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所沢航空発祥記念館、零戦五二型(A6M5)エンジン始動&タキシングのフルHD映像

ジブリ映画「風立ちぬ」の公開もあり8月末まで展示を延長

所沢航空発祥記念館でエンジン始動&タキシングが公開された零戦五二型(A6M5)
2013年4月1日実施

 所沢航空発祥記念館(埼玉県所沢市)で4月1日、零戦五二型(A6M5)エンジン始動&タキシングが行われた。

 所沢航空発祥記念館は、1911年(明治44年)徳川好敏陸軍大尉の操縦するアンリ・ファルマン機が所沢飛行場で、日本で初めて飛行場で飛行したこと(飛行場以外での日本初飛行は、1910年の代々木練兵場)を記念して作られた航空記念公園内にある施設で、平成5年に1993年に開館した。

 零戦五二型は、2012年12月から所沢航空発祥記念館で行われている「日本の航空技術100年展」の目玉となっている展示物で、米国の航空博物館「Planes of Fame」が所有するもの。世界で唯一の栄二一型エンジンを搭載した飛行可能な零戦五二型となっている。

零戦五二型

●Planes of Fame(英文)
http://planesoffame.org/

●Model:A6M5 Reisen(英文)
http://planesoffame.org/index.php?mact=staircraft,cntnt01,default,0&cntnt01what=stplanes&cntnt01alias=A6M5&cntnt01returnid=128

 零戦の正式名称は零式艦上戦闘機(初期は零式一号艦上戦闘機)で、三菱重工業が設計。零式は皇紀2600年(神武天皇即位紀元、1940年、昭和15年)に正式採用されたことを示している。設計主任は堀越二郎氏で、スタジオジブリが7月20日から公開する映画「風立ちぬ」の主人公のモデルとなっている。

 この零戦には大きく分けて、一一型、二一型、三二型、二二型、五二型とあり、十の位が機体の世代を、一の位がエンジンの世代を表している。今回展示された五二型は、初期に活躍した二一型の主翼幅12mを1m短くした11mの主翼幅を持ち、速度性能などを向上。エンジンは空冷星型14気筒(7気筒が2列)約27.9リッターの栄エンジンで、一二型から過給器(スーパーチャージャー)が2速式なった二一型になるなどで、馬力が950馬力から1100馬力に向上している。

栄二一型エンジン
零戦五二型からは、排気管が集合タイプのものから、推力式単排気管と呼ばれるものに変更された。排気ガスの勢いを使って、速度を増そうというものだ

 この栄エンジンを生産していたのが、現在のスバル(富士重工業)のルーツである中島飛行機になる。零戦は一般的に設計を行った三菱製のもの思われているが、当時日本最大の航空機生産設備を持つ中島飛行機でも生産されており、総生産数に対する割合では中島製が半数を超えている。今回展示された零戦五二型も中島飛行機小泉製作所で1943年に生産された個体で、機体もエンジンも中島製の零戦となっていた。

 零戦五二型の展示は本来3月31日で終了し、4月1日はアメリカに送り返すための解体作業展示が行われるはずだった。所沢航空発祥記念館の館長によると、「あまりに人気のため展示を延長することになった」とのことで、8月末まで展示を延長。解体作業展示が、エンジン始動&タキシング展示に切り替わったものだ。

ベルト給弾式の九九式20mm二号機銃四型の展示なども行われていた。この機銃は、零戦五二型甲など武装強化型の後期零戦五二型シリーズで用いられた
展示機は零戦五二型のため、ドラム給弾式の九九式20mm二号機銃三型を装備する。ドラム給弾のため、機銃後方翼下面に出っ張り(バルジ)が見える

 エンジン始動は、本来は人の手によってクランキングを行うものだが、この零戦五二型にはセルモーターを搭載。モーター音がしばらく続いた後、軽やかに栄エンジンが回り始めた。正直、爆音を予想していたのだが、その排気音は乾いたもので意外と静かな印象。操縦するPlanes of Fameのジョン・マロニー氏が途中でエンジン回転数を上げたものの、耳をふさがなければならないほどではなかった。以下にその映像をフルHD(1080p)で掲載しておくので、栄のエンジン音を楽しんでもらえればと思う。

零戦五二型(A6M5)栄エンジン始動&タキシング(1080pでの視聴は画質オプションをYouTubeから変更のこと)。撮影:安田 剛

 このエンジン始動があったため、零戦五二型は一旦整備点検が行われ、4月4日13時から展示が再開される。エンジン始動見学会などの特別イベントは、「展示期間中に4回ぐらいはやりたい」(館長談)とのことなので、参加してみたい方は「日本の航空技術100年展」のWebページ(http://tam-web.jsf.or.jp/spevent/)をチェックしてほしい。今年は、前述のジブリ映画「風立ちぬ」のほか、零戦が主要なテーマとなっているベストセラー小説「永遠の0」(著:百田尚樹)も東宝で映画化される。零戦に注目の集まる1年になりそうだ。

所沢航空発祥記念館
所沢航空発祥記念館内に常設展示されている、富士重工業のジェット練習機「T-1B 初鷹」。初の国産ジェット練習機になる
零戦五二型の展示と関連して特別展示も行われている。これは零戦の計器板。計器板上方の両脇の空間は、7.7mm機銃の後部が突き出すためのもの
計器板上部には、九八式射爆照準器が取り付けられていた

(編集部:谷川 潔)