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メルセデス・ベンツ、日本での新車整備100万台目となる「C 63 S Edition1」を納車

輸入車メーカーで初めて20年以上前の車両を新車当時に近い状態に再生する新サービス開始

2015年11月19日開催

 メルセデス・ベンツ日本は11月19日、日本に輸入した車両の新車整備台数が100万台に達したことを発表。同日に愛知県にある豊橋新車整備センター(豊橋VPC)で記念セレモニーを行い、100万台目となる車両をオーナーに引き渡す納車式を執り行った。

 VPC(Vehicle Preparation Center)は海外から船便で送られてきた車両が日本の法規などに準拠しているかを確認し、必要な装備品の追加を行ったり、輸送中にトラブルが起きていないかなどをチェックする施設。メルセデス・ベンツ日本の豊橋VPCは、ナンバープレートの封印作業まで完了させてオーナーに引き渡すことができる「デリバリーコーナー」を備えていることも大きな特徴となっている。

 納車式では、これまでに「7台以上」と本人も把握しきれないほどメルセデス・ベンツモデルに乗り続けてきた東京都在住の伊藤氏が会場を訪れ、新たに購入した「C 63 S Edition1」が豊橋VPC内にある完成検査ライン通過して、自身の居住地域を管轄する品川のナンバープレートが車両に装着されるシーンを見学。さらにメルセデス・ベンツ日本 代表取締役社長兼CEOの上野金太郎氏から記念の「ビッグキー」が手渡された。

納車式は、完成検査ラインを通過した「C 63 S Edition1」が、拍手する豊橋VPCの社員による花道をゆっくりと走り抜けてステージ位置に駐車するシーンからスタート
リアのナンバープレートがネジ止めされたあと、スタッフの手で封印が施された
メルセデス・ベンツ日本 代表取締役社長兼CEOの上野金太郎氏から贈られたのは、輝きを放つスワロフスキーで彩られた「ビッグキー」
メルセデス・ベンツ日本 代表取締役副社長兼CFOのティナ・フタニ氏から記念品を贈呈
豊橋市市長の佐原光一氏からは、豊橋市が「生産量日本一」を誇る胡蝶蘭が贈られた
「デリバリーコーナー」でも記念撮影を実施。ビッグキーを手に笑みを浮かべる伊藤氏
新車整備100万台として認定されたC 63 S Edition1。ボディーカラーは「オブシディアンブラック」
納車の記念として、車両がリボンで彩られた

「新車整備センターはお客さまのご期待に応える重要な施設」と上野社長

メルセデス・ベンツ日本 代表取締役社長兼CEO 上野金太郎氏

 新車整備台数100万台を記念するセレモニーでは、まずメルセデス・ベンツ日本を代表して上野氏が登壇。上野氏は同社におけるこれまでの新車整備の歴史について振り返り「2010年に効率化を図るため、日立(VPC)に業務統合いたしましたが、2011年に東日本大震災で日立VPCが被災。新車整備ができなくなる事態になりました。そこで急きょ、日立が復旧するまでの数カ月間、豊橋で新車整備をやらせていただきたいとお願いにあがったところ、豊橋市市長の佐原様にすぐご快諾いただきました。震災の年を、販売店様に配車を止めることなく乗り越えられたことは今でも忘れられないことで、感謝の気持ちでいっぱいです」とのエピソードを披露。そのあと、2014年に豊橋VPCを新設することになったときにも、佐原氏から「帰ってきた相棒」と評されたことも紹介。2014年は過去最高の6万台を超える新車販売を記録し、これまで25年間の積み重ねで100万台という大きな節目の台数を達成することができたと語った。

 また上野氏は、「メルセデス・ベンツは本年も年初より新型車を続々と発表し、おかげさまで大変好調に推移しております。しかし、私たちは台数を増やすことだけを追究しているわけではありません。今まで新車整備してきた100万台の1台1台に、納車を楽しみしてくださるお客さまがいました。新車整備センターは、いわゆる『生産の最終チェックライン』として、日本のお客さまに満足していただける状態にクルマを仕上げる使命があります。メルセデス・ベンツを選んでいただいたお客さまのご期待に応える重要な施設だと位置づけています」とコメント。最後に「100万台を達成した本日を機に、改めて気持ちを引き締め、次の100万台に向けて邁進していきたい」と意気込みを口にした。

 来賓では豊橋市市長の佐原光一氏、ヤナセ 代表取締役社長執行役員の井出健義氏なども登壇して挨拶を行った。佐原氏は「100万台と簡単に言いますが、これはなかなか大変な数字だろうなと思います。この豊橋ではさまざまな輸入車の会社がクルマを陸揚げしていて、昨年1年間で合わせて18万台余のクルマが陸揚げされています。今年はさまざまな問題があって、昨年の数字をなんとかクリアできたらと思っているところですが、すでに今年に入って15万台を超えるクルマがここで陸揚げされている状態です。まだまだたくさんの人に輸入車のいいところ、オーナーとしての誇りなどを感じてもらえる機会がたくさんあるかなと思います。私たち豊橋のメンバーはそれをしっかりと応援していきたいと思っております」とコメントした。

 また、正規販売店を代表して登壇した井出氏は「私ども販売店は最前線でお客さまに接して、最高のコンディションのメルセデス・ベンツ車をご納車し、そのあとに安心・安全で快適なカーライフを楽しんでいただこうと、アフターサービスを含めて尽力しておりますが、その活動の大きな支えとなるバックヤードが、この豊橋と日立にあるビークル・プリパレーション・センターであります。私どもの販売店でもお客さまに納車する前に必ず納車前検査をしておりますが、これが軽く済むのか、はたまたそれなりに手数がかかって重くなるのかは、このVPCのレベルアップ次第ということで、これからも引き続きレベルアップを図っていただければ、我々の省力化にも結びついて大変助かります」とコメント。

 これに加え、井出氏は「もう1つお願いがあります。最近はフォルクスワーゲンによる環境規制の不正問題がマスコミを賑わせております。これを機に、輸入車に対して『規制や法規をちゃんと守っているのか』と疑心暗鬼になっているお客さまが一部で出ておりまして、様子見という様相も出てきております。お客さまからいろいろな問い合わせが来るようになってきており、そんな問い合わせに対して我々が毅然と対応できるように、この水際のVPCでより厳格に整備や検査をしていただいてお客さまに納得いただけるようお願いいたします」とのリクエストも口にしている。

豊橋市市長 佐原光一氏
ヤナセ 代表取締役社長執行役員 井出健義氏
メルセデス・ベンツ日本 代表取締役副社長 アフターセールス部門担当 荒垣信賢氏

 このほかに記念セレモニーでは、メルセデス・ベンツ日本 代表取締役副社長 アフターセールス部門担当の荒垣信賢氏から同社の新車整備の歴史や豊橋と日立にあるVPCについて解説するプレゼンテーションが行われた。このなかで、豊橋VPCでは三河港で導入されている「国際輸入自動車特区」の制度を利用し、陸運局での作業を代行してナンバープレートの封印取り付けを実施。2014年10月から愛知県、岐阜県、三重県、静岡県のオーナーを対象にスタートしたこのサービスが、対象エリアの拡大を続けて同日から全都道府県を対象に実施できるようになったことを報告。

 また、今後に向けた新しい取り組みとして、輸入車メーカー初の取り組みとなる「ヤング・クラシック リフレッシュプログラム」を2016年1月から開始することを発表した。この新プログラムでは、20年~30年前のメルセデス・ベンツ車を「ヤング・クラシック」と定義。長年に渡って愛され続け、今でも現役で公道を走り続けているヤング・クラシックモデルを、同社で新車導入時に新車整備を担当した経験豊富なベテランスタッフが担当。オーナーと相談しながら当時の故障診断機や技術文献を使い、純正部品やメーカー再生部品によって可能な限りオリジナルに近いコンディションに再生させるサービスとなる。

1991年に豊橋VPCが開設され、同社による新車整備がスタート
スタート当初は、当時正規輸入していた8車種27モデルが対象
1992年には日立VPCも開設された
1994年に新車整備10万台を達成
2004年に新車整備50万台を達成
2010年に事業の効率化を目的に、VPCを日立に統合
東日本大震災では日立VPCも被災した
商品多様化に対応する新車整備能力の拡張のため、2014年に豊橋VPCを新設
豊橋VPCでナンバープレートの封印ができる陸運局の作業代行が全国に拡大した
VPCでの整備台数のグラフ
1991年当時から取り扱う車種は3倍以上、モデル数は4倍以上に拡大した
VPCの概要
新たに「ヤング・クラシック リフレッシュプログラム」が2016年1月にスタートする
新プログラムにより、購入から数十年が経過しても乗り続けられる商品性とサービス力をアピールする
「メルセデス・ベンツ、最も愛されるブランドへ」というカンパニービジョンを今後も追究していくとしている
会場には新旧のメルセデス・ベンツ車を展示。ヤング・クラシックモデルはひと足早く「ヤング・クラシック リフレッシュプログラム」によるリフレッシュが行われている
1986年式の「300 SE」
1989年式の「190 E 2.5-16」
1990年式の「300 TE 4MATIC」
1990年式の「500 SL」
2012年式の「SL 63」
2013年式の「S 300 h」
2013年式の「E 250 AVANTGARDE」
2014年式の「C 200 AVANTGARDE」
各種セレモニーのあと、豊橋VPC内の見学会も実施。豊橋VPCは約2万2000m2の敷地面積を持つ
運び込まれた車両は、外装チェック前にまずボディーに付着した鉄粉除去の行程が用意される。ドイツ国内での車両の運搬に鉄道が使われており、走行時にレールと車輪の摩擦で細かな鉄粉が出てボディーに付着しており、そのまま洗車すると塗装面に微細な傷ができてしまうことが理由とのこと
鉄粉除去後に洗車機を使ってボディーをクリーニング
オーダーシートに記載された装備がきちんと装着されているかをチェックし、日本仕様に対応するコーションラベルの設置を行うスペース
多数設置された蛍光灯の光によってボディー表面に傷や凹みなどがないか入念にチェック。問題点を見つけた場合、問題個所のそばにふせんを貼りつける
フロア下のチェックエリアもあり、ここで輸送用の保護カバーも取り外されていた
外装チェックで発見された問題個所は、ポリッシャーやデントリペアの行程で修復される
必要な検査機器がそろい、ナンバープレートの封印が行える完成検査ラインを工程の最後に設定

(編集部:佐久間 秀)