ピレリ、F1参戦を武器にハイパフォーマンス市場への浸透を図る
F1日本グランプリ開幕を前に説明会を開催

F1に供給されるピレリのタイヤ、イエローのラインはソフトタイヤ

2012年10月2日開催



 今週末、三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキットにおいてF1世界選手権 日本グランプリが開催される。すでにF1サーカスの面々は続々と来日しており、今週の前半はスポンサー関連の多くのイベントが東京で行われている。F1にタイヤを独占供給するピレリもその例外ではなく、10月2日にイタリア大使館においてF1日本グランプリに向けての記者会見を行った。

 この中でピレリ アジアパシフィック マーケティングダイレクター ジョバンニ・アンジェロ・ポンツォーニ氏は「F1からフィードバックされた技術は特にハイパフォーマンスタイヤに活かされており、マクラーレンやポルシェのスーパーカーにも採用されている。そうしたOEM向けの好調さをアフターマーケットでの販売にもつなげていきたい」と述べ、ピレリのプレミアムセグメントでの強さをアピールした。

ピレリは世界第5位のシェアを持ち、高級車部門ではトップ
 例年(といっても今年で2回目だが)、ピレリのF1日本GPに関連した記者会見はイタリア大使館で行われている。これはピレリがイタリアのメーカーであるためで、イタリアとしても国家をあげて販売促進などを後押しをしているということを示している。今回の記者会見の冒頭には、駐日イタリア大使のヴィンチェンツォ・ペトローネ氏が登場し、「ピレリはF1での活動などもあり、日本でもよく知られているブランドの1つになっている。世界の市場で5位のマーケットシェアを持ち、フェラーリ、マセラティ、ランボルギーニなど高級車向け部門では1位のブランドになっている」と述べ、ピレリはイタリアが誇るブランドであり、その実力をアピールした。

 続いて登場したのは、ピレリジャパン 代表取締役社長 マルコ・エッリ氏。「ピレリは140年の歴史を持つ企業だが、そのうち100年はモータースポーツに積極的に取り組んできた歴史がある。そして今、F1などのモータースポーツに積極的に取り組むことで、高級車向けのタイヤ開発も大いに促進されている」と述べ、F1活動による研究開発が、ピレリが得意としている高級車向けのタイヤにも使われているとアピールした。

駐日イタリア大使 ヴィンチェンツォ・ペトローネ氏ピレリジャパン 代表取締役社長 マルコ・エッリ氏

高級車向けタイヤの好調さをアフターマーケットに
 引き続き、ピレリ アジアパシフィック マーケティングダイレクター ジョバンニ・アンジェロ・ポンツォーニ氏がピレリタイヤのマーケティング戦略に関しての説明を行った。ポンツォーニ氏は、ピレリは特にプレミアムセグメント(高級車向け市場)に力を入れてマーケティングを行っていると述べ、それを支える要素として工場施設、OEMビジネス、研究開発、ブランディング戦略、製品展開の5つを挙げた。

 工場施設に関しては「グローバルに13の製造施設を持っており、それぞれのマーケットのニーズに合わせたタイヤを製造することが可能になっている」(ポンツォーニ氏)と説明。なお、F1のタイヤはトルコのイズミルにある工場で生産されており、トルコから世界中のサーキットへと輸送されている。

 OEMビジネスという観点では、世界の名だたるスーパーカーにピレリのP Zeroが採用されていることを紹介。ポンツォーニ氏によれば、マクラーレン P1、ポルシェ 911 カレラ 4S、アストンマーティン バンキッシュなどの高級スポーツカーにピレリのタイヤが採用されているほか、フェラーリ、BMW、アウディ、メルセデス・ベンツ、レンジローバーなどの高級車にも採用されており「こうしたOEMメーカーに採用されることがブランドイメージや技術の向上につながり、それがアフターマーケットでの販売にもつながっていくと考えている」と、その戦略を説明した。

ピレリ アジアパシフィック マーケティングダイレクター ジョバンニ・アンジェロ・ポンツォーニ氏

 研究開発という観点では「研究開発には、我々の売り上げの3%以上を投資するなど、同業他社よりも多くの投資を行っている」(ポンツォーニ氏)と述べ、F1タイヤや市販向けタイヤの開発へ積極的に投資。また、ブランディング戦略では、ご存じF1参戦を始め、長友佑都選手が在籍していることで一躍日本でも有名になったイタリアセリエAのサッカーチーム“インテルミラノ”へのスポンサードなどで知名度アップを図っている。

 製品展開という意味では、P Zeroシリーズのようなプレミアムタイヤだけでなく、いわゆるエコタイヤに関しても今後積極的に取り組んでいきたいと語った。エコタイヤに関しては、乗用車向けのブランドである「Cinturato(チントゥラート)」シリーズとして研究開発を進めてきており、先日日本でも「Cinturato P1」(関連記事)を投入したことなどをアピールした。

ピレリのマーケティング戦略には5つの柱(工場施設、OEMビジネス、研究開発、ブランディング戦略、製品展開)がある世界各国にある製造施設。新たにメキシコとロシアが追加されている高級車でのピレリの装着率は高まっている。今年発売される新しいスーパーカーにも装着されている
モータースポーツやF1での経験を市販用タイヤにフィードバック研究開発には売り上げの3%強と競合他社に比べて高い割合で投資を行っているF1のウェットタイヤには、今年より乗用車向けのブランドである「Cinturato(チントゥラート)」を採用している
インテルミラノへのスポンサードなどさまざまなブランディング活動を行っている持続可能な社会(環境志向社会)の実現に向けた取り組みをピレリも行っていくCinturato P1などのエコタイヤの投入を積極的に行っていく


ピレリ モータースポーツ部長 ポール・ヘンベリー氏(左)とモータースポーツジャーナリスト 小倉茂徳氏(右)

ヘンベリー氏は、地元のヒーロー小林可夢偉選手の活躍に期待を表明
 続いて登壇したのは、ピレリのモータースポーツを統括するモータースポーツ部長のポール・ヘンベリー氏と、モータースポーツジャーナリストの小倉茂徳氏。ヘンベリー氏の発言を小倉氏が逐次通訳する形で日本GPに向けた展望などが説明された。

 ヘンベリー氏は「今年のF1シーズンは最初の7戦ですべて違う優勝者が誕生するなど、近年にないエキサイティングなシーズンになっている。今年ピレリはタイヤに関しても変更を行うことで、こうしたシーズンに貢献できていることを嬉しく思う。あまりにエキサイティング過ぎておしかりを受けるほどだが」と冗談を交えながら、タイヤ戦略が今年のF1シーズンを語る上で欠かせない要素になり、かつ激しい競争が実現できていることを歓迎していると述べた。

 その上で、F1日本グランプリでの活躍が注目される小林可夢偉選手について「彼は昨年の予選でもよい順位を獲得した。そして何よりも重要なことはザウバーが何度も表彰台に上がれるポテンシャルを持っているマシンだということだ。かなりいいところにいけるのではないだろうか」と述べ、日本のローカルヒーローである小林可夢偉選手の活躍に期待を表明した。

 ヘンベリー氏個人としても鈴鹿のレースは楽しみにしているそうで、「鈴鹿のファンは非常に情熱的でF1サーカスの面々にとっても楽しみにしているイベントの1つ。ぜひとも晴れてほしいと願っている」と述べ、F1屈指の名サーキットと言われている鈴鹿サーキットでのバトルを楽しみたいと語った。

アイススケート安藤美姫選手もF1の迫力にはビックリ
 ヘンベリー氏の後には、ピレリの冬用タイヤのイメージキャラクターを務めるアイススケートの安藤美姫選手が特別ゲストとして登場。昨年のF1日本グランプリに参加したときの体験などについて語ってくれた。安藤選手は「昨年初めてF1を見たが、テレビでは感じられない音の大きさやレースの迫力にびっくりした。チームの団結力の重要性やちょっとしたミスが大きな順位変動につながる点などが勉強になった」と述べ、F1を大いにエンジョイした様子だった。

 記者会見の最後にはピレリジャパン 代表取締役社長 マルコ・エッリ氏が大好きだという歌手三浦大知氏が登場し、得意のダンスと歌を披露し、詰めかけた来場者を沸かせていた。

アイススケートの安藤美姫選手(右から2人目)が特別ゲストとして登場ピレリの2012年版の冬用タイヤのポスターには、昨年に引き続き安藤選手が登場
エイベックス所属の歌手三浦大知氏が、歌とダンスのパフォーマンスを披露三浦氏のパフォーマンスの前には、参加者全員での記念撮影も行われた

(笠原一輝)
2012年 10月 3日