日産、新導入の省エネ型自動車運搬船「日王丸」を公開
国内海上輸送用に使用、7隻体制へ

追浜港に停泊する日王丸

2012年1月30日公開



 日産自動車は、太陽光発電パネルなど最新の技術を採用することで、従来より燃料を削減することが可能な省エネ型自動車運搬船「日王丸」を導入した。その日王丸が1月30日、報道陣向けに公開されたので、ここにお届けする。

 日王丸は「RORO船(Roll-on/Roll-off)」と呼ばれる、車両を積載するためのランプを備えたカーフェリーのような貨物船。同社ではこれまで6隻を国内海上輸送用(内航船)として利用していたが、新たに1隻増えたことで7隻体制となる。

 この新造船の設計コンセプトは日産が進める中期環境行動計画「ニッサン・グリーンプログラム 2016」に基づくもので、カーボンフットプリントの最小化(CO2排出量の削減)を実現するために導入されたもの。

 そのために採用されたのは、
・太陽光発電装置(内航船初導入)
・電子制御ディーゼル機関(内航船初導入)
・全層LED照明(内航船初導入)
・電動ランプ・揚錨機(内航船初導入)
・低摩擦抵抗型船底塗料
・風圧低減形状
・燃料タンクの2重化
・A/Sフィン
・K3プロペラ
・ターボリング
・リアクションラダー
・陸上電力コネクション(内航船初導入)
の12アイテム。

 これらにより従来型の同型船舶より、年間でCO2排出量を約18%(4,200t)あまり削減できると言う。これは約1,400tの燃料節減に相当する数字だ。

 ちなみに電子制御化されたディーゼルエンジンは直列8気筒。船の場合は「排気量」という概念がないそうだが、ボア500mm×ストローク2,900mmとのこと。最高出力は13,280kWで、航海速力は21.2ノット。燃費は燃料1tあたり10.3マイル。ちなみに、1マイルは1.852km、重油の比重は約0.9といったところ。排気量が気になる人は各自計算してほしい。

船名日王丸日龍丸(従来船)
最大積載台数※880台(1,380台)800台(1,200台)
全長169.95m158.00m
型幅26.00m26.00m
総トン数11,400t10,329t
※スカイライン換算。( )内はトレーラー未積載時

フロントまわりに「切り上げ構造」を採用することで、強風時や高速航行時の空気抵抗を軽減。見えない部分だが水面下外板には水の抵抗を低減する日本ペイントの省燃費型塗料「LF-Sea(エルエフシー)」を採用し、こちらでも省エネ効果を追求追浜港では輸出入車両の船積み・荷揚げも行われている
追浜工場で生産されたリーフなど、ここから関西・九州へ輸送される
甲板は7層構造。ランプから乗り込めるNo.1甲板はタップリとした高さが確保され、トレーラーがそのまま積み込める高さの低いNo.2甲板は乗用車用。ここだけで約300台が積載可能だ実際にクルマを積み込むとこんな感じ(B1甲板)。一般客が運転して積み込むフェリーと違い、車間にほとんど余裕がない
船内照明各種。カタチは異なるがすべてLED照明となっている
広々とした船長室ももちろん全部LED照明。これだけ大きな船だが運行要員はなんとわずか11名!ランプの上げ下げも電動モーターで行う。油圧によって行う通常タイプと異なり、海洋汚染の心配がなく環境に優しいのがメリット暴露甲板上には281枚の太陽光パネルが並ぶ。これにより最大50kW/hの送電が可能
発電状況はブリッジなどで確認が可能。取材時は20kW/h程度を発電していた陸上電力コネクション。停泊中に陸上から電気を受けることで発電機を使用せずに済むほか、災害時などには逆に船から送電することもできる。容量は給/送電とも1,000kW
ファンネル(煙突)には煤の飛散を防ぐためのスクリーンを装備することで環境に配慮船体中央部に設けられたアンチローリングタンク。船体のロールに応じてタンク内の水を左右に移送することで横揺れを低減するアクティブサス的な装置こちらはブリッジに配置されるレーダー。操作はトラックボールだ

 同船は関東(追浜・川崎)-近畿(神戸)-九州(苅田)間の輸送に充当され、1週間に2サイクルのパターンで運行される。同航路はこれまで2船4便(週)だったが、3船6便体制に強化されることになる。これは九州での生産強化および他社との共同輸送による輸送数の増加、加えてデイリー配船を実現することで納期の短縮および顧客満足度の向上を狙ってのことだと言う。

 日王丸の建造は新来島どっく、運行は日藤海運が担当する。

(安田 剛)
2012年 1月 31日