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橋の長さ3540m、日本最長の無料橋「伊良部大橋」ついに開通
一般県道 平良下地島空港線として供用開始
(2015/2/2 17:06)
- 2015年1月31日16時開通
沖縄県の宮古島と伊良部島を結ぶ伊良部大橋が1月31日16時に開通した。伊良部大橋は1974年(昭和49年)、当時の伊良部村が架橋要請活動を開始。宮古島の平良と、伊良部島とつながる下地島の下地島空港を結ぶ県道「平良下地島空港線」の一部として2001年度(平成13年度)に事業化に向けた調査を開始。2005年度(平成17年度)に着工し、10年の歳月をかけて2014年度(平成26年度)に開通した。総工費は約395億円。橋長は3540mで、通行料無料の橋としては新北九州空港連絡道路(2100m)を抜いて日本最長の橋となった。取り付け部も含めた伊良部大橋区間としての長さは4310mとなる。
伊良部大橋には、大きく3個所の盛り上がりがあり、それぞれ航路を確保している。その最大のものは中央部の長山水路となり、航路幅115m、航路水深-7.5m、マスト高23.0m、クリアランス27.0mを確保。その長山水路を確保するための中央部の坂は、上り勾配、下り勾配とも5%となっている。
開通は16時だが、それに先立ち、宮古島側の橋詰めで11時50分から安全を祈願する神事が、13時から開通式典が開催された。
開通式は記念植樹から始まり、内閣府 大臣政務官 松本洋平氏、沖縄県知事 翁長雄志氏、宮古島市長 下地敏彦氏、伊良部小・中学校代表、佐良浜小・中学校代表、久松小・中学校代表が参加して琉球松を宮古島橋詰めに植樹。久松中学校生による祝いの獅子舞が披露された後、テープカット、くす玉開披が行われた。
伊良部大橋の渡り初めは、長濱家、与那覇家、洌鎌家の三世代夫婦を先頭に、テープカット参加者やくす玉開披参加者が続く。その後ろを、伊良部小学校、佐良浜小学校のエイサー隊が踊りながら進み、その後に招待客約1000名が続いた。
式典の開催は対岸の伊良部高校で14時40分からとなっており、橋をすべて歩いて渡るわけにはいかず、途中で渡り初め参加者を式典会場まで運ぶバスを約40台用意。橋の途中で渡り初め参加者はバスに乗り、式典会場となる伊良部高校に向かった。
記者は、それら渡り初めを途中まで撮影後、伊良部大橋の車載動画を撮るために宮古島側へ歩いて引き返す。渡り初め参加者と異なるペースで走れるようタイミングを見て伊良部島へと向かったが、本来走るべき左車線は渡り初め参加者用に供用されており、多くの場合右車線を走行している。以下の映像は一般道路となる前の14時台に撮影したものだが、伊良部大橋は15時に完全にクローズ。その時点で工事事務所から警察に引き渡され、警察が道路としての最終チェックを行い、一般道路として16時に開通している。
伊良部高校では予定より遅れて15時に開通式典を開催。沖縄県土木建築部長 末吉幸満氏が開式の辞を告げた後、沖縄県知事 翁長氏が式辞を述べた。翁長沖縄県知事は、列席の松本内閣府大臣政務官らにお礼の言葉を述べた後、伊良部大橋の建設の経緯について説明。本格的な橋梁工事は2005年度(平成17年度)から取りかかり、橋梁で10年かかったことになる。
伊良部大橋の完成は、「住民生活の利便性の確保はもとより、伊良部島の教育、医療、福祉などの生活環境の向上につながるとともに地域の産業基盤の整備や観光資源の開発を支援するなど、宮古圏域の振興に大きく寄与するものと確信する」としており、参列者らの健勝を祈念した後、宮古島の方言で「タンディガァータンディ」とお礼の言葉を述べた。
工事概要については、沖縄県宮古土木事務所長 小橋川透氏が説明。橋梁長は前述のとおり3540mであるほか、道路区分は道路構造令 第3種 第3級、設計速度は毎時60km、車線数は2車線、道路幅員は8.5mであることなどが語られたほか、百年耐用を目指し、フライアッシュコンクリートの使用、鋼桁の防食効果が期待できるアルミニウム・マグネシウム金属溶射の採用などが行われていることが語られた。また、ここでは語られなかったが、伊良部大橋には、農水管、上水管、光ケーブル、電力線、電話線が施設されており、宮古島からのインフラを伊良部島・下地島に供給する役割を担っている。
生徒代表挨拶は伊良部高校 生徒会長 棚原大翔くん。棚原生徒会長は、離島の問題を解消する伊良部大橋の開通は島民の長年の夢だったとしつつ、これまで40数年間、伊良部島の大切な交通手段となっていた宮古フェリーとはやて海運に感謝の言葉を述べた。実際、両社とも1月31日が最終運航となった。
16時の開通後、伊良部島側の橋詰めで交通量を見ていたが、宮古島側から続々とクルマが流入していた。また、自転車でわたる中学生、犬とジョギングしながらわたる人など、本当に多くの人が伊良部大橋を利用していた。
伊良部大橋の開通について、伊良部島側で数名に話を聞いたが、その多くは開通を喜んでいた。1つには橋ができることで台風などのときのインフラ途絶が防げること、もう1つは観光客数の増加による島経済への貢献だ。伊良部島のダイビングショップによると、宮古島の入域観光客数は年間48万人程度で、伊良部島側まで来る観光客はそのうち8万人程度とのことだ。橋がつながることで大幅な増加が見込め、「よくないことも起きるかもしれませんが、よいことのほうが期待できるので歓迎しています」と語ってくれた。
また、今回宮古島でレンタカーを借りたのだが、レンタカー会社によると「これまでフェリーで渡る伊良部島での事故は、どうしようもない場合がありました。それが橋がつながることで、宮古島と同様の対応ができます。但し、なぜか伊良部島での事故率は高かったので、それが心配です」とのこと。実際、伊良部島・下地島を走ってみたが、信号機は少なく、背の高いさとうきびが交差点の視界を遮っている部分がある。宮古島・伊良部島・下地島をレンタカーで走る際は、くれぐれも安全に注意していただきたい。
沖縄地区は、6月以降は梅雨が明けハイシーズンへと突入する。取材日は雨模様の曇りだったが、ハイシーズンであれば青い空と珊瑚礁の映える青い海を楽しめることだろう。宮古島には、この伊良部大橋をはじめ、池間大橋(橋長1425m)、来間大橋(橋長1690m)と、とても美しい橋がある。3橋のドライブをぜひ楽しんでみていただきたい。
【訂正】記事初出時、沖縄県道路パトロールカーを1号車としておりましたが、このクルマは三世代夫婦が乗る1号車であるマイクロバスの先導車となります。