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ケータハムF1チーム、F1ベルギーGPで小林可夢偉選手がアンドレ・ロッテラー選手と交代へ

小林可夢偉選手はチームに残るが今後は不透明に

小林可夢偉選手
2014年8月20日発表

 ケータハムF1チームは8月20日にプレスリリースを発行し、今週末に予定されているF1ベルギーGPにおいて、ケータハムF1チームで今シーズンのF1を戦ってきた小林可夢偉選手に替えて、アンドレ・ロッテラー選手(ドイツ)をレースドライバーとして起用することを明らかにした。

 シートを失う形となった小林可夢偉選手だが、チームのリリースによれば依然としてチームには所属しているとのことで、今後開催されるレースでレースシートに戻る可能性は残されていることになるが、シートを喪失したことで今後どうなるかは不透明な情勢だ。

WEC/FN/SUPER GTとチャンピオンに輝いた日本にもなじみが深いロッテラー選手

アンドレ・ロッテラー選手

 今回ケータハムF1チームからベルギーGPに参戦することになったアンドレ・ロッテラー選手は、ドイツ生まれの32歳。2000年代前半にはジャガーF1チーム(現レッドブル)のテストドライバー、リザーブドライバーなどを務めたものの、レースシートを得ることは出来なかった。その後2003年に来日し、フォーミュラ・ニッポン(現スーパーフォーミュラ)やSUPER GTといった日本のトップカテゴリーに参戦し、2006年と2009年にトムスチームでSUPER GT/GT500のチャンピオンを獲得し、2011年には同じくトムスチームからフォーミュラ・ニッポンのタイトルを獲得した。

 2009年からは独アウディのル・マンプロジェクトに参加し、2011年にル・マン24時間で初優勝、その後2012年、そして今年2014年と3度の優勝を果たしているほか、2012年から始まったWEC(世界耐久選手権)では、最初の世界王者に輝いている。今年は、こうしたアウディのWECプロジェクトに平行して、トムスチームからスーパーフォーミュラに参戦していたが、今週末ツインリンクもてぎで行われる予定のスーパーフォーミュラ第4戦には、すでにアンドレア・カルダレッリ選手が代役として走ることがエントリーリストから明らかになっており、ロッテラー選手が今週末のベルギーGPに参戦するのは確実と見られていた中での正式発表となった。

 リリースの中でロッテラー選手は「F1に参戦できて嬉しい、チャンスをくれたチームに感謝したい。厳しい挑戦だとは思うが、今回はアップグレードも入るということで、できるだけ車を速く仕上げていきたい。スパ・フランコルシャンは伝統あるサーキットだし、僕が生まれ育った街にも近い。人々の印象に残る週末にしたい」と述べており、初めてのF1レースにやる気十分だ。

ロッテラー選手の契約はベルギーGPのみだが、今後どうなるかは不透明

 一方チームのリリースでは、シートを奪われた形になる小林可夢偉選手についても言及されており、チームによれば小林可夢偉選手は引き続きケータハムF1チームには留まる形になるという。また、ロッテラー選手が小林可夢偉選手に替わって走るのはこのベルギーGPだと明言されており、ベルギーGPの次のイタリアGP以降どうなるのかについては言及されていない。

 ケータハムF1チームは、7月に行われたイギリスGPの直前に、マレーシアの実業家トニー・フェルナンデス氏から、スイスや中東を中心とした投資家グループに売却されており、チーム代表も元F1ドライバーのクリスチャン・アルバース氏に替わり、アドバイザーという肩書きを持つコリン・コレス氏(かつてHRTや現在のフォースインディアの前身となるミッドランドなどを率いていた人物)により実質的に運営される体制に変更されている。

 小林可夢偉選手は前オーナーとなるフェルナンデス氏と、「持ち込み資金はほぼなし」との契約を結んだことが明らかになっており、その腕前を評価されてドライバーに選ばれた。チームオーナーが変わったことでその前提条件が変わり、シートが資金次第という状況になったため今回のようなドライバー交代劇が起きたと見られている。そうした中での交代劇だけに、今後小林可夢偉選手がイタリアGP以降シートに戻れるのか、それとも次のイタリアGPではさらに別のドライバーになるのかは、明白ではない。現時点で分かっていることはロッテラー選手の契約がこの1戦だけということだけだ。

(笠原一輝)