SUPER GT第5戦鈴鹿「ポッカGTサーマースペシャル」今週末開催
シリーズ最長レース。松田選手と山本選手に意気込みを聞く


2010年ポッカGTサーマースペシャルのスタートシーン

 2011 AUTOBACS SUPER GT 第5戦「第40回 インターナショナル ポッカ GT サマースペシャル」が今週末(8月20日、21日)に鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で開催される。日曜日に行われる決勝レースはSUPER GTシリーズで最長となる500kmと、通常の倍の距離で争われる。全8戦で争われるSUPER GTシリーズの第5戦で後半の戦いを占う上でも重要な1戦となる。

 イベントも盛り沢山で、F1ドライバー小林可夢偉選手が鈴鹿に登場しファンサービスを行う予定だ。サーキットは1度訪れると病み付きになる人も少なくない。SUPER GTはモータースポーツファンだけでなく、ファミリーでも楽しめる企画が豊富なので、モータースポーツの聖地、鈴鹿サーキットで4輪レースの夏の祭典を是非観戦いただきたい。

 ポッカ GT サマースペシャル開催にあたり、GT500クラスで活躍するカルソニック IMPUL GT-Rに乗る松田次生選手と、RAYBRIG HSV-010に乗る山本尚貴がポッカ GT サマースペシャルとシリーズとシリーズ後半戦への意気込みを語ってくれたのであわせて紹介しよう。

 モータースポーツの夏の祭典と言えば、2輪は鈴鹿8時間耐久ロードレース(通称:8耐)、4輪はポッカ GT サマースペシャルだ。どちらも夏休み期間に開催される国内モータースポーツのビッグイベント。

 モータースポーツの聖地、鈴鹿サーキットはほかのサーキットと異なり市街地にあり、日本で最もアクセスのよいサーキットになる。車がなくても手軽に行ける唯一のサーキットと言えるだろう。SUPER GTの走行は土曜日は9時55分から公式練習が始まり、ノックアウト方式の予選が3セッション。夏のイベントとして、18時半からは入場無料の前夜祭が開催され、F1ドライバー小林可夢偉選手が登場する予定だ。

 日曜の決勝は15時10分にスタートが切られ、夕方18時頃まで熱い戦いが行われる。例年は残暑厳しい中で行われるポッカ GT サマースペシャルだが、直前の天気予報では最高気温は30度以下とやや涼しく、ファミリーでの観戦はずいぶん楽になりそうだ。

 レースの見所も豊富だ。GT500クラスは開幕戦で23号車 MOTUL AUTECH GT-R、続く岡山は12号車 カルソニック IMPUL GT-R、セパンは1号車 ウイダー HSV-010、先日行われたSUGOでは46号車 S Road MOLA GT-Rが優勝し、すべて異なるチームが勝っている。ポイントランキングは46号車 S Road MOLA GT-Rが頭一つリードしたが、残り4戦あるので余談を許さない状況だ。

 GT500クラスはここに来てタイヤ戦争にも大きな変化が見られた。圧倒的に強かったブリヂストンタイヤに対しミシュランタイヤ、ヨコハマタイヤ、ダンロップタイヤが一気に攻勢をかけてきた。先日行われたSUGOの決勝ではミシュランが1位、2位、ダンロップが3位、ヨコハマが4位。例年より涼しい今回の鈴鹿はタイヤ選択によりドラマが起こるかもしれない様相だ。

 GT300クラスも33号車 HANKOOK PORSCHE、66号車 triple a Vantage GT2、4号車 初音ミク グッドスマイル BMW14号車 SG CHANGI IS350がそれぞれ優勝しており、シリーズチャンピオン争いはまだまだ先が見えない。またGT300クラスはアニメ系キャラクターをデザインしたマシンが増え、人気を集めている。今回のポッカ GT サマースペシャルにもエヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電、エヴァンゲリオンRT弐号機DIRECTION、初音ミク グッドスマイル BMW、PACIFIC NAC イカ娘 フェラーリ、ハルヒレーシングHANKOOKポルシェが参戦するのでそのカラーリングにも注目したい。

 カラーリングを近くでじっくり見たい方は各イベント情報に注目だ。サーキットを疾走するマシンは安全面の配慮もありスタンドからの観戦となるが、ピットでマシンを間近で見たい方はオープンピット、ピットウォーク、キッズウォークに参加してほしい。

 SUPER GTではピットウォーク、キッズウォークといった多くのイベントが開催される。今回のポッカ GT サマースペシャルで注目のイベントはF1ドライバー小林可夢偉選手の来場だ。「小林可夢偉プレミアムトーク」「可夢偉 Challenge to the World in 2011」「コチラレーシングプレゼンツ COME! COME! 可夢偉キッズミーティング in サマースペシャル」が開催されるので可夢偉ファンの方は見逃せないだろう。

 ポッカ GT サマースペシャルならではのイベントと言えるのは、夏の鈴鹿名物の花火だ。決勝レースが終了するとグランドスタンド前のゲートがオープンし、メインストレートが開放される。表彰式を間近で見た後のお楽しみは、2日間のレースの最後を飾る花火だ。是非、この花火を見てから家路についていただきたい。

2010年、前夜祭に登場した小林可夢偉選手レース後の花火



インタビューに応じてくれた山本選手(左)と松田選手(右)

 ポッカ GT サマースペシャル開催にあたり、GT500クラスで活躍するカルソニック IMPUL GT-Rに乗る松田次生選手と、RAYBRIG HSV-010に乗る山本尚貴がポッカ GT サマースペシャルとシリーズとシリーズ後半戦への意気込みを語ってくれた。

──SUPER GTの前半戦を振り返って、いかがでしょうか。
山本選手:今年は前半で優勝したいと思ってシーズンインしましたが、なかなか思いどおりにはいかないですね。岡山は勝てるチャンスがあったのですが、予選でエンジンにトラブルが出て、そこからバタバタと決勝へ進むことになってしまいました。その中で2位が獲得できたことは大きかったと思います。

──セパンはいかがですか。
山本選手:前半で伊沢選手がスピンして遅れましたが、自分が担当した後半のスティントではコース上で3台抜き、自分自身としては収穫の大きいレースでした。

──SUGOでは6号車 ENEOS SUSTINA SC430と十数周にわたりバトルをしましたが?
山本選手:こちらは早めにタイヤ交換してロングスティント、6号車 ENEOS SUSTINA SC430は遅めのタイヤ交換で、抑え切るのは大変でした。そのあたりを考えながら走っていたつもりですが、抜かれた後に抜き返そうとして接触したのも、もう少しタイヤまわりの状況をよく考えて走るべきだったと思います。

──ペナルティを回避するために6号車にポジションを譲ったのにペナルティになりましたね。
山本選手:皆にそう言われるんですけど、譲ったんじゃないです。タイヤがダメになって最終コーナーが曲がれなくなって抜かれました。チームには申し訳ないですが、内容的にはよいレースができたと思います。

──松田選手は前半戦を振り返っていかがでしょうか?
松田選手:開幕戦はトップを快走するいいレースでしたが、スピンしてGT300と接触して大きく後退しました。攻めの姿勢でイケイケのチームなので仕方ないかなと思いましたが、すぐ岡山で勝てたのでよかったと思います。ただ、昨年のセパンも今年の岡山も接触があった中で優勝と、スッキリ勝ってないので自分の中では納得はしていないです。

──岡山以外でポイントがないのが辛いですね?
松田選手:セパンはスタートで39号車 DENSO SARD SC430に追い出され、その後もオリベイラ選手がコースを外して芝がエアインテークのフィルターにつまってパワーダウンしました。50馬力くらい少ない状態で後半のスティントを走ったので、抜かれるばかりのレースになっていまいました。

 SUGOはラインを外した1号車 ウイダー HSV-010が戻ってきて接触し、パンクしてレースを失いました。優勝以外は前半戦は流れが悪かったのですが、そろそろいい方向へ向かうような気がします。

 一番気になるのは、ここへきてタイヤ戦争がすごくて、ブリヂストンも頑張っていますが、SUGOではミシュランが雨で5秒、ドライで2秒も早かったのでどうしようもなかったですね。でもGTレースは、色々なメーカーが競い合うところが面白いので、観客の方はそれも楽しみの1つだと思います。

──今週末の鈴鹿はどうですか?
松田選手:行きますよ。上位じゃなく、優勝を狙いに行きます。僕もオリベイラ選手も鈴鹿は得意なので、いいレースが見せられると思います。ただホンダのHSV-010GTが速いんですよね。
山本選手:ホンダはホームコースですし、昨年はARTAが勝っているのでホンダ2連勝を狙います。ウェイトハンディも46号車が少し離れていますが、それ以外は接近しているのでどのチームが勝ってもおかしくないレースになると思います。

──レース当日の鈴鹿サーキットは涼しくなりそうですがいかがですか?
松田選手:涼しくなりすぎない方がいいですね。暑すぎるのもよくないですが。
山本選手:先日の鈴鹿でのタイヤテストが涼しかったので、僕はどちらかと言うと涼しい方がいいですね。最近、ミシュランの温度に対するレンジが広がっているのが脅威ですね。
松田選手:ブリヂストンばかり勝っててもお客さんは面白くないので、悪いことだとは思わないのですが、走ってる方は大変なんですよ。観客の方にそこを分かってもらえると嬉しいですね。

──低迷していたダンロップタイヤもSUGOでは表彰台に上がりましたが?
松田選手:先日のタイヤテストでもダンロップは速かったので実力が上がっていると思います。タイヤも注目ですし、HSV-010GTも速そうですし、鈴鹿は接戦になりそうで見所は多いと思います。

──マシンの中は暑いですよね。
松田選手:暑いですよ。でもGT-Rはエアコンがあるからまだましですけど、HSV-010GTはラジエーターが横にあるからかなり暑いと思いますよ。
山本選手:エキゾーストも横を通っていて、以前は前方に積んだドリンクから来るチューブがエキゾーストの上を通っていたので少し捨ててから飲まないと熱湯が出てきました。クールスーツはありますが暑いですね。

──お二人ともチーム監督が日本のレース界の歴史に残る方ですが、いかがですか?
松田選手:星野監督はドライバーの気持ちが分かるので、自由にやらせてもらっています。チームが力抜いているとすごく怒りますが、攻めて失敗しても怒ることはないですね。

──星野監督はピットウォールで机叩いてますね。それとインカムのマイクが口元にないのですが、レース中に監督と話すことはあるのですか?
松田選手:机叩いたり、ペットボトルを叩いたり、モニター見て「行け~」って叫んでますけど、それくらいレースに熱い監督ですね。でもレース中に監督と話したことはないですね。チームに任せてくれています。レーサーだったので僕らの気持ちをよく理解してくれています。高橋監督は?
山本選手:無線で話すことはないですね。どちらかと言うと暖かく見守ってくれてる感じです。やはりレーサーの気持ちを分かってくれていると思います。

──残り鈴鹿を含めて4戦ですがいかがですか?
松田選手:鈴鹿か富士、どちらかで勝って、ウエイトハンデがない最終戦のもてぎで勝てればいいですね。まぁそんなにうまく行かないのがレースですけど(笑)。
山本選手:残りの鈴鹿、富士、オートポリス、もてぎはどこも相性がいいので、どこかで勝ちたいですね。後は勝ちに行けない展開になっても、取りこぼしのないレースができればと思います。

──今日はありがとうございました。よいレースを期待しています。

 松田選手の12号車 カルソニック IMPUL GT-Rは1勝して20ポイントを獲得しランキングは9位。山本選手の100号車 RAYBRIG HSV-010は最高位は2位だが7位が2回あり23ポイントを獲得しランキングは6位。まだまだ巻き返しは可能なので、第5戦、ポッカ GT サマースペシャル以降の活躍を期待したい。


左端は鈴鹿レースクイーンの早川采伽さん。右端は古川みゆきさん松田選手がドライブするカルソニック IMPUL GT-R山本選手がドライブするRAYBRIG HSV-010

(奥川浩彦)
2011年 8月 19日