フリースケール、ドライバー・インフォメーション・システム用マイコン「Vybrid」
ネットワーク機器向け次世代「QorIQ」は、新アーキテクチャ採用

2012年6月20日開催



 フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンは、ドライバー・インフォメーション・システム用「Vybrid(バイブリッド)」車載ソリューション、ネットワーク機器向け次世代プロセッサ「QorIQ(コア・アイキュー)」を発表。6月20日、それらに関する説明会を報道陣向けに開催した。

フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン 車載マイクロコントローラ製品部 プロダクトマーケティング マネージャ ハニフ・サディック氏

ドライバー・インフォメーション・システム用「Vybrid」
 フリースケールは、32bit組み込みマイコンとして、Powerアーキテクチャコア、ARMコア、ColdFireコアの3ラインアップを展開しており、今回新たに発表されたVybrid車載ソリューションは、ARMコアを採用した非対称マルチコアプロセッサになる。

 Vybridに関する説明は、車載マイクロコントローラ製品部 プロダクトマーケティング マネージャ ハニフ・サディック氏から行われた。

 サディック氏は、今後自動車においては、グラフィックスで描かれたメーターパネルや、やはりグラフィックスアプリケーション化されたドライバー・インフォメーション・システム(DIS)が求められるようになると言う。DISにおいては、アプリケーション開発環境の充実も求められており、また、リアビューカメラの義務づけ法案など安全性に関わる各国の法律への迅速な対応も必要となっている。

 Vybridは、それらメーターパネルのグラフィックス描画や、リアビューカメラの映像処理、ラジオやオーディオなどのエンタテイメントシステムを制御可能なマイコンで、フリースケールの描く第4世代車載マイコンのミドルクラスに位置するもの。これより上位のプロセッサとして、クワッド/デュアルコアのi.MX6xxファミリーなどがあるが、Vybridでは、ARM Coretex-A5とCoretex-M4のデュアルコアを採用。グラフィックスコアとしては、OpenVG(GC356)と2D-ACEを搭載し、OpenVGはi.MX6xxファミリーと同様なものとなるので、開発互換性も高いと言う。

フリースケールの車載向け製品ラインアップ32bit組み込みマイコンの製品構成。Vybridは、ARMコアの中位に位置する製品
ドライバー・インフォメーション・システム(DIS)の製品動向メーターパネルなどはグラフィックスで描かれるようになる市場要求にあわせ、製品をラインアップ

 開発環境としては、フリースケールMQXやLinuxをサポートし、iPhoneやUSB、SDなどのコンシューマエレクトロニクスデバイスとの接続も可能。グラフィックスによるユーザーインターフェース設計や、音声認識エンジンなども用意すると言う。音声認識エンジンに関しては、当初英語のみを予定しており、多言語の提供は、その後になるとした。

 Vybridは、上位マイコンのi.MXラインアップと同様にARMv7アーキテクチャと、グラフィックスコアの互換性により、スケーラビリティを確保。エントリーレベルのカー・ラジオ、グラフィカルなドライバー・インフォメーション・システムの構築が可能など、費用対効果の高い集積度を持つ製品と位置づけられている。

Vybridの概要Vybridのブロックダイアグラム
カーラジオ実現時の比較。Vybridでは、より少ないチップ数でラジオを実現でき、電源も3.3Vのみで可能Vybridに関連して提供されるソフト類
パートナー企業からの提供Vybridの特徴


ネットワーキング・マルチメディア・グループ製品部長 岩瀬肇氏

ネットワーク機器向け次世代「QorIQ」
 ネットワーク機器向け次世代「QorIQ」に関しては、ネットワーキング・マルチメディア・グループ製品部長 岩瀬肇氏が説明。フリースケールは、マルチコアのネットワーク機器向けマイコン「QorIQ」を2008年に発表。2011年にはより進化した第2世代の「QorIQ AMP」を発売。次世代QorIQは、第3世代製品になる。

 この次世代QorIQの特徴は、Layerscape Architecture(レイヤースケープ・アーキテクチャ)を採用したことにあり、このレイヤースケープ・アーキテクチャにより、「プログラミングの容易性による開発の効率化、ライブラリや商用ソフトウェアなどの支援による市場投入の加速、ソフトウェア投資の活用、流用による競争力の維持が可能になる」と言う。

QorIQの変遷レイヤースケープ・アーキテクチャを採用レイヤースケープ・アーキテクチャの特徴
レイヤースケープ・アーキテクチャの3つのポイントレイヤーの構成柔軟な開発が可能

 ハードウェア面では、これまでのPowerアーキテクチャのみから、ARMコアが用意されるようになった。実際に発表された「QorIQ LS-1ファミリー」はARM Coretex-A7を、「QorIQ LS-2ファミリー」はARM Coretex-A15を内蔵しており、PowerアーキテクチャからARMコアへのシフトが明確になっている。これに関して岩瀬氏は、「ARMコアの採用によって、QorIQの幅が広がったと思ってほしい」と語り、Powerアーキテクチャ版の次世代QorIQの発売も視野に入れている。

 レイヤースケープ・アーキテクチャでは、プロセッサなどコア部分をGeneral-Purpose Prosessing Layer(GPPL)、パケット処理部分をAccelerated Packet Prosessing Layer(APPL)、I/O部分をExpress Packet I/O Layer(EPIL)と捉えており、開発の目的に合わせて最適なハードウェア構成を実現化可能としている。GPPLでは、Powerアーキテクチャ、ARMコアの違いを気にすることなく開発可能としている。

 このコア隠蔽の方法など、レイヤースケープ・アーキテクチャの詳細については、今後順次発表を行っていくとした。

QorIQ LS-1ファミリーのブロックダイアグラムQorIQ LS-2ファミリーのブロックダイアグラム

(編集部:谷川 潔)
2012年 6月 20日