BMWとタイムズ24、EV「アクティブE」によるカーシェアリング実験を開始

BMWのクルーガー社長(左)からアクティブEのキーを受け取るタイムズ24の西川社長

2012年7月20日



 ビー・エム・ダブリューは、タイムズ24のカーシェアリングサービスの車両として、電気自動車EV「アクティブE」を提供し、共同で実証実験を行うと発表した。実験の期間は7月20日~2013年末。

アクティブE

「i3」と同じパワートレーンを積んだEVで実験
 アクティブEはBMW「1シリーズ」の2ドアクーペをベースとしたEV。BMWのEVといえばMINIをベースとした「MINI E」があるが、MINI EはEVのテストベッドとして米ACプロパルジョンが開発した車両だったのに対し、アクティブEはBMWが開発したもの。BMWが「i3」として発売を予定しているEVと、バッテリーやモーター、コントローラーなどのコンポーネントが同じものだと言う。

 最高出力125kW(170PS)、最大トルク250Nmの同期モーターをリアアクスルに搭載し、後輪を駆動する。バッテリーは32kWhのリチウムイオンで、フロントのエンジンルームとセンタートンネルに搭載する。容量200Lのラゲッジスペースと4人分のシートを備える。

カーシェアリングに使用されるアクティブE。すべて左ハンドル仕様となる
プッシュスタートボタンに「ENGINE」の文字が残る全席レザーシート。リアシートはセパレートなので4シーター
エンジンルームにはバッテリーラゲッジスペースはモーターが“侵食”
ケーブルはラゲッジスペース床下に搭載される。通常充電にのみ対応

 実証実験には4台のアクティブEが、タイムズ24のカーシェアリングサービス「TimesPLUS(タイムズプラス)」の車両として投入される。配備されるのはタイムズステーション有楽町イトシアに2台、タイムズステーション池袋とタイムズステーション横浜山下町に1台ずつ。

 タイムズプラス車両と同様に、タイムズプラス会員になる必要があり、PC、携帯電話などで予約してから車両を借りる。料金は15分400円で、タイムズプラスのプレミアム料金と同じだ。貸出時間は8~20時に限定され、オーバーナイトパックなどは当初は用意されない。貸出・返却時は併設されているレンタカー店舗での有人対応となり、車両をチェックするのも通常のカーシェアリングと異なるところだ。

 またアクティブEは通常充電のみ対応し急速充電ができないため、充電に5時間を必要となる。1回目の貸出が何時間であれ、2回目までには5時間の充電時間をおいてから貸出されることになっており、利用者は常に満充電の状態でアクティブEを受け取ることになる。

クルーガー社長

実験はi3への2つめのマイルストーン
 ビー・エム・ダブリューとタイムズ24は20日、都内で発表会を開き、実証実験について説明した。

 BMWは2013年(日本では2014年)から「i」ブランドとしてEV「i3」やプラグインハイブリッド(PHV)スポーツカー「i8」を展開する予定だが、このiブランドでやることは、単にEVやPHVといった製品をリリースするにとどまらない。メガシティにおけるモビリティのために、4輪車以外の交通手段(自転車やバイクなど)も展開するし、販売方法、サービス提供といった領域までカバーする。

 ビー・エム・ダブリューのローランド・クルーガー社長は「(i3、i8のような)新しいドライブトレイン、新しいモデル、新しい技術は、新しいモビリティサービスに直結しているものだ。これは日本のみならず全世界でやっていくものだ。BMWはすでにドイツで『ドライブナウ』というモビリティサービスを行なっている。これはカーシェアリングサービスというだけではなく、コミュニティや自治体、政府と協力しながら渋滞の緩和に貢献する努力をしている」とiブランドのコンセプトを説明。

 「この実験はiブランド導入のための2つめのマイルストーンだ。1つめはMINI Eによる実証実験だ。アクティブEのドライブトレインとバッテリーはi3の量産モデルに非常に近い、いわば試作機だ。i3導入に一歩近づいたと言える。アクティブEのフィードバックを将来のモビリティサービスやi3に活用する」とした。

 ビー・エム・ダブリューの関係者によれば、日本でもiブランドのコンセプトに則ってさまざまなサービスなどを展開するが、今回の実験はその嚆矢となる。このほかに、車両の新たな販売方法などが用意されているようだ。

アクティブE、MINI Eはi3へのマイルストーンドイツではカーシェアリングサービスをすでに展開
ビー・エム・ダブリューは6月単月でプレミアムブランド販売台数No.1を獲得X5のクリーンディーゼルエンジン比率は約80%3シリーズと5シリーズのセダンとツーリングにクリーンディーゼルを導入する

 

西川社長

本当はみんなクルマが欲しい
 タイムズ24は2009年にタイムズプラスとしてカーシェアリング事業に参入した。現在は約4200台のカーシェアリング車両を展開しており、約150台のMINI、1シリーズなどのBMW車両を導入している。

 パーク24の西川光一社長は「車を使うということは購入するかレンタカーで借りるかという2つの選択肢しかなかったが、カーシェアリングは3つめの選択肢。レンタカーよりも短い時間、チョイ乗りといったニーズに対応できる新しい使い方の提供」とカーシェアリングを紹介。カーシェアリングは長期的には1500~2000億の市場規模になるという予測に、「実感値に近く非常に大きな手応えを感じている」と述べた。

 またカーシェアリングは若い人達のクルマ離れ対策にもなるという説を展開。「アンケートを取ると、『クルマを欲しい』という人の割合は若い人も30代以上の人もそんなに大きくは変わらない。しかし車に対するイメージは、30代以上は『自由』『プライベートな空間』『自己実現』といったイメージが強いが、若い人には経済的な負担というのが、クルマの圧倒的なイメージ。本当はみんなクルマが欲しい」であり、「クルマを持っていない時からクルマに触れる機会を作ってあげないと、40代、50代になって経済的な余裕が出てきた時に、やはりクルマを買わないことになりかねない。若いうちに、クルマというものは快適だし便利だし自由だ、ということに触れておけば、将来的には今は買わない若い人達も購入層に変わっていくのではないか」とした。

駐車場の機械販売から始まり、駐車場運営、ロードサービス、カーシェアリングへと事業を拡大。駐車場はオンライン化することでクレジットカードや電子マネーの利用、満空情報のリアルタイムでの提供などを可能にした。「自動車や道路が高度化していく中で、駐車場も高度化しなければ、三位一体の快適な交通環境は提供できない」と西川社長は言う
日本のカーシェアリング市場の拡大はタイムズプラスが牽引した
「クルマを買いたい」と思う人の割合は若い人も30代以上も変わらないが、負担感には大きな差があるタイムズプラスはすでに約150台のBMW車を導入している

(編集部:田中真一郎)
2012年 7月 20日