日産、5代目となる新型「シーマ」発表会
「日産車の保有台数を拡大するため、シーマは日本市場になくてはならないクルマ」

西川廣人副社長(左)と片桐隆夫副社長、新型シーマ

2012年4月25日開催



 日産自動車は4月25日、5月21日に発売する新型「シーマ」の発表会を、日産グローバル本社ギャラリーで開催した。

発表会はピアニスト 塩谷哲氏の演奏で始まった
新型シーマのアンベール
初代シーマも展示してあった

 新型シーマについては関連記事に詳しいが、グレードは「ハイブリッド」「ハイブリッド VIP」「ハイブリッド VIP G」の3モデル。同社のフラッグシップモデルにあたり、全グレードとも「フーガ ハイブリッド」と同様の1モーター2クラッチのパラレルハイブリッドシステム「ピュア ドライブ ハイブリッド」と、V型6気筒 DOHC 3.5リッターガソリンエンジンの組み合わせになる。バッテリーはリチウムイオン電池で、トランクルーム部に収められる。

 エンジンの最高出力は225kW(306PS)6800rpm、最大トルクは350Nm(35.7kgm)/5000rpm。モーターは最高出力50kW(68PS)、最大トルク270Nm(27.5kgm)を発生し、システム全体で268kW(364PS)の出力となる一方で、JC08燃費は16.6km/L(10・15モード燃費は18.8km/L)を実現した。

 ボディーサイズは5120×1845×1510mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース3050mmで、フーガ ハイブリッドと比べ全幅、全高は同等(全高はコンフォートサスペンション装着車と同等)ながら、全長は175mm、ホイールベースは150mm長い。また、室内寸法は2240×1535×1185mm(室内長×室内幅×室内高)で、やはりフーガ ハイブリッドより室内長が150mm長くなっており、特に後席の居住性が高い仕上がりになっている。

 装備面では、全グレードともトランクオートクロージャー、リアドアオートクロージャー、後席読書灯、後席パーソナルランプ&照明付きバニティーミラー、リア/リアドアサンシェードなどを標準装備するほか、ハイブリッド VIP、ハイブリッド VIP Gでは、銀粉を手作業で木目にすり込ませた銀粉本木目フィニッシャーや、セミアニリン本革シート、後席パワーリクライニング機構を、さらにハイブリッド VIP Gは後席向けの装備として、7インチワイドVGAディスプレイを前席ヘッドレスト後部に備える。

 また、新型シーマの生産が行われる栃木工場では、「匠」と呼ばれる同社の高技能者が新型シーマの「最高品質」を実現するため、ラインに流れる車両をわざわざラインから外して外観のチェック、建付けの微調整を行うほか、塗装工程では手作業による水研ぎ、2名の匠が約20kmほどテストコースを実走行し、運転席では走行・操舵・制動のフィーリングを、後席では内装パーツのきしみ音の確認などを徹底的に行うなど、さまざまな取り組みが行われている。この取り組みについては関連記事(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20120425_528926.html)で紹介しているので、こちらを参照されたい。

シーマ ハイブリッド
シーマ ハイブリッドのインテリア。シート地はネオソフィール/ジャカード織物で、内装色はブラック。フィニッシャーは本木目となる
同じくシーマ ハイブリッドのインテリア。こちらはシート地がスエード調トリコット/ダブルラッセルで、内装色はベージュ。フィニッシャーは本木目。助手席パワーオットマン機構は全グレード標準装備
ハイブリッド VIP Gのインテリア。シート地はセミアニリン本革で、内装色はブラウンが標準となる。フィニッシャーは銀粉本木目。オプションの7インチワイドVGAディスプレイを前席ヘッドレスト後部に備える

 発表会では、同社のインフィニティ事業本部 商品戦略・企画部 チーフ・プロダクト・スペシャリストの笹岡正吾氏が、新型シーマについて概要を説明するとともに、西川廣人副社長、片桐隆夫副社長も登壇。

インフィニティ事業本部 商品戦略・企画部 チーフ・プロダクト・スペシャリストの笹岡正吾氏西川廣人副社長片桐隆夫副社長

 西川氏は、「シーマは日本市場にはなくてはならないクルマであり、シーマ復活の声が多かった」と述べるとともに、今後の展開として「日産車の保有台数をいかに上げていくかが我々の大きな目標であり、新型シーマはこれに大きく貢献するものと期待している」とし、今後日本市場で同社のシェアを拡大するために、新型シーマは欠かせない存在であるとした。

 また、新型シーマの生産は栃木工場が担い、搭載するV型6気筒 DOHC 3.5リッターガソリンエンジン「VQ35HR」の生産はいわき工場で行われているが、「昨年の東日本大震災で、この2つの工場は特に大きな被害を受けたが、従業員全員の努力により復旧を成し遂げた。この2工場でシーマを復活させられることは、我々全員感慨深いものがある」と、被災した工場とシーマの復活を喜ぶとともに、「国内市場は極めて競争が厳しいマーケットだが、私は日本で勝ち抜くということが、今後世界の市場で勝ち抜いていく上での必須条件だと思っている。今後、新型シーマをはじめとする競争力のある商品を導入して日本マーケットでの存在感を高め、そしてブランドパワー強化につなげていきたい」と、今後の抱負を述べた。

 一方、片桐氏は同社の国内販売にとっての新型シーマの重要性と、シーマの販売戦略について語られた。

 片桐氏は、「日本市場は、世界の自動車市場の中でももっともと言っていいほどの成熟市場。市場全体の保有台数は米国、中国に次ぐ規模だが、新規需要は極めて限定的であり、保有台数そのものは伸びていない」と述べる。そのため、日本市場で勝ち抜いていくためには日産車の保有台数をいかに広げられるか、そしてそのためには日産車の既存ユーザーに引き続き選んでもらうことが重要であり、その上で他社車からの乗り換え需要を喚起させることがポイントであるとした。

 同社の保有台数は長きにわたり減少傾向にあったものの、「ここ数年の努力により2011年度は約565万台を底に、2012年度は増加に転じる見込み」と言い、さらに世界市場シェア8%、営業利益率8%という目標を掲げる中期経営計画「日産パワー88」の期限となる2016年には「600万台を越える数まで増やす計画」と、片桐氏は述べる。

 また、シーマを選ぶユーザーは中小を含めた法人ユーザーが多いそうで、「我々の調査によるとシーマ1台につき5台の併有車を購入されている」「シーマに直接お乗りいただくお客様は購入決定に影響力のある方と認識している」(片桐氏)。そのことから、日本市場での保有台数を守り、その数を増やしていくためにはシーマがラインアップされることは極めて重要になると、片桐氏はシーマ復活の背景を語った。

 なお、シーマのターゲットユーザーについては、7割が日産車のセダンユーザー、そして3割が他社ユーザーで、その中でも元々日産車に乗っていたユーザーがメインターゲットになると言う。目標販売台数は2012年度は2000台としている。

初代シーマ2代目シーマ3代目シーマ
4代目シーマシーマのDNA新型シーマのパワーユニット。1モーター2クラッチのパラレルハイブリッドシステムを採用した
先代に比べ出力、燃費性能がともに向上した低燃費性、加速性能は先代シーマ、他社ハイブリッドよりも優れるとしているホイールベースを3050mmとし、特に後席はゆとりの空間を確保した
後席ニールームは先代シーマ、他社ハイブリッドよりも広い825mmを確保エンジン回転数に同期して発生する不快なこもり音に対し、逆位相の制御音を出力するアクティブノイズコントロールを採用タイヤでは特殊吸音材を内部に取り付けることで走行時のロードノイズや共鳴音を吸収するという、ダンロップと共同開発した特殊吸音構造タイヤを同社として初採用した
新型シーマと先代シーマのレーダーチャート。遮音性を大幅に高め、車格にふさわしい静粛性を実現したと言う路面からの入力に応じ、2つのピストンで減衰力をコントロールするダブルピストンショックアブソーバーを採用グレードと価格

(編集部:小林 隆)
2012年 4月 26日