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トヨタ自動車「プリウスPHV」

Text by 岡本幸一郎


 トヨタ自動車では2009年12月より、現行3代目プリウスをベースに、外部電源から充電可能なプラグイン機構を搭載したプリウスPHVのリース販売を行っていた。そして2011年11月、通常のプリウスのマイナーチェンジと同時に、プリウスPHVの受注開始を発表した。

 気になる価格は、ベーシックな「S」が3,200,000円、装備を充実させた「G」が3,400,000円、プリクラッシュセーフティシステムやHDDナビなどが標準装備される「G“レザーパッケージ”」が4,200,000円となっており、450,000円の補助金が得られるため、実質的には2,750,000円からとなる。

 ちなみにマイナーチェンジにより通常のプリウスの価格帯も2,170,000円〜3,340,000円と、従来よりもやや上昇した。

1月30日に発売となるプリウスPHV。マイナーチェンジした通常のプリウスと外観の差は小さい

 価格についてはいろいろな見方ができると思うが、従来のリース限定のプリウスPHVでは参考価格が5,000,000円超だったことを考えても、特別なクルマであるわりには比較的リーズナブルな範囲に収まったように思える。そのプリウスPHVに、東京お台場にあるメガウェブのライドワンコースにて試乗することができた。

 従来モデルのプリウスPHVにも何度か触れる機会はあったが、ようやく量産にこぎつけたプリウスPHVには、従来モデルのユーザーの声を受けた改良や、2年分の進化が盛り込まれており、予想以上に内容が変わっていた。

 まず、リチウムイオン式の駆動用バッテリーのサプライヤーが、パナソニックEVエナジーから、同じパナソニックグループの三洋電機となった。ただし、電力量が5.2kWhから4.4kWhにダウンしている点が気になったのだが、全体のエネルギー量は小さくなったものの、実際に使える領域は拡大しているため、実質的な電力量は向上していると言う。ちなみに通常のプリウスに積まれるバッテリー電力量は1.3kWhだ。また、バッテリー重量も160kgから80kgへと大幅に軽くなっている。

 さらに、EV/HVのモード切り替えが可能となっている。従来はもっとも効率的な走り方をしてほしいという開発陣の意図から、まずバッテリーを使い、それを使い切ってからエンジンを動かすというロジックとなっていた。しかし、好みで選択できたほうがよいというユーザーの要望に応えるとともに、高速巡航時には十分にバッテリー残量があってもエンジンを動かしたほうが効率的であることなどの理由から、任意に選べるようにすべきと開発陣も判断したと言う。

 使い勝手の部分では、従来モデルではラゲッジフロアが通常のプリウスよりも40mmほど高くなっていたのだが、市販版では通常のプリウスと同じようにフラットになり、ラゲッジルーム容量も同じになった点がありがたい。また、充電リッドの位置について、従来モデルは北米では前向き駐車が一般的であることから左フロントフェンダーに設置していたところ、充電に関するものはリアにまとめようとの意図から右リアに移設された。さらに、リッド側に充電インジケーターが付いた点も、一目瞭然でよいと思う。

エンジンルーム AC100V、AC200Vの普通充電に対応する バッテリー容量が増えながら、通常のプリウスと同じラゲッジルーム容量を確保

 ちなみに、急速充電に対応していないのは従来と同じだ。できたほうがよいという人もいるだろうが、筆者はなくても大丈夫だと考えている。プリウスPHVから外部への給電に関しては、現時点では対応していないものの、世の中のニーズの高まりを受けて、現在、鋭意開発中とのことだった。

 ライドワンコースでの試乗は2周のみながら、それなりに感じるものはあった。推奨のEVモードでコースインしたところ、従来モデルよりも走り出しが軽やかで、レスポンスがよくなったように感じられたというのが第一印象。モーターやエンジンは変わっていないのだが、バッテリーのポテンシャルが上がり、より大きな電力を瞬時に応答よく流せるようになったことが効いているようだ。

 さらに、EVモードのまま試しにちょっと強めにアクセルペダルを踏み込んだところ、車速が約50km/hで、バッテリー残量もかなり上のほうを指していたのにエンジンが始動した。これは、通常のプリウスと同じく、強めの加速が要求(ハイブリッドシステムインジケーターのバーグラフでいうと約半分より上)されるとエンジンのアシストが入るように制御されているためで、もっと低い速度でも条件がそろえばエンジンが始動することもある。

 HVモードも試したところ、EVモードよりも早めにエンジンが始動し、加速感もより速くなり、その速さは、通常のプリウスをやや上回るように感じられた。開発スタッフによると、PHVの従来モデルでは、通常のプリウスよりも重い分、遅くなっていることに対し、ユーザーからの不満の声が小さくなかったとのこと。そこで今回の市販モデルでは、バッテリーの性能を上げてEVパワーが大きくなったことを活かし、車重が増えた分を補ってあまりあるだけの動力性能の確保を心がけたと言う。

 EVモード、HVモードのいずれにもPOWERモードとECOモードが設定されており、2周の中ではあまりそれらの違いを試すことはできなかったが、とりあえずいろいろ選べるのはよいことだと思う。通常のプリウスとPHVのどちらを選ぶべきかで迷う人とって、こうした動力性能の違いも、PHVを選ぶ1つの理由になりうるだろう。

 ただし、EV領域が広がっているため、バッテリーから持ち出す電力が増えているにもかかわらず、補機類は通常のプリウスと基本的に同じ部品を使っている。普通の使い方をしている分にはあまり影響はないのだが、キャパシティの変わらない中で、あまり長時間にわたって負荷の大きいEVモードが続くと熱が発生する。その場合はパワーを抑えるなど、制御を工夫したとのことだ。

 また、ブレーキング時に回収できる電力が大きくなったのも重要な改良点。これは、アクセルオフでの惰行や弱いブレーキングでは従来と変わらないが、強めにブレーキングして、ハイブリッドシステムインジケーターのバーグラフがチャージエリアの1番左に来たときに回生する量が従来よりも大きくなり、より効率的に回生するようになったと理解いただければよいだろう。

ライドワンテストコースの直線路 ハイブリッドシステムインジケーター EVエネルギーモニター

 言われてみるとたしかに強めにブレーキングした際に、0.1km刻みで表示されるEV走行可能距離が増えるスピードが速いように感じられた。開発スタッフによると、実際の走行シーンでも、ちょっとした長い下りの峠道では、ゼロからでも満充電できてしまうことも珍しくないそうだ。ブレーキフィールへの影響が気になるところだが、回生協調ブレーキにより、足りない部分は油圧で上手くアシストするようになっているので、従来モデルと変わらないと言う。

 ちなみに今回、ベースとなったプリウスのマイナーチェンジもあり、テールゲートまわりのスポット溶接の打点を増やすなど車体も改良が施されている。それによるものと思われるドライバビリティ面での向上も、短い距離の中ながら感じ取ることができた。

 ライドワンコースには波状路や素早いレーンチェンジの試せる個所があるのだが、波状路では車体側の入力の受け止め方がよくなっていたし、レーンチェンジでは心なしかステアリングの応答遅れが微妙に減ったように感じられた。

 車両重量については、従来のリースモデル(グレードでいうと「S」に相当)が1,490kgで、今回の量産モデルの「S」が1,420kg、通常のプリウスが1,350kgとなっている。従来モデルの後軸重は、通常のプリウスより140kgも重くなっていたが、量産PHVではバッテリーなどが軽くなったぶん70kg増にとどまっているわけだ。それを受けて、タイヤの指定空気圧も、フロント250kPa、リア240kPaと、従来モデルよりもリアが10kPa低い設定になっている。

 ちなみに試乗車のタイヤ銘柄は、ブリヂストンのエコピア。発表会での展示車両はミシュランのPrimacy HPを履いていたので、少なくとも両方の設定があるということだろう。現状は15インチ仕様のみのラインアップだが、やはり17インチ仕様もほしいところだ。

 ところでもう1つ、気になったのは、スマートフォンとの連動機能を持つHDDナビゲーションシステムについて。今回は試すことができなかったものの、機能的にはなかなか面白そうだ。ただし、ひと声約500,000円と高価な点はいかがなものか。装着すると補助金分がそのまま吹っ飛んでしまうわけで、少々ハードルが高いように思えなくもない。機能を抑えたタイプもディーラーオプションで用意しているらしいが、もう少し手軽に装着できる選択肢がメーカーオプションでも用意されているとありがたいところだ。

 ハイブリッド車として確固たるポジションを築いたプリウスは、依然として高い人気を誇っている。トヨタでは、ハイブリッド車につぐ次世代環境車の柱として、EVの環境性能と、長距離でも安心して走行できる航続距離を両立したPHVの普及にも力を入れていくと言う。まずはその第一歩を踏み出したということだ。

 今回は、ライドワンコースのみと、時間も場所も限られた試乗だったので、1月30日の発売後、改めてインプレッションをお届けしたい。


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http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/impression/

2012年 1月 23日