【インプレッション・リポート】
「フォルクスワーゲン ポロTSI」長期レビュー

第6回:早期のオイル交換は吉か?
Text by 正田拓也


季節はいよいよ年末、今年生まれのポロは初めての年越しを迎える

 もうすぐポロがやってきた2010年が終わろうとしている。うちのポロは7月初めの納車のため、年が明けるとちょうど半年だ。年末なので、消耗品を交換した。そして、ポロを買う前に検討をしていたフィットハイブリッドとの乗り比べもしてみた。

Sレンジの多用と師走の渋滞で、若干の燃費悪化
 実は今月は、Sレンジを多用しようと決めて乗っていた。先月、ある程度距離を走ったほうが燃費がよくなっていくことを実感したので、エンジンのエージングを早めるてっとり早い方法としてSレンジで走ることを考えたのだ。

 Sレンジで走ると、およそ3000回転くらいでシフトアップする走行となる。ある程度、回転数を上げた昔ながらのエンジンの“慣らし”にもなる。

給油日走行距離(km)給油量(L)燃費(km/L)
2010/11/1749032.814.95
2010/12/961746.7※13.22
2010/12/1519114.213.47

※2回に分けて給油

 結果、若干の燃費悪化となっている。これは、走行パターンとして渋滞路の走行が多かったことが、その原因になっていると思われる。師走に入って平日の渋滞はひどくなっており、例えば30分も首都高上に缶詰にされるようなこともあった。

 一方、Sレンジ多用による燃費悪化は、それほどでもない印象だ。最もSレンジを多用したのが、都内でストップ&ゴーを繰り返す場面だが、通常なら11~12km/Lで走行するある区間では、10~11km/Lとあまり変わらない燃費で推移した。もう少し一定速走行が多いなら、変化が大きくなると思うが、ストップ&ゴーが多い場合は変化はあまりなかった。

 Sレンジで走行することにより、発進加速のレスポンスがよくなり、今まで以上にスムーズに走行できた。減速と加速を繰り返す走行では、高めの回転数から加速するので、とにかくスムーズ。アクセルを離せば適度なエンジンブレーキとなり、ブレーキペダルを踏む回数も減っている。

 ポロはエンジンのフリクションを減らしたためか、エンジンブレーキの効きは悪い。そのため、Dレンジではエンジンの回転数が低く抑えられることもあって、アクセルを離しても驚くほど惰性で走っていく。Sレンジにすると、エンジンの回転が高く維持されるため、ほどよいエンジンブレーキとなり、混雑した道路で運転しやすくなった。

 Sレンジでひとつだけ気になる点があるとすれば、減速時にシフトダウンが発生するため、ギアを合わせるためにエンジンが自動で一瞬吹く(ブリッピングする)こと。それによってブレーキのブーストが一瞬途切れてフィールに変化がある。これは慣れるしかないようだ。

SレンジはDレンジの下。Sレンジからマニュアルシフトには移れないSレンジにするとインパネ内のディスプレイにSが表示される。写真の際は1速に入っているので「S1」となる

短期でのエンジンオイル交換は無駄?
 長期レビューといえば消耗品の交換も話のネタなのだが、なにせポロは最近のクルマだけあって消耗品の交換サイクルが長い。加えて自分の走行距離も多くないのでなおさらだ。

 特に最近の欧州車に多い傾向だが、環境を考えてエンジンオイルの消費を節約している。ポロは1万5000km~3万km毎の交換で済むよう、ロングライフオイルが投入されている。ポロに入ってるオイルはフォルクスワーゲン認定の「VW504」で、非常に高価。ディーラー価格で1リッターあたり約2500円。インターネットで安い店を探しても2000円は下らないというものだ。

 高いので、指定サイクル以外の交換には躊躇していたが、推奨の1万5000km交換より前に交換して、意味があるのかどうか知りたかったので、思い切って4300km時点で交換した。

 正規ディーラーで交換に要する費用は以下のとおり。

エンジンオイル(VW504)3.5L:8599円
オイルフィルター:2310円
パッキン:126円
工賃:3800円
合計:1万4835円

 ポロは3.5Lのオイルを必要とする。量が少ないのが救いだが、ディーラーの請求書では8599円。カー用品店で見ればかなりの高級オイルに値する金額だ。さらにオイルフィルターが2310円。パッキンと工賃を入れれば、気軽に交換できる金額ではない。

 交換は自分でやってもよかったが、オイルの入手が面倒なこと、車両へのオイル交換の履歴設定、初めての交換であることから、正規ディーラーに依頼した。リフトアップしてアンダーカバーを外し、ドレンを外し、下抜きで作業が行われた。空気抵抗の軽減やエンジンルーム保護のため、近年ではアンダーカバー付きのクルマが多く、従来よりもオイル交換は一手間多くなっている。フィルターは上側についているので交換は簡単だ。

 肝心なオイル交換の効果は、やはりというか、残念ながら感じられないというのが、率直な印象だ。実際に交換直前と交換直後に、同じ交通量の少ない平坦路の同じ場所で60km巡航時の瞬間燃費を測ってみたが、Dレンジで28km/L、Sレンジで23km/Lに対して、交換直後はDレンジで26km/L、Sレンジで21km/Lだった。時間帯の差による気温や風向きの差もあるので、ほとんど誤差の範囲内だろう。エンジンフィールは変わらず、音が若干マイルドになったような気がする程度だ。

 やはりオイル交換は、メーカー推奨の1万5000km~3万km交換が環境面でもコスト面でもベストだろうというのが結論だ。新車から最初の交換なら、点検という意味もあってよいかもしれないが、その後のオイル交換はメーカー推奨サイクルで十分だろう。

作業は正規ディラーのフォルクスワーゲン柏で行ったリフトアップされたポロ、泥跳ねが一部あるが、下回りはまだきれいエンジン下部にはアンダーカバーが付いている
反対にエンジンの上にはカバーがないので整備はラクだフィルターも新しくした。上部から交換なのでDIYでも簡単そうだ交換後約50km走行したオイルの状態。以前よりは透明度が増している
交換後約50km走行後のオイルを白い紙に垂らしてみた。交換前の真っ黒よりもだいぶ透明度が戻っているメンテナンスノートに記載の工賃無償サービス時の交換サイクル。これがメーカー推奨の交換時期となり、交換の判断は走行距離ではなく、車両のセンサーとなる取扱説明書に記載のエンジンオイル仕様。今回は「VW504」を入れた。

ワイパーを少し改造してゴム交換
 ワイパーのゴムも交換してみた。ワイパーブレードはゴムと一体型で、ブレードごと交換するようになっているのだが、とにかく高価だ。そこで、自己責任になるが、今回はゴム部分だけの交換にチャレンジしてみた。

 ゴム部分の交換に留める理由は、費用の点で節約できるのと、より高機能な替えゴムに交換できること。ブレードのゴム固定部分の改造が伴うため、万人におすすめできる方法ではないのはご理解いただきたい。また、ワイパーのパーツも筆者のポロと同一とは限らないので、今回使った替えゴムが適合しない場合もある。

 使用した替えゴムはボッシュ「エアロツインマルチ」の交換用に販売されている、シリコンゴム採用の「シリコンプラスリフィール」。従来からあったエアロツインマルチの通常の替えゴムとは異なったシリコンゴムを採用し、このゴムで掻きとるだけで撥水コーティングができるとうたっている。

 大手カー用品店での購入価格は1290円。サイズは650mmのフリーサイズで、必要に応じてカットして使う。右ハンドルのポロの場合、運転席が600m、助手席が400mmなのでサイズは問題ない。両方とも同時に交換する場合は2本購入する必要がある。

ポロのワイパーはフラットタイプメンテナンス位置にしないとワイパーを跳ね上げることができないワイパーブレードは、アーム先端にある四角いところを押すとロックが外れる

 交換はワイパーブレードを外し、両端のどちらかのプラスチックのパーツを外す。するとゴムがするすると引き抜くことができるので、長さを調整した新しいゴムをはめ込んで元に戻せば完了だ。

 こう書くと簡単だが、プラスチックのパーツを外すのはかなり面倒だ。このパーツによってゴムの固定だけでなく、ガイド部の間隔までも維持しているため、壊してしまうとワイパーが機能しない。そもそも交換を想定していない構造のため、再利用できるように取り外す必要もある。

 外すには、プラスチックのパーツが両端の2カ所あるうち、ワイパーの回転の内側がよいだろう。遠心力から言っても根本側なら負担が少ないと思われるからだ。

 ゴムの差し替えが終わったら、パーツを元どおり差し込み、ブレードをクルマに戻して完了だ。

ロックを外して引きぬくブレードが外れたところ。アーム側は金属なので、外したら何か巻いて保護しておかないとフロントガラスに傷を付ける恐れがある外したフラットワイパー。取付部が特殊なのでアフターパーツでは同等品はまだ見当たらない
ブレードの両端はこのようになっている。2個所の四角い穴の中の引っ掛かりを外せば外れる先端のプラスチックのパーツを外したところ。ゴムを挟む2枚の金具の間隔までプラスチックのパーツで維持している構造だゴムはスルスルと簡単に引き抜くことができる
交換用に用意した替えゴム。手前がシリコンゴム採用の「シリコンプラスリフィール」、奥が今回は使用しなかったが一般の替えゴム。どちらのゴムでもうちのポロには適合した元からついていたゴムとシリコンゴム採用の「シリコンプラスリフィール」の比較。形状は同一だ元のブレードに「シリコンプラスリフィール」をはめ込んだ。これをクルマに戻せば完成だ

 交換後の効果だが、フロントガラスに水を垂らして試した結果では、掻きとり性能がよりアップしている印象だ。交換前もわるくはなかったが、1回拭うだけで細かな水滴もなく一瞬ですっきりするようになった。また、撥水コーティングが行われるという機能も、ワイパーを動かしているうちに水弾き効果が増していくのが確認できた。

 なお、もともとポロについているワイパーのゴムの性能は悪くない。現在までガラスに撥水コーティングなどは行っていないが、それでもワイパーを1度かけるだけで水滴はきれい取り除かれ、目立つ筋状のムラやビビリもない。比較的ワイパーを使うほうだが、納車からここまでの間に特に性能の変化は感じられなかったことを付け加えておく。

 最後に、くれぐれもワイパーの改造は慎重かつ自己責任で行ってほしい。ブレード部分が破損すれば硬いパーツが直接フロントガラス表面を擦ることになり、ガラスに傷がつけば大きな損害になる。理想を言えばこのワイパーがゴム交換に対応した構造になっていればよかったのだろう。

交換前の掻きとり。特に問題はないが若干のふき残りがある写真ではなかなか伝えにくいが、交換後はさらにすっきりとしている
交換前に、上から水をたらしてみた交換後、数回ワイパーを動作させて水をたらすと、写真では分かりにくいが、わずかに撥水性が上がってるようだ。しばらく使うとさらに撥水効果が上がると思われる

フィットハイブリッドとの比較
 ポロ購入のきっかけは、ポロが「いちばん話題になっていて、ちょうどよいサイズのクルマ」だったからだが、その前にハイブリッド車の購入を漠然と検討したこともきっかけになっている。現行プリウスがデビューした後のことで、プリウスのサイズも当時の納期も自分には対象外。そこで目を付けたのが、デビュー予定と噂されたフィットのハイブリッド仕様であった。

 クルマのサイズや予想された価格帯は狙いのど真ん中。軽量で実用性を目指したハイブリッド車のできには興味があった。しかし、実際にはフィットハイブリッドのデビューを待たずにポロを買ってしまったのだ。

 そこで、フィットハイブリッドが登場した今、短い間であるが乗り比べてみた。

 燃費は、ポロで11~12km/L程度の都内のノロノロ走行でもフィットハイブリッドなら16~17km/Lという結果。少し速度を出した一定速走行ならポロが17~18km/Lのところがフィットハイブリッドならおよそ20km/L程度と、差が縮まった。アイドリングストップとストップ&ゴーのエネルギーロスが少ないハイブリッドの利点が、そのまま反映されたのだろう。さらに、ポロは無鉛プレミアム、フィットハイブリッドはレギュラーというガソリンの価格差もある。

 ここまでだとフィットハイブリッドの勝利になってしまうが、ポロの美点は走行フィーリングのよさだ。特に運転しやすいと感じるのが減速時のスムースさ。ポロはブレーキの踏力が一定なら一定の減速をしていくが、フィットハイブリッドにはそれがない。ホンダのCVTの癖もあるが、狙った通りに減速してくれないのはストレスだ。

 また、ハンドリングは、わずかの差だが狙ったラインどおり正確に走ってくれるフィールはポロのほうが優れている。山道を飛ばさなくても、都市部の、道幅が狭いながらもある程度の速度で走り抜けなければならない場所などでは、わずかなハンドリングのよし悪しが積み重なって運転疲労の大小に影響してくる。

 クルマに荷物を積もうとしたり、ガソリンスタンドのレシートを眺めているときはフィットハイブリッドにすればよかったとも思うが、トータルでは自分にはポロが合っていると思っている。

ポロとフィットハイブリッドフロントとリアの形状は大きく違う。フィットはフロントウインドーが傾斜してボンネットが小さい
ラゲッジスペースの差は大きい。シート分割の切れ目がポロとフィットでは逆
シートアレンジは文句なくフィットの圧勝。座面跳ね上げができるのもフィットならでは簡単にフラットになって荷室を広げられるリアシート
ハイブリッドのエネルギーを無駄にしない仕組みは強いメーカーのノベルティ対決。どちらもイベントで配られたヘッドライトが点灯するプルバックカーだが、フィットのほうがサイズが大きく、ポロの負け?!

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http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/impression/

2010年 12月 20日