世界トップクラスの安全性を誇るレクサスのセーフティテクノロジー 新型「レクサス LS」では40km/hからの衝突回避支援機能搭載 |
急な人の飛び出しに対し、40km/hから自動急停止する新型「レクサス LS」 |
10月11日にビッグマイナーチェンジを行って登場したレクサス(トヨタ自動車)の新型「LS」。レクサスのフラグシップカーとして、主要部品の半数に相当する約3000点のパーツを刷新。外観もスピンドルグリルデザインを採り入れ、大幅に変更。スポーツモデルの“F SPORT”も加わるなど、レクサスはこの変更を“メジャーチェンジ”と位置づけている。
最新のフラグシップカーとなるだけに、このLSには現在レクサスの持つ最高の安全技術が搭載されて登場した。トヨタ自動車は、安全を「パーキング」「予防安全」「プリクラッシュセーフティ」「衝突安全」「救助」のステージに分類。前半がいわゆるアクティブセーフティとなり、後半がパッシブセーフティとなるが、5つのステージに分けて、適切な技術を開発していくことで、究極の目標である“交通死傷者ゼロ”を目指している。
■最も安全なクルマとなった「レクサス CT200h」
すでにその成果は確実に現れており、NASVA(自動車事故対策機構)が実施した「平成23年度 自動車アセスメント」でレクサス CT200hが「JNCAP大賞」(自動車アセスメントグランプリから名称変更)を獲得。新・安全性能総合評価で最高評価となる5☆を獲得したクルマの中で、さらに一定の基準をクリアしたクルマに与えられる賞である「JNCAPファイブスター賞」のダブル受賞を果たした。
自動車アセスメントでは、64km/hで車体前部の40%を障害物を模したアルミハニカムに衝突させる「オフセット前面衝突試験」、950kgの台車を55km/hで側面から衝突させる「側面衝突試験」などがあったが、平成23年度からの変更点として、歩行者の脚部を保護する性能をテストする「歩行者脚部保護性能試験」が加わった。レクサス CT200hは、このいずれにも優れた結果を残し、乗員の安全性だけでなく、万が一歩行者にぶつかった際の攻撃性も低いことが実証された。とくに、昨今は歩行者保護の能力は重視される傾向にあり、これらの安全性能を高めながらのクルマの設計が求められている。
CT200hは、日本だけでなく海外でもさまざまな安全に関する賞を受賞している | 「JNCAP大賞」「JNCAPファイブスター賞」の受賞トロフィー | 実際に実験に用いた車両 |
オフセット衝突試験において、つぶれることで衝撃を吸収したフロントまわり | 正面から。衝撃を受け止めやすいようになっているのが分かる | Aピラーまわり。衝撃が後方へ伝わっているのが見て取れる。コクピットは衝撃により、つぶれないよう設計されている |
横から | オフセット試験衝突後もドアは問題なく開閉できる。乗員の生存空間が確保されている上、脱出も可能だ | エアバッグもしっかり動作している |
CT200hの各部にはマーキングがあった。NASVA側で、各部の歪み具合を計測するためのマーキングだと思われる | 車体後部には穴が開いていた。NASVAによる計測器取り付けのための穴とのこと | NASVAの試験番号 |
自動車アセスメント:レクサスCT200h:オフセット前面衝突試験 |
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これら試験の詳細については、関連記事「自動車事故対策機構、JNCAP(自動車アセスメント)の衝突試験を公開」「国土交通省とNASVA、平成23年度『自動車アセスメント』の結果を発表」を参照してほしい。
NASVAのWebサイト(http://www.nasva.go.jp/)では、オフセット前面衝突試験以外に、フルラップ前面衝突試験、側面衝突試験、後面衝突頚部保護性能試験の映像が公開されている。また、CT200h以外の車両の試験映像も公開されているので、現代のクルマの安全性能をご覧になっていただきたい。
■相対速度40km/hからの衝突回避を実現した「レクサス LS」
自動車アセスメントは、万が一衝突した際の乗員保護や歩行者保護を目的とした試験だが、避けることができるのであれば、衝突事故を起こさないことが一番だ。レクサス LSでは、世界トップクラスと言う衝突回避型のプリクラッシュセーフティシステム「アドバンスド プリクラッシュ セーフティ システム」を新搭載(一部バージョンに標準装備/オプション装備)。衝突回避型のプリクラッシュセーフティシステムは、日本ではスバル(富士重工業)の「EyeSight(ver.2)」がよく知られているが、ステレオカメラのみで衝突回避型プリクラッシュセーフティを実現するのに対し、レクサスのアドバンスド プリクラッシュ セーフティ システムでは、ステレオカメラに加え、ミリ波レーダー、近赤外線投光器も併用する。
ステレオカメラが取り付けられている | ミリ波レーダーの収まるフロントグリル部 | 一番内側のライトに、ライトと近赤外線投光器が組み込まれている |
ステレオカメラユニット | ミリ波レーダーユニット | ヘッドライトモジュール |
レクサスの安全技術開発を担当する、トヨタ自動車 BR予防安全実験室 主査 松尾芳明氏によると、「ITARDA(交通事故分析センター)の報告では、歩行者事故の特徴として、横断歩行者の事故が約7割を占め、昼夜の割合では夜間の事故が7割を占める」と言い、そのため「ヘッドライトに加え、近赤外線投光器を使用することで、夜間の歩行者発見が可視光のみよりも早く行え、歩行者への衝突を回避する可能性を高めた」と、システム開発の方向性を語った。この近赤外光は夜間(ヘッドライト点灯時)に投射され、昼間は可視光とミリ波レーダーでの検出を行っている。アドバンスド プリクラッシュ セーフティ システムを、実際に体験できたので、その映像とともにお届けする。
40km/hで直進するレクサス LSの前に、クルマの陰から人が飛び出すという想定での実験 |
アドバンスド プリクラッシュ セーフティ システムを搭載したレクサス LSは、40km/hで直進。一定地点を過ぎると、光電管によってスタートスイッチがONになり、クルマの陰から歩行者(ダミー)が飛び出してくる。プリクラッシュセーフティシステム体験では、あらかじめダミーのバルーンに向けて直進してシステムの作動を確認するというものが多いが、より実際の状況に近く、逆に言えば、システムにとっては厳しい状況での体験となっていた。
最初は後席で、次は運転席で、この試乗を行ったが、見事にシステムは作動し、レクサス LSは歩行者の直前で止まった。歩行者の直前で止まるのは、他社のシステムも同様で、これは運転者がシステムに頼り切らないようにするためだ。「運転者のブレーキ操作が間に合わない」と、システム側が判断した際に、動作するようになっている。なお、減速度は「最大でおよそ1Gくらい」とのこと。
LEXUS LS 40km/hからの自動急停止。斜め前画面 |
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レクサス LSのシステムでスゴイと思わせるのが、そのコントロールされた制動力。40km/hからの制動を実現するには、判断→制動開始→制動→停止という、一連のプロセスを高速に行う必要があるが、運転席に座っていると、目の前に飛び出した歩行者の直前でしっかり止まる。レクサス LSはグレードやバージョンによって異なるが、車両総重量が2500kgに迫るものもあり、その巨大な運動エネルギーを短時間で静止(運動エネルギーはゼロ)状態にできるというその能力は、近赤外線投光器による夜間への配慮なども含め、確かに世界でもトップクラスと言えるものだ。
トヨタ自動車 BR予防安全実験室 主査 松尾芳明氏 |
そのほか、LSでは、夜間の前方視界をサポートする「アダプティブハイビームシステム(AHS)」、斜め後方の並走車の存在を知らせる「ブラインドスポットモニター(BSM)」など数々の安全装備を搭載。フラグシップカーにふさわしく、最高の安全性能をユーザーに提供しようとしていることがうかがえる。松尾芳明氏は、「“40km/hからの衝突回避を支援”ということについては社内でいろいろ論議があった」と言いつつも、「最高の安全性能を用意したクルマが新型LS」とし、上記の厳しい実験状態でも安定して止まることを実現できていた(もちろん、路面状態や速度差などが条件が異なる場合は、止まることができず衝突という結果になる可能性がある。ただしその場合も、速度低減は行われる)。
あえて難点を記せば、車両価格、安全装備価格ともに高価なことが挙げられる。万が一の衝突を避ける、また軽減するプリクラッシュセーフティ システムについては、性能を低下させずに製造コストを下げるような開発も進むことで、運動エネルギーの大きなトラックやバスなどへの早急な普及を望みたい。
最後に、レクサス LSに搭載された、多くの先進安全技術の映像を紹介する。英語版となっているが、その動作などはイメージしやすいと思う。
アダプティブハイビームシステム(AHS)。左と右で遮光板の位置が異なっているのが分かるだろうか |
アダプティブハイビームシステムの動作例。ロービームのため、歩行者が見づらい | ハイビームにすると、歩行者が視認できるようになるが、道路上の対向車に迷惑となる | アダプティブハイビームシステム動作時。ハイビーム走行時に対向車を検知すると、凹状に配光を切り替える。歩行者を視認でき、道路の先が暗くなっている |
ドアミラーの右にマークが見える。これが、ブラインドスポットモニター(BSM)で、斜め後方に並走車がいた場合、ワーニングを行ってくれる | ブラインドスポットモニター用のレーダーは、左右のリアバンパー内部に設置されているとのこと |
(編集部:谷川 潔/Photo:安田 剛)
2012年 11月 1日