ピレリのグリーンパフォーマンスタイヤ「Cinturato P1」試乗記 |
ピレリが2012年に日本市場投入したグリーンパフォーマンスタイヤ「Cinturato P1(チントゥラートP1)」。チントゥラートは、同社のタイヤラインアップの中で、とくに環境面などを重視した製品で、転がり抵抗の低減や、CO2排出量の低減、静音性の改善を行いつつ、運転の楽しさと安全性と性能を融合したものとしている。
チントゥラートP1。サイズによって、4リブパターンと、5リブパターンがある。この製品は、4リブパターン |
チントゥラートP1は、チントゥラートシリーズの中でも、コンパクトカー~中級セダンなど向けとなっており、サイズは175/65 R15 84H~245/40 R19 98Wの23サイズをラインアップしている。
モータージャーナリスト 斎藤聡氏による「チントゥラート P1」の海外試乗記をお届けする。
ピレリからハイテク・プレミアムタイヤ、チントゥラートP1が発表・発売され、アジアパシフィックマーケットに向けた試乗会が、上海近郊の杭州ナインドラゴンヒルズで行われた。
欧州では一足早く発表されているのだが、あえてもう一度中国で発表試乗会を行ったのは、このタイヤが中国山東省のYanzhou工場で生産されるタイヤであり、アジアパシフィックマーケットでのシェア拡大を狙って開発されたタイヤであるからだ。
ピレリは、拡大路線の一環として中国でのプレゼンス強化を図っている。ピレリは2005年に設立されて以来、すでに4億ドルの投資を行っており、さらに2014年までの2億ドルの追加投資を行う予定だ。この投資の大半は乗用車用タイヤの生産能力の拡張に向けられ、2011年に410万本だった生産能力を1000万本/年まで引き上げる。これらの投資によってYanzhou工場はピレリの工場の中で最大規模になる予定だと言う。
これは中国を中心としたアジアパシフィックマーケットの大幅な成長が見込まれているからであり、ここでピレリがハイパフォーマンスタイヤ市場のNo.1のシェアを獲得することは、世界におけるハイパフォーマンスタイヤのシェアでトップの地位を盤石のものとすることを意味している。
つまり、今のピレリにとって、重要拠点の1つが中国であり、あえてアジアパシフィックマーケットに向けた試乗会を行った理由はその辺にあるのだ。
さて、日本市場にも投入されたチントゥラートP1だが、いったいどんなタイヤなのだろうか。チントゥラートの名前が示すとおり環境性能に配慮したエコタイヤでありながら、単なるエコタイヤではなく、プレミアムパフォーマンスをキーワードに開発されている。安全性、ドライビングの喜び、環境への配慮、汎用性の4つのキーとなる特性を備えているとする。
具体的には、ドライおよびウェットでのグリップ性能やロードホールディング性能を高め、制動距離の短縮が図られているほか、タイヤの軽量化が行われるとともに、転がり抵抗の低減も図られている。CO2排出の抑制、ロードノイズも低減、そして快適性の向上にも配慮されている。
タイヤサイズは15インチ~19インチの23サイズ。速度記号はH(最高速度210km/h)~W(同240km/h)まで用意されており、タイヤの幅によって4リブと5リブのトレッドパターンデザインに分かれている。
まず試乗したのは245/45 R18を装着したアウディ「S5」でのスラロームステージ。こちらは5リブパターンで、スポーティなキャクラター。走らせた印象は全体にマイルドな乗り味だった。ケース剛性を高めにしてダンピングを強めにしたカチッとした乗り味ではなく、全体にしなやかでマイルドな乗り味になっている。ハンドルを切っても鋭くシャキッと動くのではなくスイーッとしなやかに曲がる感じ。それでもS5のパワーをしっかり受け止めるだけのキャパシティを持っている。
乗り心地もソフトというほど柔らかくはないが、しなやかで尖った突き上げを上手く吸収して角の取れた乗り心地を提供してくれる。
興味深く感じたのは、グリップの出方。一般的には転がり抵抗を小さくしたタイヤはタイヤが路面をとらえるグリップ感がどうしても薄くなりやすいのだが、チントゥラートP1はタイヤのしなやかさを上手に使って路面を捉えているような感触があり、タイヤが路面を捉えるロードホールディングがしっかりと感じられる点もよい。
クルマの性能をそのまま伝えるというよりは、少しマイルドにするので、アウディS5でいえばそのスポーツ性を強調するというより、超ハイパフォーマンスカーをマイルドテイストにして乗ることができる、そんなタイヤになっている。
実はもう1台、中国製ジェッタ(?)にも試乗した。こちらは195/55 R15サイズを装着していた。4リブの大人しいデザインで、走らせた印象も高級なベーシックタイヤといった印象。マイルドな乗り味は共通で、ハンドルを切り出したときの応答や、乗り味は穏やか。
低速では多少コツコツしたトレッド面の硬さが感じられるが、60km/hを超えるくらいの速域になると硬さが消え、しなやかな乗り心地が表に出てくる。
アクセルを全閉にして惰性で走らせた時の転がり抵抗感の小さい感触は、明らかに低コロ(低転がり抵抗)タイヤのそれであり、具体的な数値は判らないが、一般的なこの手のミドルレンジのタイヤと比べると、燃費への貢献度はかなり期待できそうだ。
乗り味がマイルドな分、横方向への踏ん張り感も少なめで、スポーティさよりもコンフォートタイヤのキャラクターが強く出ている印象だ。タイヤが滑らかに転がる感触やノイズの小ささなどにより安っぽさがないのがよいところで、ベーシックタイヤからのグレードアップとしてお勧めできるのではないかと思う。
5リブと4リブで若干キャラクターに差があるように感じたが、いずれにしてもマイルドさは共通している。尖ったクルマをマイルドに乗れる5リブ、コンパクトカーで1グレード上の乗り心地を提供してくれる4リブというキャラクターと持っているタイヤだろう。
(斎藤 聡)
2012年 9月 18日