カロッツェリア「楽ナビLite AVIC-MRZ99」レビュー【前編】
2DINカーナビの実力派エントリーモデル


楽ナビLite AVIC-MRZ99

カーオーディオが壊れてカーナビ購入を検討
 自分はこれまでカーナビを使わずに過ごしてきた。東京の多摩地区に住んでおり、仕事の都合上毎日通勤で都内まで通っているものの、よく行きそうな都内近隣の場所にはだいたい行きつくしてしまい、カーナビの必要性をそれほど感じなかったこと、また、道の分からない場所に行くにしても、iPhoneのナビゲーションアプリなどで十分用は足せてしてまっていたからだ。

 今回カーナビを買うきっかけになったのは、今まで使っていたカーオーディオが故障してしまい、FMラジオ以外の音が出なくなったからだ。FMラジオは聞けるものの、外部入力経由でのウォークマンやiPhone再生が主な用途だったので、これでは役に立たない。そこで、最初はカーオーディオを買い直そうかと思っていた。

 これまで使っていたのはカロッツェリアの1DINカーオーディオ「DEH-P007」。カーオーディオとしてはミドルモデルとなるが、現在のラインアップでは、DEH-P007のような9バンドグラフィックイコライザー装備のものはなく、5バンドのモデル(DEH-P760)の上がL/R独立16バンドのモデル(DEH-P940)となるなど、適当なモデルが見当たらない。

 そんなことを考えながら、価格.comを見ていたら、カロッツェリアの楽ナビLiteシリーズなら非常に安価で売られているのを見つけたのだ。カーナビはそれほど必要とはしていないが、自車位置を常に表示できるデバイスとして興味がないわけではない。

 ワンセグモデルの「AVIC-MRZ77」なら6万円台後半(2011年2月上旬時点)という価格から販売されている。液晶モニターのサイズが小型な「AVIC-MRZ66」ならさらに数千円安かったが、数千円の差なら上位モデルのMRZ77にしようかと思っていた。

 ただ、今回カーナビ購入にあたり友人と話をしたところ、ワンセグモデルの「AVIC-MRZ77」より、ワンセグも12セグも見られる地デジモデルの「AVIC-MRZ99」を強く進められた。ニュースなどでもよく取り上げられているが、アナログテレビ放送は今年終了し、2011年7月24日からデジタルテレビ放送へ完全移行する。もちろんワンセグであれば見ることができるものの、AVIC-MRZ77もAVIC-MRZ99も7.0型ワイドVGA(800×480ピクセル)とカーナビとしては高解像度のモニターを搭載している。

 また、地デジチューナーを後付けで購入するという方法もあるが、これらの製品はそれなりに高価。しかも、AVIC-MRZ99は4チューナー×4アンテナというトップクラスの受信能力を持っており、どうせ買うならとAVIC-MRZ99にした次第。ちなみに購入時の価格は約9万円ほどだった。

楽ナビLite AVIC-MRZ99。7型ワイドVGA液晶を備えた4×4地デジチューナーを内蔵した楽ナビLiteのトップモデル楽ナビ Lite AVIC-MRZ77。楽ナビLiteのワンセグチューナーモデル。チューナー以外の主な仕様はMRZ99と同じ楽ナビLite AVIC-MRZ66。液晶サイズを6.1型としたモデル。スイッチなどのレイアウトもMRZ99/MRZ77とは異なっている

 今回、カーナビを買ったと友人に言うと、「PND(Portable Navigtion Device)にしたの?」と、よく聞かれる。しかし、オーディオユニットのすげ替えが最大の目的だったので、オーディオ機能のないPNDは最初から考慮しなかった。また、iPhoneや携帯のカーナビアプリは使ったことはあったが、PNDでは一般的に車速信号を使えないため、PNDにするくらいならiPhoneでも十分だと考えた部分もある。カーナビへの依存度は低いので、2DINカーナビとしては安価な「楽ナビLite AVIC-MRZ99」なら、高解像度な液晶モニターにBluetoothや地デジもついていてお得だと考えたのだ。

2DINエントリーモデルとして高機能なAVIC-MRZ99
 カロッツェリアのカーナビラインアップは、ハイエンドモデルのサイバーナビ、HDDモデルの楽ナビ、メモリータイプの楽ナビLite、高機能PNDのエアーナビと4つに分かれている。

 楽ナビLiteのAVIC-MRZ99は、上位モデルの楽ナビと同じLEDバックライトを搭載した800×480ピクセルの7インチワイドVGAと、4チューナー×4アンテナの地デジチューナーを搭載したモデルで、意外と高機能。地図データの記録メディアは、8GBのフラッシュメモリーとなるが、パイオニア独自の圧縮フォーマット「L-format」で24GB相当のデータを収録しており、収録データ件数も楽ナビと同じ数となっている。

 HDDタイプの楽ナビであれば40GB HDDを搭載するため本体のみでミュージックサーバー機能が使えるが、8GBのメモリータイプということでミュージックサーバー機能はSDメモリーカード使用時にのみ利用できるようになっている。ただ、自分の使い方ではウォークマンやiPhoneをつないで音楽再生することが多く、そういった意味ではAVIC-MRZ99でよいのかなと思っている。

 画面解像度は、地図などを表示する上で高いにこしたことはない。また、LEDバックライトを採用した明るい画面も昼間は非常に見やすい。ただし、これまでカーナビに慣れていないせいか夜間は非常に明るく感じ、設定でもっとも暗くしてもまだ明るすぎると感じられる。これはナビ画面の取り付け角度にもよるだろう。

 AVIC-MRZ99の最大のウリは、毎月データ更新が行われるマップチャージ機能にある。毎月のデータ更新のほか、1年に2回、5月と11月に全データが更新される。マップチャージでは、カロッツェリアのWebからダウンロードできる「ナビスタジオ」を使用し、SDメモリーカード経由でデータを転送すればよい。このマップチャージは2014年4月までは無償ででき、それ以降は有償となる。

 と、ここまで見た限りでは上位機種の楽ナビとの違いが見えにくいAVIC-MRZ99だが、楽ナビでは取り付け可能なVICS用ビーコンユニットには非対応だったり、音声認識入力には対応していないなど、機能が省略されたエントリー機ならではの部分もある。

 シリーズごとの機能比較表は、カロッツェリアのWebページに掲載されているので参考にしてほしい。

URL
カロッツェリア商品比較ナビ カーナビゲーション/ナビ機能
http://pioneer.jp/carrozzeria/products/webcomp/navi/


案外楽なアンテナ取り付けと、大変だったヒューズボックスへの配線
 さて、ここからはカーナビの取り付けに入る。これまでカーオーディオの類は自分で取り付けてきたし、今回も取り付けは自分で行うことにした。カーオーディオはカロッツェリア製品をつけていたので、コネクターも共通だろうからそれほど手間ではないだろうと思ったのだ。

 一般的にカーオーディオは、前後左右の4台のスピーカーを接続する上、主電源やアクセサリー電源など多数の配線が必要になる。そこで、大型のコネクターに主要な配線を集約させ、本体の脱着を容易にしてあるのが一般的だ。

 ただし、いざAVIC-MRZ99の箱を開けてコネクターを見てみると、オーディオ用コネクターにはない車速パルスや、バック検出も1つのコネクターに配線されている。そこで、仕方なくすべての配線をやり直すことにした。とはいっても、ケーブルに名前の付いたタグが取り付けられていたので、作業自体は悩むことなく進めることができた。

 車速パルスはクルマのECU(エンジンコントロールユニット)、バック検出はリアのバックランプから配線をするのが一般的だ。そのため、特にバック検出用ケーブルは非常に長いものが付属している。作業を簡単に済ませるために、先人の苦労を参考にさせていただこうと、インターネットを調べていたら、運転席真下にあるヒューズボックスに車速パルスもバック信号も来ていることが分かった。ヒューズボックスであるなら、ナビとの直線距離も30cm程度で非常に短い配線ですむ。

 そこで、運転席の下にもぐりこんでまずそのヒューズボックスを外し、作業しやすい位置まで移動させようとしてみた。しかしながら、ヒューズボックスには大量の配線が取り付けられているため、ボックスを固定しているねじを外してもまったく動かない。結局配線をまとめているタイラップをいくつか切断することで作業可能な場所までヒューズボックスを引き出すことができた。この後、必要な配線にカーナビからのケーブルを結線するのにさらに時間がかかり、今回の取り付け作業でもっとも時間がかかるものとなった。

AVIC-MRZ99の背面。中央に大きなファンが見える。赤いヒューズのついた左下のソケットに、電源などの配線をまとめたコネクターが接続される。右下に4つ並んでいるのが地デジアンテナの端子。GPSの端子は左上に独立して設けられる左下に配線が集中しているのが電源などのコネクター部。車速パルスやバック検出の配線も含まれている配線の接続に活用したヒューズボックス。このヒューズボックスを引き出すのが今回一番時間のかかった作業だった

 電源まわりの配線を終えたところで、GPSと地デジ用のフィルムアンテナをフロントウインドーに貼り付け、配線を行った。ちなみに、AVIC-MRZ99ではGPSアンテナもフィルムアンテナになっており、地デジ用アンテナと一体化している。フィルムアンテナは、窓に貼るアンテナユニットと、それぞれに取り付けるアンプ&ケーブルで構成されており、4組付属する。

 アンテナからの入力を増幅するアンプの取付位置にはやや悩んだが、本体の取り付けからアンテナの取り付けまでを含めて1日ほどで作業は終了した。取り付け作業に慣れている人なら、半日程度で終了する作業量だろう。

添付されていたフィルムアンテナ。中央の白い台紙に貼られているのがGPS兼地デジ用アンテナ貼り付け終わった地デジのフィルムアンテナ。黒い箱状のものがアンプユニットこちらはGPSと地デジの兼用アンテナ。GPSと地デジ用の2種類の配線が見える
各配線の接続確認画面。今回オプションのETCユニットは取り付けていない取り付けを終えた状態。センターコンソールにすっぽりAVIC-MRZ99が収まっている。この収まりのよさが、2DINカーナビのメリット

傾斜型ジャイロも内蔵した自車位置検出
 AVIC-MRZ99は、位置検出にGPSと車速パルス信号のほかに独自の傾斜型ジャイロセンサーと、傾斜型Gセンサーを搭載し、高度なマップマッチングを行っている。ジャイロなどを搭載しているため、トンネルなどGPS電波を受信できない場所でもきちんと自車位置が更新される。据え置き型のカーナビでは当たり前と言える機能だが、今までiPhoneや携帯ナビしか使っていない自分としては、そういった当たり前の機能もうれしい。また、高速道路の進入時には地図上の傾斜情報を利用した3Dマップマッチングも行われる。

一般道での表示一般道での表示モードはノーマルビューのほか俯瞰で表示されるスカイビューも用意されるスカイビュー画面。俯瞰図になり、進行方向が上の「ヘディングアップ」画面となる。スカイビューでは「ノースアップ」には切り替えられない
市街地でのナビゲーション表示。矢印表示(左)と拡大地図表示(右)をメニューで選択できる

 初めて買ったカーナビを早く試してみたくて、装着後すぐに近所をドライブしてみた。昔、友人の車などで見たカーナビでは処理速度のせいか、走行中には最低縮尺、つまり地図をもっとも拡大したまま走行できないものもあったがAVIC-MRZ99では、最低縮尺のままでもナビゲーションが可能だ。ただし、走行速度が速くなってくると表示エリアが狭すぎてあっという間に通り過ぎてしまうが、ゆっくり走って店などを探しているときには、とても便利に使える。

 位置精度に関しては、上空を遮るものがない自宅近くでは問題がない。ただし、GPSの電波をきちんと受信し始める前に走り出してしまうと、ジャイロなどがついているとはいえ位置精度は下がってしまうようだ。エンジン始動後、実測で試してみたところ、起動ロゴ表示後操作ができるようになるまで約18秒程度、そこからすぐに接続確認を表示すると、すでに測位が開始されている場合もあるが、長い場合では2分程度というケースもあった(衛星の位置によるものだろうか?)。

 また、ルートナビゲーションを開始した後、指示どおりに一般道を走らず高速道路に乗ったとき、高速道路だということをしばらく認識してくれない事が1度だけあったものの、学習が進んだ今では、誤認識するということはなくなっている。

 とくに便利だと感じたのは、リルート機能の反応がよいところ。ルートナビゲーション時には、道を間違えても数秒後にリルートされる。携帯ナビではGPSのみで自車位置を検出するためかこうはいかず、ナビアプリがリルートを開始するまで待たなければいけないケースもあった。学習機能やリルート機能など、カーナビ専用機を買ってよかったと思える場面だ。

 カーナビ専用機初心者の自分にとっては、曲がる個所で交差点までの残りの距離がリアルタイムに表示され、曲がらなければいけない交差点に近づいているということが分かるのもありがたい。また、交差点では矢印表示と地図の拡大図が選択できるほか、都内などの大きな交差点では専用の拡大図が用意されており、複雑な交差点でのルートも分かりやすく表示されるようになっている。自車位置がしっかりしていることもあり、普段から便利に使えている。

曲がる個所に近づいていくと矢印の色と残りの距離がリアルタイムに変化して注意を促す最低縮尺である「10m」のままでナビゲーションも可能。行きたい場所を探す場合などに便利
ハイウェイモードの表示。渋滞情報も赤く表示されておりすぐ分かるようになっている首都高 大橋JCT(ジャンクション)の拡大図。実際の路面と同じように道路の色分けまで再現され、非常に分かりやすいセンサー学習画面。学習度に加え、自車の傾斜や加減速などがリアルタイム表示される
ルート検索結果の画面で「他のルート」ボタンを押すと、推奨や有料道路の使用、不使用、最短距離ルートなど、最大6つの異なる条件のルートが検索される

 メニュー画面はよく使う項目は大きなアイコンで示されており、非常に使いやすい。タッチパネルの感度はもっとよくなればよいとも思うが、ストレスなく使えるレベルだ。特にナビゲーション関連のメニューは分かりやすくレイアウトされており、目的の機能がすぐに探し出せる。

 AVIC-MRZ99を装着後、説明書も読まずに使い始めたときでも操作にとまどうことはなく、おおよその機能は画面のアイコンで理解でき、初心者にも非常に優しいと感じられた。もはやナビは贅沢品ではなく、万人に使えるということが重視されているということなのだろう。

 ただ、目的地検索をして残念だったのは、キー配列があいうえお順しか用意されていなかった点だ。自分はパソコンのQWERTY配列に慣れていることもあり、また楽ナビLite自体マップチャージなどでパソコンの使用を考慮しているのだから、QWERTY配列や携帯電話と同様の方式による入力を別途用意してもよかったのではないだろうか。タッチパネルのため、設定で好きな配列に変更できるようにしてほしかったところだ。

「メニュー」ボタンを押すと表示される画面。「通信」「おでかけ」「Lite」「設定」の4つの大きなボタンが並ぶ「おでかけ」メニュー。名称や住所、ジャンル、最近探した場所などのほかに自宅も選択できる「Lite」画面は、「おでかけ」のなかからさらに厳選されたメニューのようだ
「通信」画面。スマートループのほか気象情報や駐車場満車情報も取得できる。電話をかけるのもこの画面からだ目的地検索のソフトウェアキーボード。そろそろQWERTY配列にしてほしいところイルミネーションは、レッド、ブルー、グリーンなど10色から選べるほか、RGBそれぞれを32段階で調整して自分の好きな色を作ることができる
ピュアグリーン。本体下側に並ぶ各ボタンのイルミネーションカラーが変わるオーシャンブルーカスタムカラー設定

 後編では、楽ナビLiteの目玉機能である地図データなどのダウンロードが可能な「マップチャージ」や、プローブサービスを使ってきめ細かな渋滞情報を取得できる「スマートループ」、地デジやiPhone対応のAV再生機能などを紹介していく。

(平 雅彦)
2011年 2月 3日