富士経済、次世代自動車は2020年に705万台規模に
次世代自動車・輸送機器分野の電池市場を調査

2011年12月2日
101,850円(書籍版)
117,000円(書籍・電子版セット)



 富士経済は12月2日、報告書「エネルギー・大型2次電池・材料の将来展望 2012 No.1 -自動車・輸送機器分野編-」を発売した。価格は書籍版が101,850円(A4判/336頁)、書籍・電子版セットが117,000円。

 HV(ハイブリッド車)、EV(電気自動車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、電動式自動2輪車などを含む次世代自動車6分野と、その他輸送機器4分野の応用製品市場およびその製品に搭載される蓄電デバイスの市場を調査・分析したもの。調査は3回に渡って行われ、今回発表されたのはその第1回目となる。調査期間は7月~10月。

 報告書によると、次世代自動車は現状ではトヨタやホンダが市場を牽引するHVが市場の95%を占めているが、今後PHV・EVの投入や普及が進むことでHVのシェアは下降すると予測するが、それでも2020年時に80%弱を占めると見る。その一方で、PHVは大幅に伸びるとしており、2011年に次世代自動車分野でPHVが占める割合が1%と予測するのに対し、2020年は15%と見ている。

自動車・輸送機器分野の世界生産台数2011年見込2020年予測2011年比
次世代自動車960,000台7,050,000台734.4%
その他輸送機器34,450,000台59,460,000台172.6%

HV市場はプリウスとインサイトが牽引
 HV市場はトヨタ「プリウス」とホンダ「インサイト」が牽引しており、2011年の生産台数の80%近くを日本で生産するが、販売は日本のほかにアメリカでも進んでおり、日本からの輸出比率が高いと言う。同社の予測では、2015年以降には世界的な燃費規制の強化等を背景に世界の各自動車メーカーのラインアップが強化され、日欧米の各エリアでのHV車の生産・販売が進むとしている。HVの世界生産台数の見込みは、2011年が917,000台なのに対し、2020年は5,557,000台としている。

 蓄電デバイスは、現状でプリウス、インサイトに採用されるニッケル水素電池が中心。国内外のメーカーではリチウムイオン電池の採用も始まっているが、コスト重視や各種パフォーマンスを重視するなど、車種に応じて搭載する電池を選定するため、今後もニッケル水素の需要が続くと言う。

 しかし、PHVやEVの本格投入が予想される2015年前後には、リチウムイオン電池の量産効果によるコスト低減により、HVにおけるリチウムイオン電池の採用拡大を予測している。

HVの蓄電デバイス市場2011年見込2020年予測2011年比
ニッケル水素電池90,300,000,000円126,200,000,000円139.8%
リチウムイオン電池8,800,000,000円333,800,000,000円3793.2%
合計99,100,000,000円460,000,000,000円464.2%

PHVの蓄電デバイス市場の伸びは鈍化か
 PHV市場は、2012年に米カリフォルニア州で行われるZEV(ZERO EMISSION VEHICLE)規制や、世界各国の燃費規制強化が追い風となって市場が拡大すると予測。とくにアメリカでは、PHV開発を国家プロジェクトで進めてきた経緯があり、同市場を牽引すると見ている。PHVの世界生産台数の見込みは、2011年が6,900台なのに対し、2020年は1,100,000台としている。

 PHV向け電池は、EV用して採用できたりHV向けから転用できたりすることから、連動して価格が低下していくと予想。そのため、PHV市場の拡大とともに蓄電デバイス市場も拡大するものの、電池コストの低減が進むことで蓄電デバイス市場の伸びは鈍化すると見ている。なお、応用製品価格に占める電池コストの比率は、2011年で50%弱、2020年には30%弱になると予想している。

PHVの蓄電デバイス市場2011年見込2020年予測2011年比
リチウムイオン電池10,200,000,000円753,100,000,000円7383.3%

EVの需要創出は2020年まで“限定的”
 すでに三菱自動車「i-MiEV」、日産「リーフ」などが市場に投入されており、今後も他の自動車メーカーからEVが投入されることで市場は拡大していくと予測するが、現状のリチウムイオン電池技術をベースとしたEV開発では、走行距離や急速充電による電池の劣化など課題が多いと指摘。そのため、2020年までは「走行距離が限定されたコミューターカーなどで限定的に需要創出が進んでいく」と見ている。EVの世界生産台数の見込みは、2011年が39,400台なのに対し、2020年は383,000台としている。

 蓄電デバイスはリチウムイオン電池が主流だが、EV向けに展開する電池メーカーが乱立しており、各国で電池工場の建設計画が相次いでいると言う。そのため、電池メーカー間の競争が激化、電池コストは急激に低下していると述べ、「EV市場の拡大とともに蓄電デバイス市場も拡大するが、電池コストの低減が進むことにより、EV市場よりもデバイス市場の伸びは鈍化する」としている。

EVの蓄電デバイス市場2011年見込2020年予測2011年比
リチウムイオン電池84,500,000,000円485,400,000,000円574.4%

日本での電動式自動2輪車の販売展開は2012年以降
 電動式自動2輪車は、現在の市場は生産・販売ともに中国が大半を占めており、それ以外の地域ではほとんど市場は形成されていないと言う。電動式自動2輪車の世界生産台数の見込みは、2011年が32,740,000台なのに対し、2020年は56,450,000台としている。

 日本では、電動式自動2輪車は道路交通法で原動機付自転車に準じた規制が課せられることから、主に中小メーカーや海外製品を扱う輸入販売企業によって市場が形成されており、日本の大手メーカーによる販売展開は2012年以降と見ている。

電動式自動二輪車の蓄電デバイス市場2011年見込2020年予測2011年比
鉛電池180,200,000,000円218,300,000,000円121.1%
リチウムイオン電池15,200,000,000円150,200,000,000円988.2%
合計195,500,000,000円368,500,000,000円188.5%

(編集部:小林 隆)
2011年 12月 3日