フリースケール、1チップのパワーウィンドウ用マイコン「S12VR64」
1チップにマイコンとアナログデバイスを集積

S12VR64のブロック図

2011年6月22日発表



 フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンは6月22日、車載用デバイス「S12 MagniV(マグニビィ)」ファミリーと、ファミリー初のシングルチップ・デバイスとして「S12VR64」を発表した。

 この新製品は、現在米国で開催中の同社の開発者向けイベント「フリースケール・テクノロジー・フォーラム アメリカ」で発表されたもの。これを受けて、都内で報道関係者向けに説明会が開かれた。

 S12 MagniVファミリーは、「ミックスドシグナル・マイクロコントローラ」と呼ばれる製品で、同社の16bitマイコン「S12」と、電圧レギュレータやドライバ、温度センサなどの周辺デバイスを1つにまとめたもの。

 従来は同様の機能を実現するために、マイコンと各種のチップや電源を基板に載せていたが、S12 MagniVのようなワンチップソリューションにより、多くの外部コンポーネントが不要になり、設計を簡素化できると同時に、開発コストを下げることができる。また1つのチップで複数すの機能が実現されているため、省スペース、省電力にもなる。

 また、すでに実績のあるS12をベースとすることで、S12のソフトウェアや開発環境を再利用でき、これもコストダウンに繋がる。

 S12 MagniVには、S12とアナログICを1つのパッケージにまとめた「SiP」(システム・イン・パッケージ)と、S12とアナログ回路を1つのチップにのせた「シングルダイ」の2つが用意される。SiPは高電流を求められるシステム向け、シングルダイは電流への要求が高くなく、コストを優先したいシステム向けとされる。

 S12 MagniVファミリーのシングルダイ製品第1弾は「S12VR64」。挟みこみ防止機能付きパワーウィンドウ向けの製品となっている。S12 CPUは25MHzで、512BのEEPROM、48KBまたは64KBのフラッシュメモリ、2KBのRAMを搭載。このほかに12Vの電圧レギュレーター、ブラッシュドDCモーター用ドライバー、LEDやスイッチ用のドライバー、高電圧入力、LIN(Local Interconnect Network:車載ネットワーク)物理層インターフェイスなどを搭載する。

 同時にテストや試作のための評価ボード「S12VR64EVB」と、コンパイラなどのソフトウェアも用意する。

 今後は、シングルダイのDCモータードライバー、インストゥルメントパネル、多目的LINスレーブ、LEDドライバー、空調フラッパードライバーのリリースが予定されている。

「S12 MagniV」の特徴従来必要だった外部コンポーネントを1パッケージに集積することで、システムを簡素化し、コストを低減する
S12 MagniVにはSiPとシングルダイがある今後はモーターやLEDのドライバーをリリースする

 

林事業本部長

 説明会でフリースケール・セミコンダクタ・ジャパン 車載事業本部の林章 事業本部長は、S12 MagniVリリースの背景を説明した。

 世界の自動車生産台数は2009年の落ち込みから回復し、中国を主とするアジア市場を中心に全体的に伸び、2020年には1億台に達すると予測。そのなかで日本メーカーは3割程度のシェアを確保し、安定的に成長すると見ており、日本における車載事業の重要性が増大するとした。

 こうした状況のなか、市場は自動車に軽量化、省エネ、開発コストの低減を求めている。S12 MagniVはこれらを実現するために、1チップに機能を集積した。

世界の自動車生産台数の推移軽量化、省エネ、開発コストの低減が求められている

(編集部:田中真一郎)
2011年 6月 22日