三菱自動車、EV「i-MiEV」のパイクスピーク参戦車両「i-MiEV エボリューション」 「電気自動車クラスの優勝を勝ち取って欲しい」と益子社長 |
三菱自動車工業は5月18日、米コロラド州で開催される「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム(パイクスピーク)」(開催期間:7月3日~8日)の参戦体制を発表するとともに、参戦車両の「i-MiEV Evolution(アイ・ミーブ エボリューション)」を公開、その発表会を本社で開催した。
i-MiEV エボリューションのアンベール |
パイクスピークにはレース専用車となるi-MiEV エボリューションのほか、北米向けの電気自動車(EV)「Mitsubishi i」(日本名:i-MiEV)も出場する。前者のドライバーはチーム監督も務める増岡浩氏が、後者は女性アメリカ人ドライバーのベッキー・ゴードン選手が担う。
1シーター仕様となるi-MiEV エボリューションは、軽量化と空力性能を追求するべくパイプフレーム製のシャーシ、カーボン製のカウルを採用。ボディーサイズは4341×1900×1339mm(全長×全幅×全高)で、ベース車よりも946mm長く、425mm広く、271mm低い専用ボディーを纏う。
モーター、バッテリーといった主要部品は市販車と同じものを使うが、駆動方式はフロント1基、リア2基からなるモーターで構成される電動4WDシステムとした。モーター3基の合計出力は240kW、バッテリーの総電力量は35kWh。バッテリーはキャビンの両サイドに配置し、前後重量配分を最適化している。
なお、車両については基本構想は三菱自動車が、製作はウエストレーシングが担う。走行テストは愛知県岡崎市にある同社の技術開発センターで行っていると言う。
「電気自動車クラスの優勝を勝ち取って欲しい」と期待を寄せた益子修代表取締役社長 | 監督兼ドライバーを務める商品戦略本部 上級エキスパート 増岡浩氏 | i-MiEV エボリューションの概要を説明したEV要素研究部 部長 百瀬信夫氏 |
i-MiEV エボリューションのボディーサイズは4341×1900×1339mm(全長×全幅×全高)。駆動方式はフロント1基、リア2基からなるモーターで構成される電動4WDシステムを採用し、モーター3基の合計出力は240kW。充電方法は急速充電のみに対応し、給電ポートは運転席後部に設けられる |
発表会で登壇した代表取締役社長の益子修氏は、同社がかつて世界ラリー選手権やパリ・ダカールラリーといったモータースポーツに参戦していたことに触れ、「モータースポーツで得られた技術やノウハウは、すべて市販車へフィードバックし、耐久性・安全性はもとより走行性・走破性を高めるというクルマ作りに取り組んできた」「優れた市販車があって初めてモータースポーツ参戦車両ができ、そこで培った技術をフィードバックすることで、さらによりよいクルマをお客様にお届けすることができる」と、モータースポーツ活動と市販車の製作が表裏一体であることを述べたほか、「こうした考えのもと、EVリーディングメーカーとしてEV時代の本格的な幕開けにあわせ、ガソリン車で国際レースにチャレンジしてから50年を経た本年、EVで新たにモータースポーツ活動にチャレンジすることにした」と述べる。
参戦車両のi-MiEV エボリューションについては、「プロトタイプと言えども、EVの基幹部品であるモーターやバッテリーは市販車と同じものを使用している」と述べたほか、「フロント1モーター、リア2モーターの4輪駆動とし、直線性能だけでなくコーナーの旋回性能を鍛え上げる」(益子氏)ことで、来年発売予定のプラグイン・ハイブリッドSUV車に今回のレースで得られたデータをフィードバックすると述べるとともに、「i-MiEV エボリューションで電気自動車クラスの優勝を勝ち取って欲しいと祈念している」と期待を寄せた。
EVならではの特性を活かすことでパイクスピークを攻略できると増岡氏 |
また、監督兼ドライバーの増岡浩氏は、「コースは曲がりくねっており、平均した連続の上り勾配7%という急な上り坂になる。この中には156個所のカーブがあり、200mごとにカーブが控えることになるため、それを前提としたセッティングを行っている」「レースは1発勝負。1つのミスやトラブルも許されないし、最新の注意を払いつつも大胆に攻めていかないと勝てない」と、パイクスピークで走ることの難しさを語る。
その一方で「EVの特性を把握し、いかにそれを発揮させるか。それがこのレースのポイントになる」とし、「標高が高いパイクスピーク山頂付近では、ガソリン車だと空気が約4割薄くなる関係でパワーダウンすると言われている。その中で、EVはスタートからゴールまでまったく性能を損ねることなく走りきることができる」「EVの特性としてアクセルを踏んだ瞬間から最大トルクを発生する。多くのカーブが存在する中で、アクセルのレスポンスがよいことからこのあたりでタイムを縮められるのではないか」と、EVならではの特性を活かしたパイクスピークの攻略法を説明した。
最後に、i-MiEV エボリューションの仕上がりについて「大変順調」であることを力強く述べるとともに、「三菱自動車はこれまでラリーを中心としたモータースポーツ活動を行ってきたが、今回EVで新しいレースにチャレンジする。電気自動車クラス優勝を目指して走ってくるので、ぜひ応援して欲しい」と語った。
(編集部:小林 隆)
2012年 5月 18日