、やはり会場は大いに盛り上がった。

 JAF GPに向けては、伊沢選手は「スタンディングスタートは誰もスタート練習をしていない。半クラッチの状態でスタートすることになるけど、その状態でクラッチが持つのか誰にも分からない」と、SUPER GTでは初の試みとなるスタンディングスタートへの不安を語っていた。

午後のトークショーに登壇したSUPER GTのドライバー同年代という気軽さもあってか、激しいやり取りが展開された。左から伊沢拓也選手、柳田真孝選手、星野一樹選手、松浦孝亮選手柳田選手がさらした松浦選手の女性カツラ写真
トークショー終了後にはプレゼントの抽選会も行われた。少年に帽子を渡す中山友貴選手松浦選手が隠し持っていたバナナを渡され、最後に強制的にサルの物まねをさせられた井口選手。井口選手はお猿さんがパーソナルキャラクターであるとのことイベントの最後には即席のサイン会。訪れた人はお目当てのドライバーの元へ駆けつけ、サインをもらっていた

 フオーミュラ・ニッポンは今週末の戦いを残すのみ。SUPER GTは、すでにシーズンが終了している。そのような中、開催される特別戦のJAF GP。フォーミュラ・ニッポンとSUPER GTを併催するという新たな試みだが、これまでのJAF GP同様、日本のモータースポーツ史の記録に残るものになるだろう。チケットはローソンやCNプレイガイドのほか、富士スピードウェイのWebサイトから購入可能となっている。

(笠原一輝)
2010年 11月 5日