自工会、計画停電を回避するための「輪番休日」案を発表
完成車には放射線測定を開始

自工会会長 志賀俊之氏

2011年4月26日開催



 自工会(日本自動車工業会)は4月26日、4月度の定例会長記者会見を開き、自工会会長 志賀俊之氏が今夏に予想される計画停電(輪番停電)を回避する取り組みや、福島原発事故に伴う放射線量計測について発表したほか、年末に開催される「第42回東京モーターショー2011」の概要を紹介した。

 はじめに、自動車業界全体の東日本大震災による被災状況について触れ、「前回の定例記者会見を3月17日に行った時は、自動車工業会に所属する12メーカーのうち、ほぼすべての工場の稼働が停止していた。この時点では生産設備の被害状況、電力等のインフラの状況、部品サプライヤーの被災状況から操業再開の時期を想定するのは難しいと申し上げた。しかしながら4月18日に、すべての工場で操業を開始した。依然フル操業に至っていないものの、当初想定された期間よりも大幅に前倒しできたと考えている」と述べるとともに、「(大幅に前倒しできたことについて)日本のもの作り力、復興力の強さをあらわすものだと誇りに感じている」と、関係者に対する感謝の意を述べた。

輪番休日による電力需要平準化のコンセプト。

平日に休みをとる「輪番休日」案
 次に、今夏の計画停電を回避する取り組みとして「輪番休日」(7~9月に設定)について紹介した。政府は現在、節電計画として大口需要家に対して使用電力を昨夏のピーク時と比べ25%程度、小口需要家に対して20%程度、さらに各家庭に15~20%程度の節電目標を設定しているが、まずは計画停電を回避するため各メーカーに個別で最大限の節電努力を促すとともに、輪番休日を設ける。

 現時点で東京電力は火力発電、水力発電などの増強で5000万kWの電力を確保できるとしているが、家庭用電力約2000万kW、業務用電力約2000万kW、産業用電力約2000万kWの計6000万kWのピーク電力が見込まれており、自工会ではおよそ1000万kWの電力不足を予想している。そこで、休日が土日に集中することで発生している平日・休日の需要ギャップを平準化するため、産業用電力の削減を目的に土日の休みを平日に移行する輪番休日を設定する。これにより、稼働時間を短縮せずに平日の使用電力のピーク需要を抑制させることが可能になる。

 この輪番休日案について、志賀会長は自動車業界のみならず機械産業、電気業界といった他の産業界にも同案のメリットを説明しているとし、「他産業を含めた抑制策の全体的な枠組みが早急に設定されることを望んでいる」と述べた。

 また、輪番休日案とともに家庭での節電も重要であるとし、国民全員で節電に取り組むことを望んでいると志賀会長は言う。日産自動車では各社員の家庭での節電を推進する取り組み、例えば待機電力の削減や、エアコン温度の設定を上げること、LED電球への交換といった啓蒙活動を進めており、こうした活動に積極的に参加できるようなプログラムを検討していると言う。また、志賀会長のアイデア案として、営業時間を電力の使用量が比較的少ない朝と夜にすることや、残業時に作業ができる「残業フロア」を用意して、他のフロアのエアコンや電気を止めるといった施策を検討していることを紹介した。

福島第一原子力発電所の事故に伴い、完成車に対して放射線量測定を開始した

国内外の完成車に放射線測定を開始
 一方、東日本大震災により発生した東京電力 福島第一原子力発電所事故に伴い、諸外国で日本製自動車への放射線物質の影響に対する不安の声が寄せられていることについて説明した。

 すでに自動車工業会として、現在生産されている完成車が人体に影響を及ぼす問題がないことを発表しているが、その方策として国内外の完成車に対して車両の放射線測定を開始した。これまでに測定した車両表面の放射線量は、原子力安全委員会が「健康に影響を及ぼさない」と評価している数値の範囲内であることから、「国内外のお客様に日本製自動車を安心してお乗りいただけるものと確信している」と志賀会長は説明する。

第42回東京モーターショー2011には世界11カ国・1地域から175の出展者が参加。前回より出展者数は36%増、展示面積は60%増となる

今年の東京モーターショーは欧州メーカーが復帰
 最後に、2011年末に行われる「第42回東京モーターショー2011」について紹介した。今回の東京モーターショーは有明・お台場地区の東京ビッグサイト(東京都江東区有明)で12月2日~12月11日(プレスデー:11月30日、12月1日、特別招待日:12月2日)の会期で行われる。

 詳細は関連記事に詳しいが、今回の東京モーターショーは米メーカーの出展は見送られたものの、アウディ、BMW、ダイムラー(メルセデス・ベンツ)、ポルシェ、フォルクスワーゲン、ジャガー、ランドローバー、レンジローバーなど欧州メーカーが復帰し、前回の東京モーターショーより出展者数は36%増、展示面積は60%増となる。

(編集部:小林 隆)
2011年 4月 26日