理化学研究所、スパコン「京(けい)」の供用開始見学会
ダンロップがタイヤ開発に用いる世界トップレベルのコンピュータ

スーパーコンピュータ「京」

2012年9月21日実施



 理化学研究所と高度情報科学技術研究機構は9月21日、スーパーコンピュータ「京(けい)」が9月28日から供用開始となることを記念して関係者向け見学会、記念式典を実施した。

 スーパーコンピュータの世界では、毎年2回、6月と11月にTOP500と呼ばれる性能ランキングが発表されている。京は、2011年の6月と11月に世界一の計算速度を持つスーパーコンピュータとして1位にランクイン。2012年6月のランキングでは2位となったが、日本のコンピュータが世界一になったのは、2002年の「地球シミュレータ」以来のことになる。

 京は、理化学研究所と富士通が共同で開発し、2012年6月に完成。名前の由来となっている「京」は、万進法(4桁ごとの単位)の京からきており、1秒間に1京回の計算(10Peta FLOPS[ペタ フロップス])の実現を目指したため。実際、2011年11月の1位獲得時の性能は、10.51Peta FLOPSを記録している。

 京は、生命科学の探究、新物質・エネルギーの創成、地球変動予測、次世代もの作りに利用されていく。すでに京の利用を表明しているのは、ダンロップ、ファルケンなどのタイヤブランドを展開している住友ゴム工業。同社は、地球シミュレータを活用して、ナノ(10億分の1)レベルでの新材料開発技術「4D NANO DESIGN(フォーディ ナノ デザイン)」を推進しており、10Peta FLOPSという性能を持つ京を活用することで、新素材開発を加速していく。

 京の本体は、ポートアイランド(兵庫県神戸市中央区港島)にある計算科学研究機構内に収まる。ポートライナーの最寄り駅も、2011年7月1日より「京コンピュータ前」駅で、神戸空港の対岸という立地。

京の本体が収まる計算科学研究機構建物のすぐ近くには、ポートライナーの「京コンピュータ前」駅
駅と計算科学研究機構の位置関係対岸には神戸空港が見える。ポートライナーで1駅の区間になる

 この建物の中に、京を構成する864台の筐体(システムラック)が整然と並び、1つのラックの中には、CPUが4つ載ったシステムボードが24枚入っている。つまり8万2944個のCPUで構成されていることになる。

京の見学会。柱のない1フロアに864の筐体が並ぶ京の筐体理化学研究所と富士通のロゴが並ぶ
展示用の京の筐体。上部と下部にシステムボードが12枚ずつ収まる。中央部はストレージやI/Oなど上部のシステムボード。システムボードから伸びるパイプは水冷用中央部。ストレージや電源、I/Oまわり

 1つのCPUは、45nmのプロセスルールで作られたSPARC 64 VIIIfx(8コア、128Giga FLOPS)で、各CPUに対して8枚のメモリモジュールと、ネットワーク用のICC(インターコネクトコントローラ)を組み合わせて、1ノードを構成。このノードが4組搭載されたシステムボードは、CPUとICCの冷却に水冷を、メモリモジュールの冷却に空冷を採用するハイブリッド冷却方式を採用。これにより、安定した稼働環境と、高密度実装を実現している。

システムボード。左に縦に4つ並ぶのがICC。CPUは両脇にメモリモジュールを配置CPUパッケージ。ヒートスプレッダを装備CPUが焼き込まれたウェハー。45nmのプロセスルールで製造されている。ここからCPUが切り出されていく

 見学会では、計算機フロアにずらりと864台並ぶ京の筐体を見られ、展示用のシステムボードやCPU単体を用意。それらを短い時間だが見て回れるようになっていた。

 なお、10月20日には京の収まる計算科学研究機構と、理化学研究所 神戸研究所の一般無料公開が行われる。興味のある方は、訪れてみるのもよいだろう。

計算科学研究機構の建築模型10月20日の一般公開告知

(編集部:谷川 潔)
2012年 9月 21日