日産ギャラリーでセバスチャン・ベッテル選手のトークショー
史上最年少の2年連続F1チャンピオン

史上最年少の2年連続F1チャンピオンとなった、セバスチャン・ベッテル選手

2011年10月10日開催



 10月9日に行われたF1世界選手権 第15戦 日本グランプリでは、ボーダフォン・マクラーレン・メルセデスのジェンソン・バトン選手が優勝を飾ったが、レッドブル・レーシングのセバスチャン・ベッテル選手は1ポイント獲得すればよいという有利な状況にあったとはいえ、見事に3位表彰台を獲得。昨年に続き2年連続でF1世界選手権ドライバー選手権のチャンピオンに輝いた。

 過去に2年以上連続チャンピオンとなったドライバーは、フェルナンド・アロンソ(2005~2006年)、ミハエル・シューマッハ(1994~1995年、2000~2004年)、アイルトン・セナ(1990~1991年)、アラン.プロスト(1985~1986年)、ジャック・ブラバム(1959~1960年)、ファン・マヌエル・ファンジオ(1954~1957年)、アルベルト・アスカリ(1952~1953年)というそうそうたる面々で、ベッテル選手は史上最年少でこの偉業を達成し、まさに偉大なドライバーの仲間入りを果たしたと言ってよい。

 そのベッテル選手が2年連続F1チャンピオンを達成した翌日に、横浜にある日産自動車の日産グローバル本社ギャラリーにおいてトークショーを開催し、詰めかけた2000人(主催者発表)のファンを前に、その感想などを語ってくれた(記事中一部敬称略)。

トークショーに先立ち開催されたプレスカンファレンス

「今シーズンは本当によいシーズンになった」
 トークショーに先立って行われたプレスカンファレンス(日産ギャラリーへの生中継も実施)では、レッドブル・レーシングのアドバイザーを務めるデビッド・クルサード氏(2008年までレッドブル・レーシングのドライバーを務め、現在はBBCでのコメンテーターを努めている)が司会となり、ベッテル選手、レッドブル・レーシングのCTO(Cheif Technology Officer:最高技術責任者、レーシングカーの開発など技術面での全責任を負うエンジニア)であるエイドリアン・ニューウェイ氏、レッドブル・レーシングの代表であるクリスチャン・ホーナー氏という実に豪華な面々が登場。クルサード氏の質問に答えていく形式で進められた。

司会はデビッド・クルサード氏

 この中でベッテル選手は、鈴鹿で2年連続でF1チャンピオンになった感想を聞かれ「2年連続のF1チャンピオンは本当にビックネームばかり。そうしたビックネームに並んでいることは本当にすごいことだと思っている」と述べ、自身の成し遂げたことを誇りに思っていると述べた。1回目と2回目は違うのか?という質問に対しては「初優勝が特別なように、やっぱり最初のタイトルは格別だった。ただ、今年は今年でまた特別なモノだったよ。去年は本当に大変なシーズンで浮き沈みが激しかったけど、今年は本当によいシーズンを過ごすことができた」と述べた。

 なお、ベッテル選手によれば「昨日の夜はすごく盛り上がったよ、カラオケで歌ったりね(笑)。友人達からも祝福の電話をもらい嬉しかったけど、今はもう次の韓国グランプリ(10月14日~16日開催)に向けてどのように戦っていこうかということで頭がいっぱいだ」と語り、チャンピオンになったことを、多くのスタッフと祝いつつも、次戦へ向けての準備を始めているようだ。

チーム代表クリスチャン・ホーナー氏チームCTO エイドリアン・ニューウェイ氏チャンピオン獲得の喜びを語るベッテル選手

「ベッテルはまだまだ成長している」と、レッドブル・レーシング チーム代表
 ウィリアムズ(1992年、1993年、1994年、1996年)、マクラーレン(1998年)、レッドブル(2010年)でデザインしたマシンがコンストラクターズ(製造者部門)のタイトルを獲得し、1992年以降在籍したチームには必ずタイトルを取らせてきた“優勝請負人”のエイドリアン・ニューウェイ氏だが、ベッテル選手とともに成し遂げたこの偉業を素直に喜んでいるようだ。「2006年にレッドブルに加入すると決めたのは非常に大きな決断だった。しかし、その後にセバスチャンがチームに加わり、今は必ず優勝できるとチームを信じて仕事ができるようになっている」と述べ、現在のレッドブルレーシングがまさにドリームチームであると強調した。

 さらにどうしたら勝てるマシンが作れるのかという質問に対しては「まず最初にレギュレーションをきちんと読み解くこと。それから沸いてきた解決策を現実化してどのように自分達の車に落とし込んでいくかだ」と述べた。

 レッドブル・レーシングのチーム代表であるクリスチャン・ホーナー氏は2年連続でタイトルを獲得したベッテル選手について「セバスチャンはまだまだ成長している。彼の勝利への思いは常に一定しているし、その何よりの証拠が4戦も残してチャンピオンを決めたことだね」と述べ、チーム代表としても史上最年少でチャンピオンを決めたベッテル選手を高く評価していると述べた。

 さらにインフィニティ(日産自動車のプレミアムブランド)との提携に関しては「ルノー・ニッサン・アライアンスとの提携は非常に重要だ。エンジンだけでなく、車体やハイブリッドシステムなど新しい領域での研究開発も続けている。我々はメーカー系のチームではないので、そうした強力な研究開発部門を持つメーカーとの提携は大きな意味がある」と述べ、ルノーエンジンの供給だけではない協力体制が、タイトルの獲得にも一役買っていると強調した。

トークショー後には異例の即席サイン会を実施
 プレスカンファレンス後には、日産グローバル本社ギャラリーにおいて、トークショーを開催。トークショーには、ベッテル選手のほか、前出のニューウェイ氏、ホーナー氏、クルサード氏に加え、元F1ドライバー(ティレル、ザクスピード、ブラバム、ベネトン、マクラーレン、リジェ、ジョーダンなどで活躍)でBBCの解説者を務めるマーティン・ブランドル氏も飛び入りで参加するという豪華な顔ぶれがそろった。前日の夜より並んでいたという熱心なファンもおり、前列では特に女性ファンの多さが印象的だった。

日産ギャラリーで開催されたトークショー。左端が川井一仁氏、その右がマーティン・ブランドル氏ベッテル選手が後で加わる。5人の豪華メンバー

 進行はモータースポーツジャーナリストの川井一仁氏。チャンピオン獲得の感想などは、プレスカンファレンスが生中継されていたため、トークショーというよりはベッテル選手とファンの交流会に。ベッテル選手も、鈴鹿に来ていたファンが日産ギャラリーに来ていることを見つけると、「鈴鹿にもいたよね」と言及するなどしてファンを喜ばせたりしていた。

 最後にベッテル選手は、「地震や津波などで本当に大変な日々を送っている日本の皆さんに、少しでも癒やしを与えることになれば嬉しいです」と結び、日本のファンの声援がうれしかったとのお礼を述べた。会場では日産自動車つながりということで、横浜Fマリノスの大黒将志選手が、ベッテルの名前が入ったマリノスのユニフォームをプレゼントするというセレモニーも行われた。

 トークショーの終わりには、前方エリアに座っていたファン全員にサインをするというサプライズイベントを実施。2年連続チャンピオンになったばかりのベッテルが選手からのサインを得たファンは、大満足の様子。韓国グランプリを週末に控え、決して余裕がある訳ではないベッテル選手がこうした時間を割くのは極めて異例。ベッテル選手が日本のファンに対してできるだけのことをしようと考えていることがうかがえたトークショーとなった。

サプライズでサイン会を実施

(笠原一輝)
2011年 10月 11日