「2012全日本電気自動車グランプリシリーズ」最終戦が富士スピードウェイで開催
シーズン最終戦にもかかわらず、新しいエントラントが続々参戦!

2012全日本電気自動車グランプリシリーズ第5戦・富士

2012年10月28日開催



 10月28日、富士スピードウェイ(静岡県)で開催された全日本電気自動車グランプリ(JEVRA)シリーズ第5戦は、14台のエントリーを集めて開催された。

 このシリーズは、市販車ではモーター出力によってテスラ ロードスターがエントリーする出力100kW以上の「EV-1」、日産リーフ勢が出場する「EV-2」、そして出力50kW未満の三菱自動車i-MiEV等が対象となる「EV-3」の3クラスに分けられる。他にも、市販車を改造したコンバート(EV-C)クラスや、開発車両やレース用車両などが参戦するプロトタイプ(EV-P)クラス、オープンホイールマシンが参戦できるEV-Fクラスも用意されている。今シーズンは、EV-CクラスにBMWミニEが、そしてEV-PクラスにリーフニスモRCが参戦している。

 このシリーズはレース距離50kmで争われる。50kmのレースというと、通常ならばスプリントレースである。しかし、現在のEVにとっては非常に厳しい耐久レースに様変わりする。限られたエネルギーでどこまで速く走り切るか、毎戦電欠ギリギリの激しいレースが展開される。

 今回はシリーズ初の富士スピードウェイでの開催となった。全長4.563km(標高差40m)の富士のコースは、後半(ダンロップコーナーから)が常に登りのセクションとなるため、徹底的に抵抗を減らした効率のよいドライビングと、電力をどこでどのように使うのかというバッテリーマネージメントが非常に重要となる。

 すでにこれまでの4戦で、いくつかのクラス・チャンピオンは決定している。しかし、現在国内でEVのみによる純粋なレース・シリーズは他になく、来年以降の参戦を目論むチームや、純粋に腕試し的な感覚での参戦など、シーズン最終戦にもかかわらずEV-1クラスに1台、EV-Cクラスに3台の新規エントリーがあり、現在EV最強と言われるテスラ ロードスター3台、日産リーフ5台、三菱i-MiEV2台に、コンバートEVが4台と実にバリエーションに富んだ顔ぶれがそろった。

砂子塾長や山田英二選手といったメディアで活躍する大物ドライバーもいれば、JWRC(世界ラリー選手権ジュニアクラス)参戦者や全日本ジムカーナ経験者、本格レース初参戦もいて、ドライバーの顔ぶれもさまざまEVに重要となる充電施設。サーキットの施設からの普通充電はもちろんだが、モビリティープラスのEV救援充電車「Q電丸」や、京浜蓄電池工業の蓄電池搭載トラック、そして菊水電子工業の移動型急速充電器も用意され、充電環境も整備されている
電機関連会社や変速機メーカー、そして自動車整備士の専修学校といった具合に、クルマのステッカーを見ていると実にさまざまな会社がサポートもしくは直接参戦していることが分かる86をベースにしたコンバートEV。ドグミッションを搭載した2ペダルで、4000回転あたりでつないでいけば、モーターの電費のよい領域を使いながら走ることができ、バッテリーの積載量を増やすことなく航続距離を伸ばすことができるとしている
トヨタ自動車同好会が製作した2000GTSEV。40年以上前に製作されたトヨタ2000GTをベースに、レクサスLS600hに使用しているモーターをそのまま流用したと言う。フロントボンネットには太陽光発電パネルを装着している125kWのUQM製モーターをリアに搭載。バッテリーは運転席周辺に置き前後重量配分はもちろん、4輪の重量あわせを行い、バランスを重視。他にもブレーキラインを引き直すなど単なるコンバートではなく、クルマとしてきちんとしているコンバートEVを目指して作りこんできたMR-Sベースのマシン
前戦からの参戦で2戦連続優勝と負け知らずの猪爪俊之選手。「そんなにうまくはいかないよ。たまたまうまく勝てただけ」と言う。来シーズンの戦いに注目したい第2戦の欠場が響き、わずか2ポイント差でシリーズタイトル2連覇を逃した金井亮忠選手。来年もこのNATSリーフは継続参戦するものの金井選手が乗るのかは未定2011年の第2戦より全戦エントリーをしてきた深栖健男選手。今シーズンは第2戦で初優勝を経験し、今シーズン4戦連続表彰台が効いて、見事タイトルを獲得

あいにくの雨、これが誰に味方するのか?
 レースは、あいにくの空模様の下、フォーメーションラップ1周を含む全11周で争われた。タイヤがなかなか温まらない低い気温の上、雨脚は徐々に強くなる状況下で、慎重かつ大胆な走行がいくつも見られた。

 真っ先に1コーナーに飛び込んだのは4番手スタートの山田英二選手のテスラ(#6 GAUS群馬自動車大学校TESLA)。ドラッグレースの盛んなアメリカのクルマらしい味付けがなされているテスラ ロードスターのスタート加速は、やはり他を圧倒するだけのパフォーマンスを見せる。ただし、あまりアクセルを開けすぎると冷却系のアラートが出て、セーブモードに入ってしまうという二律背反。冷却対策を進めているほかの2台のテスラに対し、まったくのノーマルのテスラを駆る山田選手は、見せ場を作りたいということで3周目までトップをキープする活躍を見せる。

 上位のテスラ勢に続くのが、4段変速機を持つ86ベースのコンバートEV(#39 ウエルマー☆ビルズ☆FT86EV/丹羽和彦選手)。そのコンセプトは、変速機を使うことで小さなモーターでも電費を抑え効率よく走るEV、である。通常のEVはモーターのカバー領域が広いということで減速機(単速ギア)のみを搭載する車両がほとんど。しかし、この86EVはリーフより小さいモーターを搭載しながら、リーフを大きく上回る実力を見せた。

 また、2段変速機を持つMR-Sをベースにした#3 MR-e Ver.3(山地秀俊選手)は、予選セッションでは86EVよりも速い3番グリッドを獲得していたものの、バッテリーエラーのためセーブ走行を余儀なくされ、5位でフィニッシュ。

 そして今年の東京オートサロンで注目を集めた1台であったトヨタ2000GTのコンバートEV(#20 2000GTSEV/小川裕之選手)も今回シリーズ初参戦。オートサロンでは、ショーカーとして仕立てていたものを、実際にレースに使うということで安全面も含め走るための作り込みをしてきて、今回はほぼシェイクダウンに近い状態だということだったが、無事8ラップを走行した(残念ながら規定周回数が足りず完走扱いにはならなかった)。

 台数・規模ともにまだ「細々と」という感は否めないが、個人のEV愛好家から自動車関連会社、電機系各社、そして教育機関と多くの関心を集めているこのシリーズ、来年以降も注目だ。

総合表彰台は、トップチェッカーを受けた井土智洋選手、同じくテスラ ロードスターに乗る砂子塾長選手、そしてコンバートEVクラスから総合3位に入賞した丹羽和彦選手日産リーフでの戦いとなるEV-2クラス表彰台は、猪爪俊之選手(総合4位)、金井亮忠選手(総合6位)、椎名団選手(総合8位)。EV-3クラスは参加台数2台のため残念ながら表彰はナシEV-Cクラスは丹羽和彦選手(総合3位)、山地秀俊選手(総合5位)、小川裕之選手(総合13位)が表彰台に上がった
シーズン最終戦ということで、シリーズチャンピオンの表彰も行われた。総合チャンピオンはゼッケン1 OUTER PLUS☆TiR☆TESLAに乗る井土智洋選手に決定!EV-2クラスでは、ゼッケン10 ZUMMY RF☆G.SONIXLEAFに乗る深栖健男選手がタイトルを獲得。もう1つシリーズタイトルが成立したEV-Cクラスのチャンピオンは、今回欠席の戸部裕貴選手(ゼッケン86 千葉県自動車大学校CATS EV86)が手中に収めた

PosClass順位ゼッケンDriverTeamLapsTotalTime&DelayFastest Lap
1EV111井土智洋OUTER PLUS☆TiR☆TESLA1025'18.1492'28.875
2EV128砂子塾長TAUS東京自動車大学校TESLA1040.2442'29.638
3EVC139丹羽和彦ウエルマー☆ビルズ☆FT86EV101'00.0522'32.456
4EV212猪爪俊之日産リーフ101'45.4562'40.067
5EVC23山地秀俊MR-e Ver.3102'05.9562'42.732
6EV2272金井亮忠チームNATS・日本自動車大学校リーフ102'08.1432'42.470
7EV136山田英二GAUS群馬自動車大学校TESLA102'15.8532'32.716
8EV2316椎名団ヴューテック・リーフ102'42.8642'39.666
9EV2410深栖健男ZUMMY RF☆G.SONIXLEAF103'25.4092'42.276
10EV2523田中耕介日産リーフ91 Lap2'45.506
11EV3188山本晋也菊水電子工業・XaCAR・i-MiEV82 Laps3'02.365
12EV3219藤田広一チーム・京浜蓄電池工業・i-MiEV82 Laps3'12.442
13EVC-20小川裕之2000GTSEV82 Laps3'10.091
14EVC-9榊原康伸TAUS東京自動車大学校RX-782 Laps3'12.442

(青山義明)
2012年 10月 29日