ブリヂストン、味の素と共同でバイオマス由来の合成ゴムを開発 味の素の発酵技術と、ブリヂストンの重合触媒技術を活用 |
ブリヂストンと味の素は5月31日、共同でバイオマス由来の合成ゴムを開発したと発表した。これは、味の素がバイオマスからイソプレンを生成し、ブリヂストンが重合触媒技術を用いて合成ゴム(高シスポリイソプレン)に重合したもの。両社は、この開発に関する共同会見を行った。
会場に展示された、味の素製品と、ブリヂストンのタイヤ | 味の素が生成した発酵イソプレン。実物はなくパネル展示 | 発酵イソプレンから、ブリヂストンが重合したバイオイソプレンラバー。バイオマス由来の合成ゴム |
ブリヂストンは2050年を見据えて、非枯渇資源を使用してタイヤなどの製造を行う「100%サステナブルマテリアル化」に取り組んでいる。5月18日は天然ゴム資源として「ロシアタンポポ」の実用化研究発表、23日には「グアユール」由来の天然ゴムや、バイオマス由来の合成ゴム「バイオブタジエン」などを使った開発への取り組み発表を行っている。
ブリヂストン 執行役員 タイヤ基礎開発担当 濱田達郎氏 |
ブリヂストン 執行役員 タイヤ基礎開発担当 濱田達郎氏は、同社の環境への取り組みを語るとともに、タイヤの100%サステナブルマテリアル化へ向けた課題を説明。「タイヤは、天然ゴムと合成ゴムでできており、いずれの材料もタイヤの性能を引き出していくためには必要」「(タイヤの部材としての)天然ゴムの使用量は6割」と言い、生産地域が赤道地域に偏っている一極集中の分散が課題となっている。
一方合成ゴムは、現在は石油資源由来となっているのが課題であり、味の素との共同開発は、この課題を解決するものであるとした。
味の素 執行役員 研究開発企画部長 木村毅氏 |
イソプレンの生成については、味の素 執行役員 研究開発企画部長 木村毅氏から解説が行われた。味の素は、アミノ酸の製造で知られているが、それらは植物原料に含まれる糖を微生物によって発酵させて製造されている。
イソプレンの生成には、その発酵技術が使われており、バイオマスからイソプレンを生成する菌株の開発によって可能となった。現在は、実験室レベルのため、純粋な糖からイソプレンを生成しており、生成元となるバイオマスについては未定。食べ物から作られるバイオマス(トウモロコシ由来のもの)などは、地球全体の食糧需給の観点から課題があるほか、「非可食原料を使ったプロダクトは、食品ではなく工業製品向けがよいだろうと思っている」(木村氏)と語り、何を用いるかは決まっていないとした。
味の素では、これまで水溶性物質の発酵・分離を製法としてアミノ酸を生産してきた。イソプレンは、沸点37度と揮発性の高い物質のため、空気中で発酵・分離を行っていく。この点も、味の素にとってはチャレンジングな分野となり、「新しい培養プロセスを確立することで、新しい製品群に展開したい」(木村氏)と語った。
ブリヂストンでは、味の素が生成したイソプレンを、最先端の重合触媒技術によってポリマー化。製造した合成ゴム(ポリイソプレン)を使って、100%サステナブルマテリアル化のほか、タイヤの性能向上を図っていく。現在、石油由来のイソプレンはあるものの、ナフサ生成の際の副産物として1%出てくる程度と少量のため、タイヤ製品には使われていない。製造したバイオマス由来のポリイソプレンをどのようにタイヤに使用していくかも今後の課題であるとし、「ゴムの発熱が低くなって転がり抵抗がよくなるとか、耐久性がよくなる」(濱田氏)という方向での開発・活用を考えている。
両社は2011年に共同研究契約を締結。2012年~2013年にかけて基本生産プロセスを構築していく。実際に事業化するかどうかは、2013年の6月に判断し、試験的な事業構築は2015年頃。実際にタイヤとして製造されるのは、2020年頃との見方を示した。
味の素の得意とする水溶性物質の発酵ではなく、空気中の発酵という技術チャレンジが存在する | 味の素と、ブリヂストンとの連携図 | 開発スケジュール |
(編集部:谷川 潔)
2012年 5月 31日