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首都高、羽田補修基地で災害時の緊急対応訓練

東日本大震災によって明らかになった課題やその対応策を盛り込む

「車両横転」を想定した首都高の緊急対応訓練
2013年8月30日実施

 首都高速道路は8月30日、災害時の緊急対応訓練の様子を報道陣に公開した。首都高では、東日本大震災によって明らかになった課題やその対応策を盛り込んだ業務継続計画の第2版を2011年10月に制定。首都高の万一に備え、毎年この時期に訓練を実施している。

 公開訓練を実施するのは今年で2回目で、会場は首都高羽田補修基地。午前中は災害対策本部設置訓練などを非公開で実施し、午後から実施された緊急対応訓練の様子が公開された。訓練は「段差発生対応」「車両横転対応」「路面陥没対応」の3つが実施された。

段差発生対応

 段差発生対応は、地震によって首都高の路面に約20cmの段差が発生した状況を想定。パトロールカーに搭載した「段差解消ステップ」を使うことでこの段差を乗り越える訓練だ。段差解消ステップは、20cmまでの段差を車両が乗り越えられるようにするもので、木材を切断しただけの簡単な物。それだけにコストもかからず、小型で軽量でもあるのがメリットだ。首都高のパトロールカーはこれを1セット常備しており、いつでも利用できるようになっている。

路面に20cmの段差が発生した状況を想定
現場にパトロールカーが到着
「段差解消ステップ」を設置して通行を可能にする
車両が「段差解消ステップ」の手前に来た段階で微調整
前輪が無事に乗り越えた
後輪が通過する前に再度微調整
無事に後輪も乗り越えることができた
下りの場合も同様に前輪、後輪毎に微調整をしながら降りる
後輪も無事に通過した

車両横転対応

 車両横転対応では、首都高上で横転した約5tのトラックを、エアジャッキを使うことで速やかに引き起こす訓練。エアジャッキは、空気の圧力だけで最大で36tの重量の車両を起こすことができる。クレーンで車両を引き起こす場合にくらべて場所を取らないのがメリットだ。特に首都高 山手トンネル内ではクレーンを使うスペースがなく、横転事故が発生した際はこの車両で事故対応をしているという。山手トンネルが開通してから現在まで13回出動しており、一番多いのが大橋JCT(ジャンクション)のループ状の道路だそうだ。

横転現場にまずはパトロールバイクが到着し、作業車両の誘導を開始。パトロールバイクは、日本の道路会社で唯一緊急車両指定を受けている2輪車両
エアジャッキを搭載した「首都高パトロールレッカー」が到着
横転したトラック
「首都高パトロールレッカー」からケージに搭載されたエアジャッキを降ろし、引き起こしの準備を開始
コンプレッサーに手早くエアジャッキを接続していく
まずは補助用の小さなジャッキで隙間を作る
隙間にエアジャッキ本体を設置する。エアジャッキは「首都高パトロールレッカー」1台に4個搭載し、1体で9tの重量を支えることが可能で最大36tの車両までに対応する。今回は2つ設置して作業を実施した
青いエアジャッキは持ち上がってきた車両を支えるためのもの。車両の荷重が加わるに従って次第にエアが抜けていく
徐々に赤いエアジャッキが車両を持ち上げていく。着地寸前まで青いジャッキが支えるためゆっくりと着地していく

路面陥没対応

 最後は路面陥没対応の訓練だ。災害によって発生した路面の陥没を土嚢と鉄板を使うことで応急処置し、車両の通行を可能にする。

路面陥没を想定した現場
現場に作業車両が到着
まずは土嚢を敷き詰める
土嚢を敷き詰めたあとは鉄板をその上に設置する
クレーンを使ってゆっくりと鉄板の位置合わせをしながら降ろしていく
鉄板が無事に降ろされた
鉄板の上を確認のためにパトロールカーが通過して終了
首都高速道路 代表取締役社長 菅原秀夫氏

 訓練終了後、首都高速道路 代表取締役社長の菅原秀夫氏は、「首都高は首都圏だけでなく、日本の社会・経済活動にとって重要な路線。首都高では阪神淡路の震災後からさまざまな策を講じてきたが、それだけでなくこうした訓練をするのが非常に大事。今日は首都高の関連会社、子会社も訓練に参加してもらったが、みな良くやっていた。これからも国民の皆さんに安心して利用してもらえるよう、引き続き安全に取り組みたい」と挨拶。東京都心では37度を記録した猛暑の中実施された訓練であったが、それに関して質問がされると「むしろ、暑いとか寒いとか風が強いとか、悪天候のほうが訓練になる。かえってよかったと思う」と感想を述べた。

(清宮信志)