バンダイナムコゲームス、「EVシェアリング」実験を公開

EVシェアリングに使われる日産「リーフ」

2011年1月29日~2月21日



 バンダイナムコゲームスは1月28日、横浜で行われる電気自動車(EV)カーシェアリングの実証実験を、報道関係者に公開した。

 この実証実験はバンダイナムコゲームスと日本電気(NEC)が1月29日~2月21日に、横浜みなとみらい21地区で実施するもの。日産自動車のEV「リーフ」2台によるカーシェアリングを、一般モニター約250名が体験することになっている。

 なおモニター募集はすでに締め切られているが、キャンセルが発生した場合のみ再度募集される。告知と申し込みは「スマート・ネットワークプロジェクト」のWebサイトから。

EVシェアリング体験の拠点

借りるEVの状態を知っておく
 この実験の目的は、カーシェアリングで提供されているEVの状態などを、ユーザーがパソコンや携帯情報端末で見られるようにする際、ユーザーに対してどのような情報をどのように提供すればいいのかを探ること。

 モニターは神奈川県横浜市の横浜駅付近(ポートサイド地区)の拠点に行き、カーシェアリングサービスについてのブリーフィングを受け、パソコンでカーシェアリングの予約をし、リーフで往復6kmほどの短いドライブに出かける。ドライブした先のみなとみらい地区では、急速充電器による充電を体験、拠点に戻ってから簡単なアンケートに答える、というのが流れ。

 EVシェアリングのサービスにおいては、予約したEVの充電状態がどうなっているかが非常に重要になる。“満タン”でクルマを返すのが前提のレンタカーと異なり、カーシェアリングはその必要がない。ガソリンが足りなければ借りた人が入れることになるが、その際のガソリン代はカーシェアリングの料金に含まれている。

拠点でブリーフィングを受けてから、リーフでドライブするドライブコースは横浜駅近くのポートサイド地区から、みなとみらい地区の日産本社近くを回って帰ってくる

 EVは今のところ電気代を取られないが、ガソリン車と同じように満充電で返す必要はない。カーシェアリング拠点に帰ってくれば、待機時に普通充電器か急速充電器で充電されるようになると思われるが、拠点に充電設備がないかもしれないし、充電設備があっても稼働時間が長ければ満充電にはなっていない時間のほうが長くなるだろう。そうなったらシェアリング中にどこかで急速充電することになるが、EVの充電は、急速充電器を使っても、ガソリン車に給油するより時間がかかる。

 たとえば往復20kmほど走行するつもりだったのに、EVを借りてみたら10km分の電力しか残っていなかった、なんてことがあるかもしれない。

 そんなとき、クルマを予約する際に借りたいEVの充電状態が分かれば、もっと電力が残っている車両に変えることができる。あるいは、ルート上のどこに急速充電器があるか分かれば、行動スケジュールに充電時間を組み込んで計画を立てることもできる。ITの力を借りれば、ガソリン車よりもこうした情報を得やすいのがEVの強みというわけだ。

 実験で使われる予約画面は、カーシェアリング拠点の2台のEVの予約状況のほかに、それぞれの充電量と航続距離が表示される。航続距離は数字で表示されるだけでなく、地図上に到達可能な範囲が図示され、目的地に到達できるかどうかが一目で分かるようになっている。地図には急速充電器の位置も表示されるから、さらに計画を立てやすい。

日産本社の向かいにある「観環居」は、スマート・ネットワークプロジェクトの実験拠点。モニターはここにある急速充電器で急速充電を体験する

通信技術をCO2削減に活かす
 この実験は「スマート・ネットワークプロジェクト」の1部門として行われるもの。スマート・ネットワークプロジェクトとは、平成21年度第2次補正予算「ネットワーク統合制御システム標準化等推進事業」という厳しい名前の事業の1つで、大雑把に言えば「社会のエネルギーの流れをITで管理して、効率よく使ってCO2排出量を減らしましょう」というのがその目的。

 IT、ITと気安く使ってしまっているが、IT(情報技術)に欠かせないのが通信。発電所やビル、個人宅、乗り物など、エネルギーを使うものすべてが通信しあって、エネルギーを融通し合って、全体のエネルギー消費を減らしましょう、というのがそのキモだ。

 その通信の際、それぞれが違う通信方法を採用していたとしたら、そもそも通信ができない。だから、その通信方法を揃えましょう、そのための通信規格を決めましょう、じゃあどんな通信規格がよいだろう? というのがスマート・ネットワークプロジェクトだ。

 このプロジェクトはNTTドコモ、NEC、積水ハウス、バンダイナムコゲームスの4社が幹事を務め、日産自動車なども参加している。よい通信規格を作れば、CO2排出量を減らせるはずだし、その規格が世界標準にでもなれば、それを活かして日本のモノづくり産業に利益をもたらすこともあるだろう、という思惑もあるはずだ。

 バンダイナムコゲームスが担当するのは、EVのエネルギーを可視化する仕組み「EVサポートネットワーク」だ。

EVサポートネットワークの実験イメージ。バンダイナムコゲームスはこの図で言うと、カーシェアリングA社とB社、走行情報提供サーバーつなげて情報を交換する仕組みを担当する

シェアリング以外にも応用?
 現在、市販されているEVはごく少ないし、ITで自らの状態をモニターさせる仕組みを持っているのはリーフだけだ。が、参入するEVメーカーと、EVシェアリングを提供する業者が増えたとき、通信規格がなければ、カーシェアリングサービスの自由度が減り、利用者には使いにくいものになる。A車を使いたいけど自分が登録しているサービスは対応していない、なんてことになれば、EVのシェアリングを使う人が減り、CO2排出量は減らない。

 バンダイナムコゲームスは、どのメーカーのEVでも、どのサービスでも、ユーザーは同じように充電状態などを取得できるようにする仕組みを作り、標準規格として提案しようとしているわけだ。

 しかし、どうやらバンダイナムコゲームスは、EVシェアリングだけで事を済ますつもりはないようだ。ドライブ終了後のアンケートでは「もし自分が持っているEVだったら、どんなことをリモートコントロールできるといいと思うか?」といった質問があった。

 パソコンや携帯電話でEVの状態を確認したり、乗る前にエアコンをかけて車内を快適にしておけたりできたほうが便利で、EVの有効活用につながるのは、シェアされているクルマでも自分だけのクルマでも同じことだろう。

(編集部:田中真一郎)
2011年 2月 1日