マツダ、i-DM運転コンテスト「JAPAN DRIVE Fest」決勝戦を開催
「i-DMはエコランプにあらず」

JDFグランプリ決勝戦のウィナー達

2011年12月17日開催
東京 六本木ヒルズ



 マツダは12月17日、リアルタイム運転評価システム「i-DM」による運転技術コンテスト「JAPAN DRIVE Festグランプリ」(JDF)の決勝戦を、東京 六本木ヒルズで開催した。

 JDFの詳細は関連記事に詳しいが、全国のマツダディーラーでi-DM装着車に試乗し、そのスコアを競うコンテストで、誰でも参加できた。10月8日~11月27日の間に、営業スタッフ同乗のもと確認されたスコアを登録して、全国でランキング化した。

 その上位50名と、ディーラースタッフ内の上位10名が全国から六本木ヒルズに集合、決勝戦を戦った。

会場には来春発売の初のフルSKYACTIV(スカイアクティブ)車「CX-5」とコンセプトカー「雄(TAKERI)」が展示された

 

決勝戦のコース

i-DMでドラテク競争
 決勝戦のコースは、六本木ヒルズアリーナのスタート地点からけやき坂、日本学術会議前、根津美術館前、表参道、南青山五丁目、骨董通り、高樹町を経て六本木ヒルズアリーナに戻る1周5.8km。このコースを10台の「デミオ」と「アクセラ」で走り、i-DMのスコアを競う。

 つまりクローズドコースではなく、休日の都心繁華街という、実情に沿った環境で行われる。i-DMでよりよりスコアを目指すだけでなく、交通環境に気を配って安全運転をしなければならないのだ。

 さらに決勝戦にはもう1つの難関が用意されている。i-DMはステージ1~5までの難易度が設定できるのだが、ディーラーでの試乗ではもっとも易しいステージ1が設定されていたが、決勝戦ではもっとも難しいステージ5となるのである。

レースクイーンのフラッグを合図に出発する参加者
コースは六本木ヒルズ周辺の道路。渋滞や信号待ちもあるゴール

“アクセルを踏め”と言うi-DM
 このi-DMは、デミオとアクセラの「SKYACTIV(スカイアクティブ)」グレードにのみ装備される運転評価システムだ。レベルの高い運転操作をするとグリーンのインジケーターを表示し、さらにレベルの高い操作ができるとブルーを表示する。

 さらに運転終了時(エンジンを切った時)には、その回の運転を最高5.0で採点し、運転操作についてのアドバイスを表示することで、ドライバーによりよい運転をコーチングする。また、ステージが1~5まで5段階で設けられており、各ステージで好成績を収めるとよりレベルの高い操作が要求される次のステージに進める。

デミオのi-DM。左のグリーンはポイントが加算も減算もされない状態。中央のブルーはポイント加算となるスムーズな運転。右のように左右の白いエリアの点灯は、乗員の体が揺れてしまうよくない運転で、ポイントが減算される

 ではi-DMは何をもって「レベルの高い運転」とするのだろうか。アクセラの猿渡健一郎主査は「エコランプは“踏むな”という指標、i-DMは“踏め”という指標」と言う。

 最近のクルマの多くに装備されている「エコランプ」は、燃料消費の少ない運転をしたときにエコランプを点灯させることで、ドライバーに省燃費運転を促すもの。そのため、アクセル開度を抑え、低速で走行するほどよく点灯する。

 一方i-DMは、エンジン回転数、車速、舵角から加速度を割り出すことで、なめらかで的確な運転かどうかを評価し、グリーンやブルーを表示する。アクセルを踏まなければ評価が上がるというものではない。

猿渡主査(右)はピエール北川氏とともにコースとi-DMで高スコアを出すコツを解説した

i-DMは「Sクラスドライバー養成ツール」
 猿渡主査によるi-DMで高スコアを出すコツは、「だらだらとブレーキをかけない。減速G一定できれいに停める」「ハンドルは少しずつゆっくり切る。切り増すイメージ」「コーナーの出口に向かうときはアクセルを踏んで加速」といったもの。ある程度の加速やアクセル開度、メリハリのある運転が要求されるのだ。

 そして、急アクセルや急ブレーキ、急ハンドルなど、ぎくしゃくとした操作をすると評価が下がる。クルマの乗員が不快に感じず、なおかつ燃費がよい走りを要求されるのがi-DMだ。

 マツダのテストドライバーは運転技量によりランク付けがされているが、その中でもトップのSクラスのドライバーはi-DMでも最も難しいステージ5で5.0の満点を出すと言う。そんな彼らの運転は「落ち着いていて、せかせかしない、きれいで丁寧な運転。それでいて速く、乗っていて気持ちいい」と猿渡主査は言う。

 マツダの三次テストコースにいる、テストドライバーの養成部隊もi-DMを見て「養成のツールに使いたい」と言ったそうだ。「本当にいいクルマを作ろうとすると、丁寧な運転ができないと開発できない。マツダの言う“統一感”(ドライバーの操作とクルマの挙動がリニアに繋がること)を出すには、ドライバーの技量がきちんとしている必要がある」(猿渡主査)。

 i-DMのステージ5で5.0を出せれば、マツダのSクラステストドライバーの技量を持っている、とも言えそうだ。

サポーターもステージ5に挑戦。安田美沙子さん(上段左)、柴小聖さん(同右)、おぎやはぎの矢作さん(下段左)、小木さん(同右)

SKYACTIVあってこそのi-DM
 単純なエコランプとは異なるi-DMだが、このような評価システムが生まれたのは、「クルマでは、早く目的地に着きたいもの。そんな中で、効率よく快適に乗れているかどうかを表す指標こそが、お客さんにとって本当に価値があるものと考えた」からと猿渡主査は言う。

 「エコランプをつけるような運転をすると、10km/hで坂を登らなければならなかったり、70km/hで高速道路を走らなければならないこともある。路面状況や運転環境に合わせて、効率のよい運転が表現できるような指標が必要だ」。常々エコランプについて言われてきた問題が、前提となっているのだ。

 「エコランプに従って運転していると、自車の後ろにクルマが並んでしまい、自分も、後ろのドライバーもイライラする。そして、エコランプ運転をしているクルマがいなくなるとみんな飛ばし始める。それが本当に環境にいいことなのか。みんなが気持ちよく走っている中で、きれいな運転をするというのが、交通社会全体のエネルギーの使い方として正しい」。

 一方で、i-DMのような技術が成立するのは、「SKYACTIVテクノロジーがあってこそ」とも言う。「i-DMのように“アクセスを踏め”と言うには、燃費のよい領域が広い、つまりアクセスを踏んでも燃費が悪化しないクルマでなければならない」(猿渡主査)からだ。

安全面での副次効果も
 i-DMには開発者の想定外だった効果もあった。ブログなどでユーザーの反応を見ていると、i-DMで高スコアを出すには、交通状況を先読みする必要があると気づく人が多いと言う。

 急な操作を避けるために、車間距離を空けておく必要があるし、信号が変わるかどうかを、交差する歩行者信号の様子などを参考に先読みする必要もある。もちろん、人や自転車、他のクルマの動きにも気を付けなければならない。

 結果として、i-DMで高スコアを出すための運転は、安全運転にも繋がるのだ。

4ポイント超は困難
 決勝戦は、マツダのディーラースタッフによる「マツダ代表クラス」、デミオで競う「デミオクラス」、アクセラで競う「アクセラクラス」の3クラスに別れて競われた。

 その結果だが、マツダ代表クラスが1位 矢野東優氏(3.9、カッコ内はポイント以下同)、2位 櫻井亮氏(3.9)、3位 冨依充氏(3.8)と接戦を矢野氏が征した。ちなみに同ポイントの場合は、クイズで勝敗が決められたと言う。

 デミオクラスは1位 葛西なつき氏(3.8)、2位 柏木伸之氏(3.8)、3位 須藤清和氏(3.5)、4位 宮崎真由美氏(3.4)、5位 加地正憲氏(3.3)、6位 山口直宏氏(3.3)。
 アクセラクラスは1位 森田直人氏(4.2)、2位 吉崎和典氏(3.6)、3位 後田喜藤氏(3.5)、4位 瀧澤 匡史氏(3.3)、5位 梶原一晃氏(3.3)、6位 斉藤研氏(3.2)となった。

マツダ代表クラスのトップ3デミオクラスのトップ3
アクセラクラスのトップ3

 4ポイントを超えたのはアクセラクラスの森田氏のみで、ステージ5の難易度の高さが際立ったようだ。表彰圏外の成績を見ると、2ポイント台が多数を占めたそうで、コースを運転中も、なかなかi-DMのスコアが上がらないのに首をひねる参加者も多かったと言う。

 決勝戦には、JDFサポーターであるタレントの安田美沙子さんと柴小聖(しば このな)さん、お笑いコンビのおぎやはぎが登場。10月の発表会で「4.9」の成績を叩き出し「暫定チャンピオン」になったおきやはぎの小木さん以下全員が、決勝戦でも「サポータークラス」として再度i-DMに挑戦。発表会ではステージ1に設定したが、決勝戦ではみんなと同じステージ5だ。

 その結果は、小木さん(アクセラ)が3.0、矢作さん(アクセラ)が2.9、安田さん(デミオ)が2.5、柴さん(デミオ)が1.8。発表会ではそれぞれ4.9、4.5、3.7、3.5であったことを見ると、ステージ5の難易度の高さが分かる結果となった。

サポータークラスの成績マツダの福原和幸 執行役員 国内営業本部長。参加者全員におみやげとしてマツダのル・マン24時間レース挑戦記をプレゼント

(編集部:田中真一郎)
2011年 12月 19日