「フォルクスワーゲン ポロTSI」長期レビュー
第7回:不具合のまとめ


5000kmを超えて順調に動いているポロ

 少し遅くなってしまったが、2011年に入った。ポロもうちにきて半年を経過、走行距離も5000kmを超えていよいよ脂が乗ってきたところだろうか。具体的な変化は、サスペンションが新車時よりは角が取れ滑らかに動いている印象となり、エンジンのフリクションが取れた感じがして、以前よりあまり踏まずに走るようになった感じがすることだ。

 その他の変化はあまりなく、タイヤにしても純正装着のコンチネンタルのプレミアムコンタクト2は全く減った様子もなく接地面の荒れもない。残念なところはボディーの塗装は良好で艶があるが、飛び石で塗装の欠けができてしまったことだ。

新年もポロは順調新年はお飾りをフロントグリルに……付ける人は減った夜見れば、さらに深いツヤを感じられる
タイヤも減った様子はなし。ショルダーの荒れもなしボンネットに飛び石なのか塗装割れができてしまったエンジンルーム内もまだきれいだ

 

燃料が減るとスピードメーター内に警告灯が点灯、走行可能距離数が数字で表示される。残り数リッターでも残量メーターはゼロになってない

年末年始の所用で走行距離は伸び、燃費も良好
 年末年始は、親戚まわりなどで思いのほか走行距離が延びた。高速道路の走行が多く、燃費もよくなった。喜んでいいのかわるいのか、高速道路は年末年始特有の走行速度や混雑などで平均速度が80km/hほどだったこともあり、さらに燃費の悪化が防げたという印象だ。

給油日走行距離(km)給油量(L)燃費(km/L)
2010/12/1519114.1813.47
2010/12/3127620.4213.52
2011/1/1064741.5615.57

 特に年明けからの燃費がよくなっている。走行ルートや時間帯をうまく調整したことにより、渋滞にほとんど巻き込まれなかったことも、改善に繋がっているだろう。1月10日の給油の際は、ガス欠直前まで走り、軽い状態で走行できたことも幸いしているのだろう。

 ガソリンの残量警告には、少し注意が必要だ。ポロの燃料計表示は比較的リニアな表示で、ゼロになったら本当にゼロ。残量警告は走行可能距離が50~60kmのところで点灯し、メーター中央のディスプレイが自動で切り替わり、走行可能距離が数値で表示される。

 さらにしばらく走行して、残り30kmを示した段階でも残量計は残りを示しており、他のクルマの感覚からすれば、もう少し走れるのでは?と思ってしまう。しかし、給油したところ41.56L入ったので説明書に記載のタンク容量から計算する残量は3.44Lしか残っていないことになる。

 タンクや途中のホースも含めた正確なガソリン積載量は分からないが、残量計の目盛の感覚を他のクルマと同様と思って走っていたら、ガス欠になりかねない。燃料少なめで燃費走行をしようと思ったら、細かな燃料管理が必要だ。

寒い時期はやはり燃費が悪化
 1月はじめは全国的に冷え込んでいるが、幸いにして東京は雪は積もらず、都心部では氷点下になることもほとんどない。しかし、あまりに寒いと燃費にも若干影響してくるようだ。

 特に0度近くまで冷え込んだ朝は、燃費が落ち込む。エンジンをかけてすぐ出発した状態では、寒い日は完全に暖まるまで10~15分くらいは走らなければならい。近所への走行では暖まりきらないため、区間燃費で10km/Lを大きく切ったままとなる。

 エンジンが温まったとしても、気温が0度近い状態では60km定地走行では20km/Lを超えるか超えないかという程度。もう少し寒い地域では、燃費の低下が顕著になるかもしれない。

 一方で、日中になって気温が10度近くまで上がってくると、たちまち燃費は改善してくる。60km定地走行では25km/L以上を記録し、加速時の燃費もあまり悪化がなく、市街地走行でもトータルで16~18km/Lが出せるほど。そして夜になって気温が下がってくると、また燃費が落ちるという具合である。

 寒くなってくると気になるのは暖房の効き具合だが、気温が0度近い状態からエンジンをかけてすぐ出発した場合は、低速で走っていると、5分経過くらいから暖かい風が出てくる。走行状態にもよるが、燃費が良好になってくる10~15分くらいには、温風は十分すぎるほど熱くなってくる。

 ガソリン消費の少ないエンジンだけに、冬場の暖房能力が心配だったのだが、問題はなさそうだ。細かい点では、コンパクトカーゆえか、リアシートへの暖房の吹き出しが無く、後席の足下の暖かさがフロントシートと異なること。とはいえ、リアが寒くて過ごせないというほどではない。

 なお、気温が4度以下になると、「ポーン」という警告音がしてメーターパネル中央のマルチファンクションインジケーターが外気温表示に自動で切り替わる。1度切り替わったあとに手動で燃費計などにしてしまうと、手動で外気温度表示に戻さない限り、外気温は表示されない。

外気温度が4度以下になると、霜マークと外気温が表示されるまだマイナス表示は見たことがないが、0度近くなったら凍結などに要注意だ

無理して粗探し
 フォルクスワーゲン・ポロと言えば、誰からも高評価で悪口が聞かれないほど。オーナーとしてはうれしい限りではあるが、半年も乗ってくると高評価にも慣れて、短所も目についてくる。ここで無理にでも粗探しなどをしておきたい。

やはり1.2リッター
 十分なパワーと評価されることの多い1.2リッターTSIエンジン。ダウンサイジングでアイドリング時に無駄な燃料を使わない効果があるとされるが、それは発進時のトルク感が無いということでもある。

 停止からの発進では、7速DSGの1速~2速の変速が秀逸で全く非力な印象を受けないが、交差点などで減速~加速という場面で、うまくシフトダウンがされなければ、加速が鈍ることがある。シフトダウンされないまま1000回転くらいから加速させると最初は非力で、ターボ領域に入ったところでトルクが上がる挙動を見せる。筆者はこのトルクの上下を楽しんでしまう部類だが、人によっては加速感がないと感じることもあるだろう。

オーバーハングが長い
 これは設計上の問題だが、前輪からバンパーの先までが長い。そのため、バンパーの下を擦りやすく、空力対策の出っ張りもあって余計に擦りやすくなっている。以前にも近所のスーパーの立体駐車場の出口で、フロントバンパーの下の空力の出っ張りを擦ると書いたが、その後も数回擦ってしまった。段差のスロープの角度が付いた場所などは特に注意が必要だ。

 フロントのショックアブソーバーが、5000kmを過ぎて堅さが取れてきたから、注意を重ねていかないと、今後も擦る可能性が高い。もし、ポロの車高を落とそうと考えている人がいれば、注意してほしい。

エンジンルームのカタカタ音
 10月くらいから発生しているが、アイドリングが低回転のとき、エンジンルーム内からカタカタと何かが当たる大きな音が発生するようになった。ネット内の情報を調べたところ、ホースが下がってしまって当たっているらしいとのことだ。

 ディーラーに相談したところでは、2月初め現在でもインポーターからの正式な対策はまだ出ておらず、ホース周囲の詰め物で対処しているとのこと。ディーラーのメカニックの工夫で対策してもらって、改善の兆しを見せたものの、たまに音が発生することがあり、根本的な対策に至っていない。信号待ちなどで発生する異音なので耳障り。早期の根本的な対策をしてほしいところだ。

DSGとエンジンの信頼性
 走って楽しく燃費も良好な、デュアルクラッチトランスミッションの7速DSGとTSIエンジンだが、エンジンストール問題がうちでも発生した。2010年8月の段階で改善されていたはずだが、つい最近、緩い下り坂の赤信号に向けて惰性で走行して停車した際、勝手にエンジンが止まっていたことがある。

 その後、同じような状況を再現してみたが、エンジンストールは発生していない。念のためディーラーでチェックをお願いしたが、非常にまれなケースで原因がよくわからないとのこと。DSGのプログラム改修ということで様子を見ることになった。

 予期せずエンジンが止まると焦る。AT車ゆえにエンジンの再始動はNレンジにしてセルを回す必要があることと、キーがONポジションから1度セルを回すと、OFFに戻さないと回らないようになっているため、慌てるとなかなかエンジンがかからない。たった1度のことではあるが、できれば完ぺきになって欲しいところだ。

メーター画面表示
 ある朝、エンジンをかけたところ、マルチファンクションインジケーターが真っ黒という事態が発生した。コラムレバーの表示切替ボタンを押しても何も起こらないので、エンジンを再始動したところ、今度は燃料計がゼロを示した。

 もう1度エンジン再始動したところ正常にもどったが、これはコンピューターの不具合だろうか。トリップメーターは問題なかったが、燃費や走行距離・時間などの累積側がリセットされてしまった。大きな問題ではないのかもしれないが、これ以降、表示の正確さに疑いを持つようになってしまった。

カタカタ音がするパイプ部分。対策として緩衝材が巻かれ、ホースの下のほうにはクリーム色のスポンジが詰めてあるDSGの制御は秀逸だが、減速~加速の変化は苦手のようだ通常は中央に燃費計などが表示され、ガソリン残量も白いバーグラフで表示されるが、不具合時はどちらかの表示がなくなった

ボディーのきしみ音
 歩道をまたいで店舗の駐車場に入るような斜めにゆっくり段差を超えるとき、ボディーからきしみ音がすることがある。全く変形しないボディーというのもあり得ないが、現代のクルマ、しかも新車状態できしみ音がする。

 恐らく、ドア回りのゴムパッキンにシリコンスプレーを塗布すれば改善するだろうと思うが、ポロはやっぱりベーシックカーであることを再認識してしまった。

給油口のキャップやラジオのアンテナがちょっと不便

 そのほか、重箱の隅をつつくような粗探しをすれば、給油口のキャップ押えが不十分で、給油中にキャップが落ちてボディに傷がつきかねないことや、最近は折りたためるアンテナが多い中で、固定式アンテナは機械式駐車場に入るたびに外さないといけないことなどもある。

 いくら高評価とはいえ、やはり欧州のベーシックカー。過剰な期待は持たないほうがよいということだろう。

ボディのきしみ音はリアドアのゴムパッキンのあたりから聞こえるようだ
給油口のキャップはフタに引っ掛けるようになっているが、あまり引っかかりがよくないアンテナは短めなのだが、機械式駐車場では手で回して外す必要がある

アウディA1と比較
 ポロに強力なライバルが出現した。同じフォルクスワーゲングループ内のアウディA1だ。実際、ボディーやメカニズムの基本は同じで、ポロのコンパクトさが気に入ったが、もう少し高級なクルマに乗りたいというなら、アウディA1というのもありだろう。実車に触れる機会があったので、ポロと比較をしてみたい。

 まず、A1は3ドアであり、定員が4名であること。これだけで選択肢から外れてしまう人が多いと思うが、筆者もそうである。実用性も求めたい人からすれば、5ドアのポロに軍配が上がるのはやむを得ない。

 メカニズム面では、A1は1.4リッターとワンランク上のエンジンなのだが、ボディーの違いやキャラクター設定もあるのか、ポロの1.2リッターのほうが軽快で筆者好み。ただ、A1に装備されたアイドリングストップ機構はポロにも絶対欲しい装備。実際、信号待ちで平均燃費が下がっていくことがなくなるので、無駄なく走れるA1のほうが安心して運転できる。

 乗り心地の面では、A1はしっとりとした味付けをしようとした印象は受けるが、試乗したA1は17インチホイールを履いていたので、15インチホイールのポロよりも足回りのドタバタ感を感じることもあり、全体ではどちらが上という印象はなく一長一短だ。

 インテリアでは、言うまでもなくA1のほうが全体的に高級。ポロでもハイラインであれば、革巻きのステアリングなどA1に匹敵する点もあるが、やはりA1にはかなわない。

 総合的に見れば、A1の高級感は認められるが、実用性を重視したポロとはキャラクターが大きく異なる。スペシャリティーを求めるならA1という選択肢はあるが、ドア数や定員という点にこだわれば比較対象ではない。よく比較される「A3スポーツバック vs ゴルフ」という関係とは異なっていると思う。

アウディA117インチホイールはちょっと乗り心地が悪い
A1のメーターはポロよりも上等で、中央は液晶ディスプレイもドットマトリクス表示で情報表示能力が高い。水温計があるのも筆者的にはグッド内装の高級感は小さいクルマでもさすがアウディ

(正田拓也)
2011年 2月 14日