アウディ、2012年のモータースポーツ活動を発表、R8でGT300クラスに参戦
日本で10台だけの限定車「R8 GT スパイダー」も公開

女性ドライバーのシンディ・アレマン選手を起用して注目を集めるヒトツヤマレーシングの「ZENT Audi R8 LMS」

2012年3月22日開催



 アウディ ジャパンは3月22日に都内で記者発表会を行い、2012年のアウディ スポーツによるモータースポーツ活動、プライベートチームに車両供給を行うカスタマーレーシングの体制発表などを実施した。

 アウディ本社のモータースポーツ専門組織であるアウディ スポーツは、今年も世界各国でさまざまなレース活動を行うことになっており、日本における大きなトピックスとしては、今シーズンからSUPER GTのGT300クラスにアウディ「R8」が参戦することを発表。参戦車両とチーム体制などが紹介された。

「ZENT Audi R8 LMS」(21号車)のドライバーは都筑晶裕選手、シンディ・アレマン選手が担当わずかな距離ながら会場内で走行シーンを披露シーズン開始後の車両アップデートについてコメントするヒトツヤマレーシングの一ツ山代表
21号車のスイス人女性ドライバー、シンディ・アレマン選手
「Racerbook Audi R8 LMS」(20号車)。ドライバーはマイケル・キム選手、野田英樹選手が担当
ヒトツヤマレーシングは20号車と21号車の2台のR8でGT300に挑む
「IWASAKI MODAクロコ apr R8」(30号車)。21号車は岩崎祐貴選手、坂本雄也選手が担当
aprは昨年のカローラ2台体制から、R8とプリウスGTにシフトした

残念ながら「GAINER DIXCEL R8 LMS」(11号車)はメンテナンス中ということで会場には来なかったが、ドライバーの田中哲也選手と平中克幸選手、田中オーナー代行の3人が出席

 R8でSUPER GTに参戦するのは、ヒトツヤマレーシング、apr、ゲイナーの3チーム。ヒトツヤマレーシングは昨年度のSUPER GTに参戦していないものの、「R8 LMS」でスーパー耐久やGT3 ASIAシリーズなどに参戦して優勝を飾るなどの実績を持つ。

 マシンを新調するaprとゲイナーが導入するのは、R8 LMSをベースにエンジン出力の向上やボディーの軽量化、空力特性の見直しなどによって進化したニューモデル「R8 LMS ultra」となる。また、継続使用となるヒトツヤマレーシングのR8 LMSにも2012年仕様のエンジンといったアップデートキットが用意され、第2戦以降から戦闘力の向上が進められるとのこと。

 発表会ではアウディ スポーツ日本正規代理店であるノバ・エンジニアリングの森脇基恭取締役から、FIA-GT3カテゴリーのアウトラインや、R8 LMSがこれまで世界各国で積み重ねてきた実績、今年度から大きく生まれ変わることになったR8 LMS ultraの具体的な変更内容などについて解説が行われた。

ノバ・エンジニアリングの森脇基恭取締役昨年のスーパー耐久・ST-Xクラスで年間優勝したことを紹介2009年のデビュー以降、昨年までに世界のレースですでに100勝をマークしている
4年目のシーズンを前に「ultra」に進化大型化に加え、より低く、後方に位置することになったリアウイングフロントセクションの形状変更によって空力特性が見直されたほか、各種クーリング性能の向上なども果たしている
市販車のR8と同じだったドアパネルのカーボン化、ウインドーをガラスから樹脂に変更などによって40kgの軽量化を達成フロントタイヤのワイド化に伴い、足まわりの設計も大幅に変更されたレギュレーション変更が行われたことで、SUPER GTのGT300クラス参戦が実現

レースに注目すると未来のアウディ車の姿が見えてくる!?
 また、アウディ ジャパンの大喜多寛代表取締役社長も登壇。2012年シーズンのアウディは、「スポーツプロトタイプ車両による世界耐久選手権(WEC)、市販車ベースのマシンでワークス参戦するドイツツーリングカー選手権(DTM)、地域ごとのレース活動をサポートするカスタマーレーシングという3つの柱でモータースポーツ活動を行う」と語り、それぞれの意義や魅力などを解説。

 さらに30年以上続けてきたアウディのモータースポーツの歴史にも触れ、「その中でアウディは単純にレースで勝利することだけを目的にせず、常にユーザーに届ける製品造りに技術をフィードバックしている」とコメント。アウディにとって記念碑的なクワトロによるフルタイム4WDを始め、ガソリン直噴システムのFSI、ル・マンを制したディーゼルエンジンなどが市販車に与えた革新について紹介し、今シーズンのWECでデビューを飾る「R18 e-torn クワトロ」も高い重要性を持つだろうと語った。

アウディ ジャパンの大喜多社長R8は2004年のル・マン24時間レースでチーム郷を総合優勝に導いている
2012年はWEC、DTM、カスタマーレーシングの3要素を中心に活動WECは10月14日に富士スピードウェイでも開催される
前輪をモーターで駆動する「R18 e-torn クワトロ」「アウディでは“レースは技術の実験場”という言葉のもと、4輪駆動を持ち込んだクワトロ、ガソリン直噴のFSIなどをレースで培い、すぐに市販車に投入しています」と語る大喜多社長「R18 e-torn クワトロ」の開発でも市販車に技術転用を意識しており、今年発売となる2車種のハイブリッドカーに続く“電気ドライブの市販車”にも相乗効果を与えると言う

走行性能をさらに磨き抜いたR8 GT スパイダーがついに日本発売!
 このほか、この日に日本国内での発売情報が公になった「R8 GT スパイダー」の市販モデルのお披露目も行われた。

 世界限定333台のうち10台が日本市場で販売されることになったが、すでに昨年行われた東京モーターショーでの公開直後から購入を決定している人もいて、残りは数台になっているとのこと。販売は全国11カ所のR8取扱店で行われ、車両価格は3064万円となっている。

アレマン選手の運転で会場に登場大喜多社長とアレマン選手によるフォトセッション
R8 GT スパイダー
バケットシートの表皮にはアルカンターラを採用シートやフロアマットにはGT専用エンブレムが縫い込まれているドアグリップなどにもカーボンを配置
R8 GT スパイダーのインパネステアリングの表皮もアルカンターラとなるメーター色はブラックからホワイトに変更
ステアリングにパドルシフターを装備センターコンソールの多くの部分がカーボン製になり、ハンドブレーキレバーがアルカンターラ巻きとなっている
6速Rトロニックのシフトレバー。シフトノブにはシリアルナンバーが刻印されている
ベースモデルから最高出力が26kW引き上げられた改良型のV型10気筒5.2リッターFSIエンジン。トランスミッションは6速Rトロニック
フロントスポイラーや固定式の大型リアスポイラーはカーボン製に変更
凝った形状を採用するマフラーエンド
ブレーキシステムでは、レッドのアルマイト加工を施されたGT専用のブレーキキャリパーと、スチール製ディスクと比較して9kg軽量になるカーボンファイバーセラミックディスクなどを装備ウインカー内蔵のドアミラーもカーボン製になる
会場入り口ではアウディ車のフルラインアップ展示を行っていたレースマシンを運ぶ運搬車両の側面をスクリーン代わりにしてイメージムービーを上映会場の片隅でル・マン24時間レースの優勝トロフィーが展示されていた

(佐久間 秀)
2012年 3月 23日