首都高、震災時の緊急対応訓練を公開 大地震発生直後、道路上にトラックが横転して道路をふさぐ |
首都高速道路は8月31日、震災時における緊急対応訓練を実施、報道陣に公開した。場所は首都高湾岸線辰巳JCT(ジャンクション)高架下の「辰巳補修基地」。この日は午前中に災害対策本部設置等の訓練が実施されたのち、午後に転倒車両の引き起こしなど現場での対応訓練を実施し、その様子を公開した。
同社では2009年10月に「大地震の発生を想定した業務継続計画(BCP)第1版」を制定していたが、その後発生した東日本大震災での経験を踏まえ「大地震の発生を想定した業務継続計画(BCP)第2版」を2011年10月に制定。今回の訓練はそれを受けて実施されたもの。
この業務継続計画は、道路が大震災によって損害を受けても災害対策業務を実施することで速やかに緊急交通路として利用可能とするためのもので、震災規模は東京湾北部地震(M7.3)を震源とした最大震度6強の地震を想定している。
主な改定内容は、本部体制の強化や、半径10km以内に居住する約270名が初期参集要員として震度5強から参集し、すべての管理職、技術系社員を参集要員に指定するなど人員参集体制の強化のほか、料金所の入り口封鎖や滞留車両を概ね3時間以内に排出すること、首都高内の点検優先路線(約88km、全体の約30%)に対しての高架下点検を約3時間で行なうこと、気象庁・自治体と連携した津波への対応強化など、道路を緊急交通路として利用するためのさまざまな要点が改定されている。そのほか、12時間以内での障害物の撤去や24時間以内での最低限の緊急交通路としての確保なども重要事項として上げられている。
訓練はまず、大地震発生直後、道路上にトラックが横転して道路をふさいでいる状況から開始。横転したトラックを交通パトロールカーが発見すると対策本部は速やかにレッカー会社への出動を要請し、これを撤去した。
サイレンを鳴らしながら横転車両がいる現場に到着 | 車輪部分に枕木を設置して準備。転倒してるトラックは4t車 | クレーンは前後に2つ搭載している。まずは前方のクレーンの展開準備 |
クレーンで車体の前方を持ち上げる | 車体にチェーンを巻き付ける | 持ち上げた隙間からベルトを通す |
一旦車両を下ろす | 次に後方のクレーンを展開してトラックの引き起こし準備 |
先ほど通したベルトにクレーンを繋げる | たるみを調整しながら少しずつクレーンを巻き上げていく |
無事に引き上げが完了 | 今回引き起こしに使用したクレーン車 |
その後、交通パトロールカーが道路を点検中に路面に段差を発見し、対策本部に報告。対策本部は応急処置によって道路が通行できるかどうかを確認するため、高架下からの構造物点検を指示する。なお、ここでは訓練のため施設内にある段差を実際の道路として想定している。
道路上に発生したと想定した段差。高さは約20cm | 交通パトロールカーが到着 |
段差の大きさを計測 | 対策本部へ状況を連絡する |
指示を受けて出動した緊急応急会社が高所作業車を利用して高架下から構造物の点検を実施。道路の構造物自体には大きな損傷がなく、応急処置によって緊急車両の通過が可能であることを対策本部に報告した。
交通パトロールカーに先導されて到着した高所作業車 | ブームの展開準備 | 高架下の点検を実施。高さは約10mほど |
緊急応急会社の社員が点検結果を報告する | 高所作業車から見た首都高 | 黒い部分が点検のチェックポイントとなった高架下にある緩衝材 |
その後、対策本部は段差の擦り付けを指示。擦り付けとは廃材などを用いてとりあえず緊急車両が道路を通過できるように段差を緩和する応急処置を行なうこと。段差が発生した現場に作業車が到着すると廃材や土嚢、鉄板を用いて段差の擦り付け作業を実施。作業が終わると実際にその上を作業車が通過し、通行が可能であることを示して訓練が終了した。
先ほどの段差の現場に到着 | まずは現場の状況を確認 |
廃材を運び、積み上げていく | 土台がほぼ完成 |
土台の上に鉄板を載せる |
鉄板の位置を微調整 | 隙間に土嚢を敷き詰める | 段差の擦り付け作業が終了 |
まずは作業車が通行できることを確認 | その後、交通パトロールカーも無事に通行できることを確認して訓練が終了した |
(清宮信志)
2012年 9月 3日