「ストラトス・ゼロ」はじめ、ベルトーネのコンセプトカー6台がオークションに
予想を下回る落札額に

ストラトス・ゼロ

2011年5月21日(現地時間)



コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ

 さる5月21日(現地時間)、イタリアで非常に注目すべきクラシックカー・オークションが開催された。

 現在、世界で最も格式が高いと言われている自動車コンクール・デレガンス「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」は、毎年春に北イタリア・コモ湖畔チェルノッビオの街にある超高級リゾートホテル「ヴィラ・デステ」にて開催されるのだが、今年は初の試みとしてRMオークションによるクラシックカーの大規模オークションを併催。そしてその最大のトピックとして、来年で創業100周年を迎える名門カロッツェリア「ベルトーネ」の歴史を飾ってきた有名なコンセプトカー6台が、一堂にオークションに出品されることになったのだ。

スーパーカーブーム世代には懐かしい出品車たち
 ベルトーネが長らく自社のミュージアム内で所蔵していたコンセプトカー・コレクションは、2008年に旧カロッツェリア・ベルトーネの破産手続きが開始されて以降、今日までトリノ破産裁判所の管理下に置かれていると言う。

 その一方で、実の娘との骨肉の争いを経て2009年にベルトーネの商標を再取得し、新たに「スティーレ・ベルトーネ」(Stile Bertone)を率いることなった故ヌッチオ・ベルトーネ氏の未亡人、リッリ・ベルトーネ会長は、2012年の創業100周年を契機に、コレクションを裁判所から買い戻すことを決めていたとされている。

 ところがベルトーネ側の提示価格が、裁判所側のそれと折り合わなかったことから、ベルトーネはコレクションの一括買い戻しを断念。一部の売却を認めることになった。そしてこの決定を受けた裁判所は、ベルトーネ側が取得を断念した6台の売却をオークションハウス「RMオークション」に委託。今回のヴィラ・デステ・オークションに出品されるに至ったのである。

 コンコルソ・ヴィラ・デステの一般公開日に当たるこの日、ヴィラ・デステに隣接する、同じく古城を改造した見本市会場である「ヴィラ・エルバ」には、コンクール出品車と並んで、RMオークションに出品される珠玉のクラシックカーたちも揃い踏みとなった。その中でも6台のコンセプトカーたちは、いずれもベルトーネ、ひいては世界の自動車デザイン史上でも極めて重要なモデルばかり。これまでにも、日本を含むあらゆる国のメディアにもたびたび登場してきた作品たちである。

 まずは1963年に製作されたシボレー「コルヴェア・テストゥード」。1967年に製作されたランボルギーニ「マルツァル」は、のちに市販された「エスパーダ」の起源となった。ラリーカーとして大活躍したランチア「HFストラトス」のモチーフとして、今なお世界的に知られる、1970年のランチア「ストラトス・ゼロ」。1974年に「ウラッコ」をベースに製作されたランボルギーニ「ブラーヴォ」。1978年に、量産型ストラトスをベースに製作されたランチア「シビーロ」。そして同じくウラッコをベースに1980年に製作されたランボルギーニ「アトン」など、特にスーパーカーブーム世代には懐かしいモデルが並ぶことになった。

シボレー「コルヴェア・テストゥード」ランボルギーニ「マルツァル」

カロッツェリア受難の時代
 この種の高級オークションでは「エスティメート」と呼ばれる予想落札価格が設定されるのが常だが、今回もコルヴェア・テストゥードが50~80万ユーロ(邦貨換算で約6000~9600万円)、そして歴史的価値の高いマルツァルおよびストラトス・ゼロは100~180万ユーロ(約1億2000万~2億1600万円)まで高騰するだろうと予想とされていた。

 ところが実際にオークションが行われてみると、マルツァルは予想通りの151万2000ユーロ(約1億8100万円)で落札されたものの、ストラトス・ゼロは76万1600ユーロ(約9140万円)と、その世界的知名度と歴史的価値からすれば予想外に低い価格で落札されることになった。

 一方ブラーヴォが58万8000ユーロ(約7050万円)で落札されたのに対して、同じランボルギーニ・ベースのアトンが347200ユーロ(約4170万円)、テストゥードが33万6000ユーロ(約4030万円)、シビーロは95200ユーロ(約1140万円)に終わったのは、車両の知名度や人気、あるいは個体コンディションなど、様々な要素が反映された結果と言えるだろう。

 また、通常のオークションでは出品側が最低落札価格を設定し、それに達さない場合には競売が流れることも多いのだが、今回は裁判所の管理物件ということで確実に落札されることを優先したものとも考えられる。

 旧カロッツェリア・ベルトーネの生産部門と、これまで数多くの珠玉のクルマたちを生み出してきたグルリアスコ工場は既にフィアット・グループに譲渡。つい先日には、「マセラティ次期モデルがフィアット・グループのグルリアスコ工場で生産されることが決定した。」というニュースが世界中に配信されたばかりの昨今。今回のオークション出品には、一抹の寂しさを感じてしまうのはやむを得ないところである。

 これは、かつて栄華を極めたイタリアのカロッツェリアにとって受難の時期とも言われる現代の状況を、如実に表すニュースだったのである。

(武田公実)
2011年 5月 24日