痛車 vs. イタ車、初音ミクBMW 逆転でシリーズチャンピオン
SUPER GT最終戦もてぎ【GT300編】

優勝しチャンピオンを獲得した初音ミク グッドスマイル BMW

2011年10月16日決勝開催



 10月16日、2011 AUTOBACS SUPER GT 第8戦 MOTEGI GT 250km RACEの決勝がツインリンクもてぎ(栃木県茂木町)で開催された。チャンピオン争いで注目されたGT300クラスは4号車 初音ミク グッドスマイル BMW(谷口信輝/番場琢)がポールポジションから逃げ切り優勝。逆転でシリーズチャンピオンを獲得した。

 GT300クラスのドライバーズポイントは、最終戦を迎え11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458(田中哲也/平中克幸)が72ポイントでトップ。5ポイント差の2位に4号車 初音ミク グッドスマイル BMW(谷口信輝/番場琢)が続きチャンピオン争いはこの2台に絞られ、イタ車 vs. 痛車の争いとして注目が集まっている。

 4号車 初音ミク グッドスマイル BMW(谷口信輝/番場琢)と同じく2回優勝している62号車 R&D SPORT LEGACY B4(山野哲也/佐々木孝太)が3位に付けるが、トップとの差は21ポイント(優勝で20ポイント獲得)あるため最終戦のチャンピオン争いに参加する権利はない。

 今回の最終戦で11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458は4号車 初音ミク グッドスマイル BMWより前でゴールすれば11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458がチャンピオンを獲得。4号車 初音ミク グッドスマイル BMWは優勝すれば11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458が2位に入っても同点となり、優勝回数の多い4号車 初音ミク グッドスマイル BMWがチャンピオン獲得となる。

 4号車 初音ミク グッドスマイル BMWが2位、3位、4位の場合は11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458の4位、5位、8位以下が4号車 初音ミク グッドスマイル BMWのチャンピオン獲得の条件となるため、他車の成績によりチャンピオンの行方が左右される可能性も高い。

GT300ドライバーズポイントランキング トップ3

順位マシン名(ドライバー名)ポイント
1位11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458(田中哲也/平中克幸)72
2位4号車 初音ミク グッドスマイル BMW(谷口信輝/番場琢)67
3位62号車 R&D SPORT LEGACY B4(山野哲也/佐々木孝太)51

 最終戦が行われたツインリンクもてぎの天候は土曜日(予選日)は雨、日曜日(決勝日)も朝のフリー走行まで雨が降り続き、決勝だけ晴れ、路面はドライとなった。雨の中で行われた予選では4号車 初音ミク グッドスマイル BMW(谷口信輝)がポールポジションを獲得、2位には11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458(平中克幸)が入りポイント2位、1位が最前列からスタートするという、まさに絵に描いたような展開となった。

 練習走行、予選、朝のフリー走行まで雨が続き、全チームが1度もドライタイヤでの走行をしていない。そのためレース1時間前に行われる8分間のウォームアップ走行が13分間に延長された。ここで予選7位の33号車 HANKOOK PORSCHEにドライブシャフトのトラブルが発生。グリッドに並ぶことができずピットスタートとなった。

 4号車 初音ミク グッドスマイル BMWはこれまで谷口信輝選手がスタートを担当し番場琢選手が後半のスティントを担当してきたが、今回は番場選手がスタートを担当となった。11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458はいつもどおり田中哲也選手、平中克幸選手の順だ。

 気温26度、路面温度33度、秋晴れの空の下決勝レースがスタートした。ポールポジションからスタートした4号車 初音ミク グッドスマイル BMWがトップをキープ、上位陣は予選順位をキープして1コーナーを通過、ピットスタートとなった33号車 HANKOOK PORSCHE(影山正美)ははるか後方から追い上げを開始した。

GT300クラスのスタートシーン(Photo:Burner Images)33号車はピットスタート(Photo:Burner Images)上位陣はポジションキープ。33号車が後方でコースイン

 序盤は4号車 初音ミク グッドスマイル BMWが後続を引き離す展開。2位の11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458との差は2周目に2秒、4周目に3秒、5周目に5秒、8周目に6秒と開いた。このまま逃げ切ればチャンピオン獲得となる。

 上位集団で快調な走りを見せたのは前戦で優勝した62号車 R&D SPORT LEGACY B4(佐々木孝太)だ。5番グリッドからスタートし、1周目に43号車 ARTA Garaiya(高木真一)を抜き4位、2周目に88号車 JLOC ランボルギーニ RG-3(井入宏之)を抜き3位に浮上。チャンピオン争いをする11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458との差を徐々に詰めてきた。

62号車は43号車の後方5位でスタート43号車を抜き4位
3位の88号車の背後に迫る88号車を抜き3位に浮上

 3位に浮上した62号車 R&D SPORT LEGACY B4は2位の11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458との差を2周目に1.6秒、3周目に0.5秒と縮め4周目の5コーナーでテール・トゥ・ノーズとなる。V字コーナー、ヘアピンと攻め立てるがここは11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458がしっかり応戦。5周目の1、2コーナーまでは抑えたが3コーナーでインを取った62号車 R&D SPORT LEGACY B4が2位に割って入った。チャンピオン争いに絡む伏兵の登場だ。

2位の11号車の背後に迫る11号車を攻め立てる62号車
4号車の後方で11号車と62号車がサイド・バイ・サイド。3コーナーで62号車が2位浮上

 2位にポジションアップした62号車 R&D SPORT LEGACY B4の勢いは止まらない。5周目に4.1秒あったは4号車 初音ミク グッドスマイル BMWとの差を6周目に2.6秒、7周目に1.1秒と縮め8周目の5コーナーでテール・トゥ・ノーズの争いとなった。8周目のタイム差は0.9秒。トップ交代は時間の問題かに見えた。

一気にトップに迫る62号車

 このまま62号車 R&D SPORT LEGACY B4がトップに立ち2位4号車 初音ミク グッドスマイル BMW、3位11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458の順となるとチャンピオンは11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458。11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458は4位に後退してもチャンピオン獲得となるためかなり楽な展開も期待できる。

 2台は9周目をテール・トゥ・ノーズの争いで走行。そのまま10周目に突入かと思った瞬間、62号車 R&D SPORT LEGACY B4が緊急ピットイン。左リアタイヤのホイールナットが緩み、締め直してピットアウトするが19位まで順位を落としシーズン3勝目は遠のいてしまった。同時に11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458の楽な展開も目前で消えてしまった。自力で抜くしかない展開だ。

62号車のピットインで楽になった4号車。後方に11号車62号車は69号車、10号車の後方19位でコースに復帰。後方から再び追い上げた

4号車に11号車が迫ってきた

 62号車 R&D SPORT LEGACY B4のピットインで2位に戻った11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458はトップのと差を徐々に詰め始めた。8周目に6秒に開いた差を11周目に4.5秒、13周目に3.5秒、14周目に2秒と縮め背後に迫った。

 一気にオーバーテイクを狙うかと思われたが、規定周回数の1/3周となる18周目に11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458がピットイン。タイヤ交換、給油、ドライバー交代を行い停止時間47秒でコースに復帰した。今シーズンは早めのピットインで後方から追い上げ、何度も上位入賞に成功しているだけにラップタイムに注目だ。

 続く19周目に4号車 初音ミク グッドスマイル BMWもピットイン。11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458と離れた位置でのタイム競争を避け前に立ち塞がる作戦だ。ピットでの停止時間は39秒。コースに復帰するとストレート1本分、10秒近い差を付けた事実上のトップを堅持した。

11号車がピットイン次の周に4号車もピットイン
ピットアウトすると差は10秒に広がったアウトラップを終えても差は縮まらなかった

 チャンピオン争いをするトップ2台のピットインにより見かけ上の1位に躍り出たのは、なんとピットスタートで最後尾から追い上げた33号車 HANKOOK PORSCHEだ。チャンピオン争いをする2台の1分59秒台のラップタイムに対し、33号車 HANKOOK PORSCHEはコンスタントに1分58秒台を記録。2周目に5台をごぼう抜きして15位、3周目からは毎周1台をオーバーテイクし5周目に12位、6周目に2台、8、9、10周目にも1台ずつ抜いてあっと言う間に6位まで浮上した。

最後尾から猛進。18位にポジションアップ12位に浮上した33号車(Photo:Burner Images)9位争いの背後に迫る33号車
9位に浮上し7位争いする27号車、2号車を追う33号車7位争いの背後に迫る33号車27号車を抜き8位浮上。2号車を追う33号車
62号車のピットインで6位になった2号車に迫る2号車を抜き6位浮上

 13周目に43号車 ARTA Garaiya(高木真一)、66号車 triple a Vantage GT2(星野一樹)も抜き4位、15周目に88号車 JLOC ランボルギーニ RG-3を抜き3位、2位を走る11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458の7秒後方に迫り、上位2台のピットインで堂々のトップに躍り出たのだ。

43号車、66号車を抜き4位浮上3位の88号車をロックオン
88号車も抜きついに3位浮上トップ2台がピットインし、ついに1位浮上

 19周目にトップに立った33号車 HANKOOK PORSCHEは24周目までトップをキープ。25周目にピットインし4号車 初音ミク グッドスマイル BMWの後方でコースに復帰、事実上の2位に割って入った。

43号車に迫る2号車。43号車はウィンカーを出しこのままピットイン。2号車は33号車がピットインするとトップへ

 33号車 HANKOOK PORSCHEに代わってトップに立ったのはいつもどおり遅めのピット作戦の2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電(加藤寛規)。33周目までトップを走りピットイン。序盤に予定外のピットインを行い18位から猛進してきた62号車 R&D SPORT LEGACY B4が1周だけトップを走り規定周回数ギリギリの35周目にピットイン。これで全車がピットインを済ませ4号車 初音ミク グッドスマイル BMW(谷口信輝)が再びトップに立った。

 9.6秒差の2位に33号車 HANKOOK PORSCHE(藤井誠暢)、その9.5秒後方の3位に11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458(平中克幸)となった。このままの順位でゴールすれば4号車 初音ミク グッドスマイル BMWがチャンピオン獲得となる。



66号車と88号車の4位争いは終盤まで続いた後方から追い上げた62号車は43号車を抜き6位でゴールした

 4号車 初音ミク グッドスマイル BMWは2位との差を10秒前後にキープ、2位と3位の差も縮まらずそのままゴール。4号車 初音ミク グッドスマイル BMWが今季3勝目を挙げ、逆転でシリーズチャンピオンも獲得した。終わってみれば楽勝とも思える差でゴールしたが、もし62号車 R&D SPORT LEGACY B4がホイールのトラブルでピットインしていなければ、もし33号車 HANKOOK PORSCHEが7番グリッドからスタートしていたら、チャンピオン争いは異なる結果になったかもしれない。圧倒的な強さに加え、運も味方に付けた4号車 初音ミク グッドスマイル BMWの勝利だった。

4号車は独走でゴールへ。後方はGT500の2位争い33号車も11号車に大差を付け、2位でゴールへ11号車も66号車に大差を付け、3位でゴールへ

 4号車 初音ミク グッドスマイル BMWは参戦4年目となる今シーズン、セパン(マレーシア)で初優勝、そのまま勢いに乗り、重すぎる性能調整をはね除けシリーズチャンピオンも獲得した。谷口信輝選手、番場琢選手とも初のチャンピオンを獲得。そしてこのマシンが火付け役となった痛車も初のチャンピオン獲得となった。

このレースの表彰式。4号車、33号車、11号車の順(Photo:Burner Images)シリーズの表彰式。4号車、11号車、33号車の順となった(Photo:Burner Images)

最終順位(入賞チーム)

順位マシン名(ドライバー名)
1位4号車 初音ミク グッドスマイル BMW(谷口信輝/番場琢)
2位33号車 HANKOOK PORSCHE(影山正美/藤井誠暢)
3位11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458(田中哲也/平中克幸)
4位66号車 triple a Vantage GT2(吉本大樹/星野一樹)
5位88号車 JLOC ランボルギーニ RG-3(井入宏之/関口雄飛)
6位62号車 R&D SPORT LEGACY B4(山野哲也/佐々木孝太)
7位43号車 ARTA Garaiya(高木真一/松浦孝亮)
8位2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電(高橋一穂/加藤寛規)
9位74号車 COROLLA Axio apr GT(新田守男/国本雄資)
10位26号車 Verity TAISAN Porsche(松田秀士/山下潤一郎)

GT300クラスのドライバーズポイントランキング上位

順位マシン名(ドライバー名)ポイント
1位4号車 初音ミク グッドスマイル BMW(谷口信輝/番場琢)87
2位11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458(田中哲也/平中克幸)83
3位33号車 HANKOOK PORSCHE(影山正美/藤井誠暢)58
4位62号車 R&D SPORT LEGACY B4(山野哲也/佐々木孝太)56
5位14号車 SG CHANGI IS350(折目遼)49
6位14号車 SG CHANGI IS350(アレキサンドレ・インペラトーリ)49
7位74号車 COROLLA Axio apr GT(新田守男/国本雄資)38
8位66号車 triple a Vantage GT2(吉本大樹/星野一樹)33
9位25号車 ZENT Porsche RSR(都筑晶裕/土屋武士)33
10位2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電(高橋一穂/加藤寛規)32


優勝した4号車 初音ミク グッドスマイル BMW(谷口信輝/番場琢)
2位の33号車 HANKOOK PORSCHE(影山正美/藤井誠暢)
3位の11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458(田中哲也/平中克幸)


(奥川浩彦/Photo:奥川浩彦、Burner Images)
2011年 10月 19日