ブリヂストン、REVO GZを氷上で超える新スタッドレスタイヤ「ブリザック SI-12」発表会 「氷上グリップ向上技術のシンボル」として、北海道地区限定発売 |
ブリヂストンは10月9日、スタッドレスタイヤの新製品「BLIZZAK SI-12(ブリザック エスアイジュウニ) 」を発表した。発売サイズは195/65 R15の1サイズで、価格はオープンプライス。10月26日から北海道地区のブリヂストンタイヤショップ店頭のみで発売される。
ブリザック SI-12 |
ブリザック SI-12のトレッドパターン。回転方向指定を持つ |
近年のブリヂストン製品に採用されていた非対称形状は非採用 | 回転方向指定マーク |
サイド部分 | 排水性を確保するため、2本のストレートグルーブを持つ |
同日、ブリヂストンはこのブリザック SI-12に関する説明会を開催。同社が現在展開しているスタッドレスタイヤ「BLIZZAK REVO GZ(ブリザック レボ ジーゼット)」「BLIZZAK REVO 2(ブリザック レボ ツー)」と、ブリザック SI-12の違いについて解説をした。なお、SI-12の製品名は、Special ICE 2012 modelから名付けられている。
ブリヂストンタイヤジャパン 消費財タイヤ事業統括本部長 大森繁氏 |
■北海道地区の店頭販売のみ、出荷本数は少量?
販売戦略については、ブリヂストンタイヤジャパン 消費財タイヤ事業統括本部長 大森繁氏から説明が行われた。大森本部長は、1988年に発泡ゴム(マルチセルコンパウンド)を搭載して誕生したスタッドレスタイヤ「ブリザック」24年の歴史にふれ、ブリザックは発泡ゴムの進化とともにあったと紹介。最新のレボ発泡ゴムGZを搭載するREVO GZでは、レボ発泡ゴムZを搭載するREVO 2に対し氷上ブレーキ性能を12%アップしているほか、ウェットやドライ性能など総合的に性能を引き上げている。
ブリヂストンは、REVO GZを「プレミアムブリザック」として、REVO 2を「メジャーブリザック」と位置づけて販売しており、北海道、東北の主要5都市の一般ドライバー装着率は47.6%、北海道札幌市のタクシー装着率は70.9%になると言う。
その上で、ブリヂストンスタッドレスタイヤユーザーのアンケート結果を紹介。居住地が非降雪地域、降雪地域のいずれのユーザーも、コア性能であるアイス性能のさらなる向上を望んでおり、とくに降雪地域ではコストバランスよりも、氷雪上性能を最優先する声があるとした。この声は、毎年20%程度は存在しているとのことだ。
ブリザックの歴史 | REVO GZは、REVO 2に比べて氷上ブレーキ性能を12%向上 | ブリザックの装着車は多く、高いシェアを持つ |
ブリザックユーザーに対する意識調査。アイス性能を望む声が一番 | 降雪地域では、アイス性能のみを重視する声が2割あると言う |
ブリザック SI-12は、そうした「氷雪上性能を最優先」するユーザーに向けた製品となり、「氷上グリップ向上技術のシンボル」として登場する。特徴としては、プレミアムブリザックであるREVO GZより、氷上ブレーキ制動距離を19%短縮しているものの、ライフや直進安定性が若干低下するなど、ある意味割り切ったタイヤとなっている。
発売サイズは195/65 R15の1サイズで、発売地域は北海道地区のブリヂストンタイヤショップ限定、しかも店頭販売のみ。通信販売は行われず、必ず店頭で購入する必要があるとのことだ。具体的な今年度の出荷本数は発表されなかったが、「北海道にある約120店のブリヂストンタイヤショップに、各店20本程度」とのことなので、2012年~2013年シーズンは少数にとどまるものと思われる。
ブリザック SI-12の概要 | タイヤ業界として、冬用タイヤへの履き替えを呼びかけていく |
ブリヂストンタイヤ 開発第2本部長 牛窪寿夫氏 |
■オクタゴンパタンと親水性発泡ゴムが性能向上の決め手
ブリザック SI-12に投入された技術については、ブリヂストンタイヤ 開発第2本部長 牛窪寿夫氏が解説。牛窪本部長は、スケートリンクで実験したプリウスの映像を上映し、20km/hからの制動時で、SI-12はREVO GZに比べ約1台分短く止まると説明。また、加速時もREVO GZが1秒03かかって初期トラクションを得られるのに対して、SI-12では0秒12で初期トラクションを得る映像、旋回時の旋回半径の違い、同じ旋回半径を得るためのステアリング操舵角など、いずれもSI-12が優れる映像を公開した。
この優れた氷上性能を得るために投入された主な技術が、「オクタゴンパタン」と「親水性発泡ゴム」になる。オクタゴンパタンは、八角形のブロックから構成されるトレッドパターンで、2本のサイプが入った八角形のブロックを全面に敷き詰めている。従来のスタッドレスタイヤに比べ、小さなブロックとすることで、氷上の水が湧きにくくなり(氷りが溶けにくくなり)グリップ力が向上。また、小さなブロックのため氷路面の追従性も高く、接地面積が向上している。
牛窪氏によると、本来はこの八角形のブロックのみでパターンを構成すると、さらなる氷上性能が確保できるとのことだが、シャーベット路面やウェット性能確保のため、2本のグルーブ(溝)を配置。さらに、両サイドのブロックには、排水用の溝が刻まれ、排水性を向上させるため回転方向指定を持つパターンとなっている。
制動力の差。20km/hからの制動で、1台分の差がついた | トラクションを得るまでの時間差。SI-12のほうが早い |
旋回半径の差。同じステアリング操舵角だとSI-12のほうがコンパクトな半径を描く | 同じ旋回半径を描く場合のステアリング操舵角の差。半回転以上の差が生じている |
親水性発泡ゴムは、従来の発泡ゴムに対して、親水性コーティングを施した上で、より高い吸水性能を実現している。親水性コーティングは、発泡ゴムの穴を生成する工程で行われるため、タイヤが摩耗しても、新しい穴には常に親水性コーティングが行われている状態となる。
これらによりブリザックSI-12はREVO GZに対し、氷上ブレーキ制動距離は19%短縮、氷上加速タイムは21%短縮、氷上旋回タイムは12%短縮することに成功した。
八角形のブロックから構成されるオクタゴンパタン | 一般的なスタッドレスのブロックパターンに比べ、水が湧きにくいと言う |
ブロックが小さいため、氷路面への接地性も高い | 設置面積の差 |
従来タイプの発泡ゴムと、親水性コーティングを行った発泡ゴムの吸水性の差。より多くの水を取り込めている |
一方、REVO GZに比べてSI-12は、ウェット性能、ドライ性能、ライフ性能が劣ると言い、正確な数値ではないものの、ドライ時のライフ性能で、約10%程度劣るとのこと。ただ、ライフ性能以外の、ウェット性能、ドライ性能はREVO 2同等となっている。
【お詫びと訂正】記事初出時、SI-12のライフ性能をREVO GZの約10%程度としておりましたが、正しくは「約10%程度劣る」となり、REVO GZ比90%程度になります。お詫びして訂正させていただきます。
また、転がり抵抗係数については、「(RRCが)9.0くらいで、ラベリング制度のAの下、Bの上くらいのところ」(牛窪氏)とのことだが、スタッドレスタイヤにおいてはラベリング制度は導入されておらず、転がり抵抗性能よりもアイス性能を主眼において開発したタイヤであるとした。
そのほか、ブリザックSI-12では、トレッド面の表面処理に新技術の「マイクロテクスチャー」を採用しており、これが初期のグリップ確保に貢献するものであると言う。
REVO GZに比べ、氷上での性能を向上 | SI-12は、REVO GZに対してウェット路面やドライ路面で劣るものの、REVO 2に対しては同等となっている |
SI-12は、北海道の店頭のみでの販売という販売方法や、その販売本数から、生活形態が雪国、しかも降雪時期はドライ路面ではなくアイス路面となるユーザーへ向けたタイヤとなる。ライフ性能に関しても、「ドライ路面では差があるものの、アイス路面では大きな差はない」とのことなので、REVO 2のドライ性能に満足しつつ、アイス性能に物足りなさを感じていた人ならば、要検討のタイヤになるだろう。何より、北海道の1店舗あたり約20本(つまり、クルマ5台分)という販売計画は、季節商品であるスタッドレスタイヤの場合、すぐに品切れという心配もある。
北海道においては、すでに冬タイヤ商戦は始まっているため、「とにかく最高のアイス性能を」と考える人は、要検討のタイヤだろう。価格はオープンプライスとなるため、北海道のブリヂストンタイヤショップまで問い合わせてみてほしい。なお、ブリザック SI-12は性能特化型のタイヤであり、ブリザック REVO GZ、REVO 2は従来どおり併売される。SI-12の適合サイズユーザーにとっては、スタッドレスタイヤの選択肢がまた1つ増えたことになる。
(編集部:谷川 潔)
2012年 10月 10日