トヨタ車体、補助金込みで60万円以下の1人乗り超小型EV「コムス」 セブン-イレブンが配達サービス用車両として採用 |
トヨタ車体は7月2日、1人乗り超小型EV(電気自動車)「コムス」を発売。発表会を東京 お台場のメガウェブで開催した。
コムスの名称は、そのコンセプトである「ちょっとお出かけ街までスイスイ(Chotto Odekake Machimade Suisui)」から名付けられており、1人乗りのEVとして初代コムスは2000年に発売。今回発売されたコムスは2代目となる。
発表会の冒頭に登場したコムス。ちょっとしたお買い物をテーマとした演出となっていた |
タイプ | 価格 |
P.COM | 798,000円 |
B-COM デリバリー | 773,000円 |
B-COM デッキ | 731,000円 |
B-COM ベーシック | 668,000円 |
新型コムスでは、1充電走行距離35km~45kmが50kmに延び、最高速度も50km/hから60km/hに向上。満充電までの充電時間も、8時間~10時間が約6時間へと短縮されている。
このコムスは、道路運送車両法上は第1種原動機付自転車(四輪)に、道路交通法上はミニカーに分類されるものになる。
B-COM ベーシック | B-COM デッキ | P-COM |
コクピットは、B-COM、P-COM共通 | シンプルなメーターパネル | 普通自動車免許のAT限定で運転可能 |
1人乗り | P-COMのトランクボックスは容量150L |
国土交通省は、1~2人乗りの超小型モビリティの導入に向けたガイドラインを6月4日に発表。6月18日には、このコムスなど最新の超小型モビリティを集めて試乗会を開催していた。発表会では、トヨタ車体 取締役社長 網岡卓二氏がその点に触れ、「初代コムスを発表した2000年以来、超小型車が注目される日が来るのを願っていた。ようやくコムスをはじめとした超小型車が注目される日が来た」と、このような超小型車が強く望まれる時代になったと紹介した。
トヨタ車体 取締役社長 網岡卓二氏 | コムスはトヨタ系ディーラー、2701営業所で購入可能 | 2000年に発売した初代コムス |
初代コムスと、新型コムスの比較 | コムスのコンセプト |
新型コムスの詳細については、開発を担当したトヨタ車体 製品企画センター 主査 松永豪氏が説明。開発で目指したものとして、1充電走行距離50km(JC08モード相当)、家庭用100Vで満充電約6時間、最高速度60km/h、快適な乗り心地、小型乗用車並のドライビングポジション、最小回転半径3.2mを挙げ、いずれも達成することができたと言う。
新型コムスには、個人向けのP-COM、ビジネス向けのB-COMの2つのラインがあり、B-COMには、デリバリー、デッキ、ベーシックの3つのボディーバリエーションを用意。サイズは、それぞれ若干異なるものの、P-COMで2395×1095×1500mm(全長×全幅×全高)、車重は410kgとなる。最高出力5kWのモーターを搭載し、最大トルクは250Nm。バッテリーは12V、52AhのEV用密閉型鉛電池を使用し、システム効率の高いところを使うことで、最高速度60km/h、1充電走行距離50kmを実現したと言う。
トヨタ車体 製品企画センター 主査 松永豪氏 | 開発で目指したもの | ラジアルタイヤ採用で、1充電走行距離50kmを実現 |
システム効率の高い領域を使用 | 満充電時間は、家庭用AC100Vで約6時間 |
バッテリーは、12v-52AhのEV用密閉型鉛電池を搭載 | モーターやインバーター |
ボディー構造に関しては、トヨタ車体の得意とする鋼板プレスを下部に用い、上部は剛性に配慮しながらパイプで組み立てられている。制御系も自動車と同等を目指し、CAN通信を採用して各部をコントロール。それぞれの部品ごとの信頼性も向上させたと言う。
また衝突性能に関しても、この分野では基準がないものの独自に実施。32km/hでの前面衝突試験を実施しており、「足下空間が守られ、バッテリーに問題が発生することもない」と語った。
乗り心地のために、フロントサスペンションはマクファーソンストラット式 | リアは、後端ビーム式 | ドライビングポジションは小型乗用車並だと言う |
最小回転半径は3.2m | トヨタブランドとして、各種走行試験を実施 | 32km/hの衝突試験も行っている |
ボディー骨格の構成 | 制御系のブロック図 |
松永氏は、経済性についても言及。コムスで最も安価なものはB-COM ベーシックの66万8000円となるが、クリーンエネルギー補助対象車両となり、補助金7万円の適用が可能。これを適用すると59万8000円となり、60万円以下で買えることになる。さらにフル充電での電気代は、23円/kWとして約120円。1km走行するのに約2.4円ですみ、ランニングコストも安い。また、その区分から重量税、取得税もかからず、任意保険も自動車保険にすでに入っているならファミリーバイク特約でカバーでき、車検も車庫証明も不要となっている。
道交法上最高速度は60km/hと制限されてしまうが、ヘルメットは不要で、二段階右折も必要ない。運転には普通免許が必要だが、AT限定免許であればよい。
価格は補助金込みで、59万8000円から | 原動機付き自転車(四輪)のため、税なども安い |
コムスの属するカテゴリー | コムスと軽自動車のサイズ比較 |
ボディーバリエーション | パーソナルタイプのP-COMのカラーバリエーション |
ビジネスタイプのB-COMのカラーバリエーション | アルミホイールなどのオプション装備も用意する |
活用シーン例 |
■セブン-イレブンが配達サービス用車両として採用
発表会は2部構成に分かれており、第2部ではセブン-イレブン・ジャパン代表取締役社長 井坂隆一氏が登壇。この新型コムスを、セブン-イレブンが8月上旬から新しく展開する宅配サービス「セブンらくらくお届け便」の配送車に採用することを発表した。
井坂セブン-イレブン社長は、現在の日本が高齢化社会、および女性の社会進出が進んでいる社会だと紹介。また、小売店の店舗数は減っているものの、店舗面積は増えており、店舗の大型化が進むことで、有職女性や高齢者によって買い物がしにくい環境になっていると言う。
セブン-イレブン・ジャパン代表取締役社長 井坂隆一氏 | 日本は高齢化社会に突入しており、世帯数の2割以上が65歳以上のみで構成されている |
女性の就業率も上昇。炊事時間も減少している | 小売店は減少し、店舗面積は増加。店舗の大型化が進んでいる |
それを解決するのがセブンらくらくお届け便で、すでに開始しているお食事お届けサービス「セブンミール」を包有するサービスとなる。セブンらくらくお届け便では、セブン-イレブン店内の2700~2800アイテムの中から、事前注文があった商品、もしくは店舗で購入した商品を、新型コムスに搭載して宅配料無料で購入者の自宅に届けるというもの。お食事お届けサービス「セブンミール」商品のみの場合は、500円以上の注文から無料配送(500円未満は、お届け料120円)となる。
セブン-イレブンは、配達サービスに力を入れている | 現在、食品関連のお届けサービスと展開しているセブン・ミールサービスは、注文件数、会員数とも増加している | セブン-イレブン三鷹台店の売上高変化。お届けサービス関連の売上高が増加している |
超小型EV4輪であるコムスを導入することで、セブンらくらくお届け便サービスを展開していく | サービス展開のスケジュール |
距離別のサービスイメージ | 小売店の業態の転換期にあると言う |
これにより、高齢者は手ぶらで買い物をすることができ、有職女性は店舗に立ち寄らなくても目的のものを購入して宅配してもらえることになる。セブン-イレブンでは、8月に約100店舗、9月に約100店舗でサービスを開始。年内は利用状況を検証し、2013年から本格的に全国展開していく。井坂セブン-イレブン社長は、コムスの最小回転半径3.2mという小回り能力と、屋根付きのEV4輪車であるという点を高く評価していた。
セブンらくらくお届け便サービスに使われるコムスのカラーリング |
最後に、トヨタ自動車 専務取締役 伊原保守氏が挨拶。国交省が発表した超小型モビリティの導入意義を紹介し、コムスなどさまざまな電動モビリティを発売していくことで、未来のモビリティ社会をリードしていきたいとした。
トヨタ自動車 専務取締役 伊原保守氏 | トヨタグループとしてコムスを紹介 | 国交省資料による、超小型モビリティの導入意義・効果 |
トヨタ・グローバルビジョンの紹介 | トヨタグループの目指す未来のモビリティ社会 | トヨタグループのEVなどに対する取り組み |
(編集部:谷川 潔)
2012年 7月 2日