矢野経済研究所、カーシェアリング市場規模は2012年に100億円を突破
「レンタカー&カーシェアリングに関する調査結果 2011」より

2012年1月27日発表



 矢野経済研究所は1月27日、「レンタカー&カーシェアリングに関する調査結果 2011」を発表した。

 同調査は2011年および2012年のレンタカー市場とカーシェアリング市場についてまとめたもので、レンタカー事業者、カーシェアリング事業者、カーシェアリング関連事業者等に同社の専門研究員がヒアリングを行った。調査期間は2011年9月~12月。詳細な調査結果は、2011年12月20日に同社から発売された「2012年版レンタカー&カーシェアリング市場の現状と展望」(A4判126ページ、157,500円)にまとめられている。

レンタカー市場規模推移と予測(出典:矢野経済研究所)

レンタカー市場は2010年度比で横ばい
 調査結果によると、リーマン・ショックに端を発した世界的な経済不況の中、国内レンタカー市場は景気後退の影響をあまり受けなかったと言う。

 法人需要は、固定費削減のため社有車を減らす傾向が近年トレンド化しており、車両不足分をレンタカーで補う動きが強まっていることから比較的安定した需要になっていると言う。

 また個人需要は、一般ユーザーの自動車を「保有」することから「利用」することに意識が変化している流れを受け、その受け皿としてレンタカーが寄与している一面があり、そのことから「需要が安定しやすい環境が整いつつある」との見方を示している。

 また、高速道路料金の休日上限1,000円の政策により、個人ユーザーの需要が増加したものの、東日本大震災によって個人の消費マインドが落ち込み、レジャーでの使用が大半を占めるレンタカーは大きな影響を受けた。

 そのため個人需要の落ち込みはゴールデンウィーク時点でも回復せず、夏休みにほぼ前年並みに回復したものの、期間推移で見るとわずかに前年割れの状況だったと言う。一方で、東日本大震災の影響を受けたと言うものの、復興事業等により被災地域では法人需要が急増している。

 こうした状況により、レンタカー市場は個人需要減、法人需要増となり、市場規模は前年並みの4,900億円規模と推測。2012年は「国内の経済環境が好転する兆しは少ない」としつつ、東日本大震災の復興事業における需要が底支えすることを加味し、4,950億円とわずかな増加にとどまるとしている。

カーシェアリング市場規模推移と予測(出典:矢野経済研究所)

2012年には市場規模が100億円を突破するカーシェアリング市場
 カーシェアリング市場については、事業展開する企業がレンタカー事業者、駐車場関連事業者、自動車関連事業者、マンション関連事業者など、さまざまな業種から参入が相次いでいる。それに伴ってステーション数、車両数ともに急増していることから、「一般ユーザーへの認知度・利便性は向上し、会員数は年々急増している」と言う。

 一方で、カーシェアリングのサービス内容を熟知しているユーザーはまだそれほど多くなく、カーシェアリングを十分に活用しているユーザーが少ないこと、またほとんどの事業者が事業全体で黒字化しているところが少ないとの指摘もしている。

 一般的にステーション設置から時間とともに稼動率は右肩上がりになるため、設置から時間を経たステーションでは黒字化しているケースもあるとしつつ、そこからの収益以上にステーション展開に投じる費用が上回っている事業者が多いため、「事業全体では赤字となっている」。さらに、カーシェアリング事業は先行投資型ビジネスモデルであるため、「投資負担に耐え切れず撤退する企業もすでに現れている」と言う。

 しかしながら、都市部を中心にカーシェアリングの認知度が高まっており、ユーザーの入会数が急増していることから、カーシェアリングの市場規模は2010年の約24億円から2011年には61億3,700万円、2012年には100億円を突破し116億9,700万円に達すると予測。ただ、中堅事業者の自己破産、事業撤退が2011年に発生している状況があるため、「当面は厳しい事業環境が続くものと考える」との結論を出している。

(編集部:小林 隆)
2012年 1月 27日